フィナステリド服用中に妊活しても大丈夫?精子や妊娠への影響を解説
監修:医師・薬剤師監修
AGA(男性型脱毛症)の治療でフィナステリドを服用している男性のなかには、「妊活中も飲み続けてよいのか」「精子へ影響して妊娠しにくくならないか」「胎児に悪影響が出ないか」と不安になる人もいるでしょう。
結論からいうと、男性がフィナステリドを服用しながら妊活することは、一般的には可能と考えられています。男性の精液中へ移行するフィナステリドの量は非常に少なく、性交を通じて女性や胎児へ重大な影響を与える可能性は低いとされています。国内の電子添文でも、フィナステリド1mgを服用した男性の精液を介して女性が曝露する可能性がある量と比べ、少なくとも750倍に相当する量を妊娠したサルへ投与しても、胎児に異常所見は確認されなかったと記載されています。
ただし、フィナステリドでは、まれに精子濃度の減少、精子運動性の低下、精液量の減少などが報告されています。不妊治療中の人や精液検査に異常がある人では、服用の継続について医師と相談する必要があります。
また、妊娠中または妊娠の可能性がある女性は、割れたり砕けたりしたフィナステリド錠へ触れてはいけません。この記事では、フィナステリド服用中の妊活、精子への影響、女性が注意すべき取り扱い方法について解説します。
フィナステリドとはどのような薬?
フィナステリドは、II型5α還元酵素の働きを阻害し、男性ホルモンのテストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)へ変換されるのを抑える薬です。
DHTはAGAの進行に関係するため、その生成を抑えることで抜け毛を減らし、AGAの進行を遅らせます。日本では男性における男性型脱毛症の進行遅延を目的に、通常0.2mgを1日1回、必要に応じて1mgまで服用します。
フィナステリドは男性ホルモンそのものをなくす薬ではありませんが、DHTを低下させる作用があるため、生殖機能や妊娠への影響が心配されることがあります。
フィナステリド服用中でも妊活できる?
男性がフィナステリドを服用していることだけを理由に、妊活を禁止する必要は通常ありません。
フィナステリドは服用した男性の精液中へわずかに移行する可能性がありますが、女性が性交によって曝露する量は極めて少ないと考えられています。国内の電子添文では、男性がフィナステリド1mgを服用した際、1回の射精を通じて女性が曝露する可能性のある量を基準にした動物試験でも、胎児への異常は確認されなかったとされています。
そのため、男性が通常のAGA治療用量を服用している場合、精液中の薬によって男子胎児の生殖器形成へ影響する可能性は低いと考えられます。
ただし、妊娠への影響が完全にゼロと証明されているわけではありません。妊活中であることを処方医へ伝え、本人の精液所見や治療状況を踏まえて判断することが重要です。
精子の数や運動性へ影響することはある?
フィナステリドの電子添文には、頻度不明の副作用として、男性不妊症や精液の質の低下が記載されています。具体的には、次のような変化です。
- 精子濃度の減少
- 無精子症
- 精子運動性の低下
- 精子形態の異常
- 精液量の減少
- 射精障害
これらはすべての服用者に起こるわけではなく、発生頻度も明確ではありません。しかし、もともと精子数が少ない人や男性不妊の要因がある人では、わずかな変化でも妊娠成立へ影響する可能性があります。
電子添文では、フィナステリドの服用中止後に精液の質が正常化または改善したとの報告も示されています。
妊活を続けても妊娠しない、精液検査で異常を指摘された、精液量が明らかに減った場合は、泌尿器科や生殖医療を扱う医療機関へ相談してください。
フィナステリドで性欲や勃起機能が低下することもある
フィナステリドでは、精子そのものへの影響だけでなく、性欲減退、勃起機能不全、射精障害などが報告されています。電子添文では性欲減退が1~5%未満、勃起機能不全や射精障害、精液量減少が1%未満の副作用として示されています。
性欲や勃起機能が低下すると、性交回数が減り、結果として妊娠の機会が少なくなる可能性があります。
ただし、妊活中は精神的なプレッシャー、睡眠不足、疲労などでも性機能が低下します。症状がすべてフィナステリドによるものとは限らないため、自己判断で決めつけないことが大切です。
妊活前にフィナステリドを中止すべき?
精液検査に問題がなく、性機能への副作用もない男性では、妊活開始を理由に必ずフィナステリドを中止しなければならないとは限りません。
一方、次のような人では一時的な休薬が検討されることがあります。
- 精子濃度や運動率が低い
- 男性不妊と診断されている
- 不妊治療を受けている
- 精液量が大きく減った
- 服用後に勃起機能や射精機能が低下した
- 夫婦ともに妊娠への不安が強い
精子が作られて成熟するまでには一定の期間が必要なため、中止後すぐに精液所見が変わるとは限りません。休薬期間を設ける場合は、精液検査の結果やAGAの進行状況を確認しながら医師が判断します。
妊活のために中止する場合も、自己判断ではなく、AGA治療を行っている医師と不妊治療の担当医の両方へ相談してください。
服用を中止するとAGAは再び進行する?
フィナステリドの効果を維持するには継続服用が必要です。電子添文でも、効果を持続させるためには継続的に服用することが示されています。
服用を中止するとDHTの生成が徐々に戻り、AGAが再び進行する可能性があります。ただし、休薬した直後に急激にすべての髪が抜けるわけではありません。
妊活中に休薬する場合は、医師の判断でミノキシジル外用薬など、作用の異なる治療法を検討することがあります。ただし、治療薬の変更も自己判断では行わないでください。
妊娠中の女性がフィナステリドへ触れてはいけない理由
フィナステリドはDHTの生成を抑えるため、妊婦が体内へ取り込むと、男子胎児の生殖器官の正常な発育へ影響するおそれがあります。国内の電子添文では、妊婦、妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性への投与は禁止されています。
特に注意が必要なのは、割れたり砕けたりした錠剤です。フィナステリド錠は表面がコーティングされているため、割れていない錠剤を通常どおり取り扱うだけで有効成分へ触れる可能性は低いとされています。
しかし、錠剤を分割・粉砕すると、有効成分が皮膚へ付着する可能性があります。
妊娠中または妊娠の可能性がある女性は、破損したフィナステリド錠を触らないでください。誤って触れた場合は、速やかに石けんと流水で洗い、必要に応じて医師へ相談します。
コンドームは必要?
男性がAGA治療用量のフィナステリドを服用している場合、精液中の薬による胎児への影響は非常に低いと考えられているため、薬への曝露を避ける目的だけで必ずコンドームを使用しなければならないとは一般にされていません。
ただし、妊娠中のパートナーが強い不安を感じる場合や、医師から個別に指示された場合は、その指示を優先してください。
個人輸入品や高用量製品には注意
AGA治療では通常、フィナステリド0.2mgまたは1mgが使用されます。海外には前立腺肥大症用の5mg製剤もありますが、AGA治療用量より多く、自己判断で使用すべきではありません。国内のAGA用電子添文でも1日1mgが上限とされています。
個人輸入品では、成分量や品質、保管状態を確認できない場合があります。妊活中は精子や妊娠への不安もあるため、国内で承認された薬を医師の管理下で使用することが大切です。
妊活中に医師へ相談したいケース
- 1年以上妊活しても妊娠しない
- 精液検査で異常を指摘された
- 精液量が減った
- 性欲や勃起機能が低下した
- 射精しにくくなった
- 過去に男性不妊症を指摘された
- 不妊治療や人工授精、体外受精を予定している
妊娠しにくい原因は男性側と女性側の両方に考えられます。フィナステリドだけを原因と決めつけず、夫婦で検査を受けることも重要です。
よくある質問
フィナステリドを飲んだまま子どもができても大丈夫ですか?
男性が通常のAGA治療用量を服用している場合、精液を通じた胎児への影響は非常に低いと考えられています。ただし、妊活中であることは処方医へ伝えてください。
妊活の何か月前にやめるべきですか?
すべての男性に決まった休薬期間が必要なわけではありません。精液検査に異常がある場合は、医師が精子の形成期間や治療歴を踏まえて判断します。
フィナステリドで無精子症になることはありますか?
頻度不明ですが、無精子症や精子濃度低下などが報告されています。中止後に改善した報告もあります。
妻がフィナステリド錠を触ってしまいました
割れていないコーティング錠へ触れただけであれば、有効成分へ直接触れる可能性は低いとされています。破損した錠剤へ触れた場合は、石けんと流水で洗い、妊娠中または妊娠の可能性がある場合は医師へ相談してください。
まとめ
男性がフィナステリドを服用しながら妊活することは、一般的には可能です。精液中へ移行するフィナステリドは非常に少なく、性交を通じて女性や胎児へ影響する可能性は低いと考えられています。
一方、フィナステリドでは、頻度不明ながら精子濃度の減少、精子運動性の低下、無精子症、精液量減少などが報告されています。精液検査に異常がある人や不妊治療中の人は、休薬や治療変更について医師へ相談してください。
また、妊娠中または妊娠の可能性がある女性は、割れたり砕けたりした錠剤へ触れてはいけません。フィナステリドのDHT低下作用により、男子胎児の生殖器官の発育へ影響するおそれがあるためです。
妊活を始める際は自己判断で薬を中止せず、AGA治療の担当医へ妊活中であることを伝え、必要に応じて精液検査や泌尿器科への相談を行いましょう。

