ダイエットしても体重が落ちないのは甲状腺のせい?疑うべき症状
医師・薬剤師監修
「食事量を減らしているのに体重が落ちない」「運動を始めてもほとんど変化がない」と感じると、甲状腺の病気を疑う方もいるでしょう。
結論からいうと、ダイエットしても痩せにくい原因のひとつとして甲状腺機能低下症は考えられますが、「体重が落ちない」という症状だけで甲状腺の病気とは判断できません。
甲状腺機能が低下すると代謝が落ち、体重増加やむくみにつながることがあります。ただし、多くの場合は寒がり、だるさ、便秘、乾燥肌、むくみ、脈が遅いなど、体重以外の症状もみられます。
食事や運動を見直しても体重が増え続け、こうした症状が重なっている場合は、TSHやFT4などの血液検査で甲状腺機能を確認することが大切です。
- そもそも甲状腺は体重とどう関係する?
- 甲状腺機能低下症とは?
- 甲状腺機能が低いとなぜ痩せにくくなる?
- 甲状腺が原因なら大幅に太る?
- ダイエットしても痩せないだけなら甲状腺を疑う?
- 疑うべき症状① 寒がりになった
- 疑うべき症状② だるさや疲労感が強い
- 疑うべき症状③ 顔や手足がむくむ
- 疑うべき症状④ 便秘が増えた
- 疑うべき症状⑤ 肌が乾燥する
- 疑うべき症状⑥ 抜け毛が増えた
- 疑うべき症状⑦ 脈が遅くなった
- 月経不順も甲状腺と関係する?
- コレステロールが急に高くなった場合も注意
- 血液検査では何を調べる?
- TSHが高いだけなら治療する?
- 橋本病なら必ず痩せにくい?
- 甲状腺機能低下症を治療すれば痩せる?
- 甲状腺ホルモン薬をダイエット目的で飲むのは?
- 食事を減らしすぎて体重が落ちないこともある?
- 筋肉量が減ると痩せにくくなる?
- 睡眠不足でも体重は落ちにくくなる?
- 薬の副作用で太ることもある?
- むくみが強いなら甲状腺以外にも注意
- どのタイミングで受診すればいい?
- 意識低下や強い低体温がある場合は?
- まとめ
そもそも甲状腺は体重とどう関係する?
甲状腺は首の前側にある臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺ホルモンは、エネルギー消費、体温、心拍、腸の動きなど、身体の代謝に幅広く関係します。
甲状腺ホルモンが不足すると身体の代謝がゆっくりになり、以前と同じ生活でもエネルギーを消費しにくくなることがあります。
甲状腺機能低下症とは?
甲状腺機能低下症は、身体に必要な甲状腺ホルモンが不足した状態です。
代表的な原因には橋本病があります。橋本病は自己免疫によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気で、進行すると甲状腺ホルモンを十分に作れなくなることがあります。
女性に多くみられますが、男性にも起こる病気です。
甲状腺機能が低いとなぜ痩せにくくなる?
甲状腺ホルモンが減少すると基礎代謝が低下します。
つまり、安静にしているときに身体が消費するエネルギー量が少なくなるため、同じ食事量でも体重が増えやすくなることがあります。
「食べている量は変わらないのに太った」という変化が、甲状腺機能低下症の症状としてみられることがあります。
甲状腺が原因なら大幅に太る?
必ずしもそうではありません。
甲状腺機能低下症による体重増加は数kg程度にとどまるケースもあり、体重増加の一部は脂肪ではなく、体内にたまった水分によるものです。
短期間で大幅に体重が増えた場合は、甲状腺だけでなく心臓・腎臓の病気や生活習慣など別の原因も考える必要があります。
ダイエットしても痩せないだけなら甲状腺を疑う?
痩せにくさだけでは、甲状腺機能低下症を強く疑うことはできません。
体重が落ちない背景には、摂取エネルギーの過小評価、活動量の低下、睡眠不足、加齢による筋肉量低下など多くの原因があります。
甲状腺を疑いやすいのは、体重変化に加えて複数の特徴的な症状が出ている場合です。
疑うべき症状① 寒がりになった
甲状腺ホルモンは身体で熱を作る働きにも関係しています。
機能が低下すると、以前より寒さを強く感じることがあります。
周囲の人が平気なのに自分だけ寒い、以前より厚着するようになったといった変化がみられることがあります。
痩せにくさと同時に強い寒がりが出てきた場合は、甲状腺機能を確認する理由のひとつになります。
疑うべき症状② だるさや疲労感が強い
甲状腺機能低下症では、身体の代謝が落ちることで強い疲労感が出ることがあります。
十分に眠ったのに疲れが取れない、仕事をする気力が出ない、身体が重く感じるなどの症状です。
「最近運動しているから疲れている」と思っていても、強いだるさが長く続く場合は別の原因を確認しましょう。
疑うべき症状③ 顔や手足がむくむ
甲状腺機能が低下すると、皮膚や皮下組織に水分を引き込みやすい物質がたまり、むくんだように見えることがあります。
顔やまぶたが腫れぼったい、指輪がきつくなった、手足がむくむといった変化がみられることがあります。
体重が増えたように見えても、一部は脂肪ではなく水分増加である可能性があります。
疑うべき症状④ 便秘が増えた
甲状腺ホルモンが不足すると腸の動きも低下し、便秘になることがあります。
もともと便通に問題がなかったのに、最近になって便秘が続くようになった場合は注意しましょう。
寒がり・だるさ・むくみ・便秘が同時に出ている場合は、単なるダイエット停滞とは違う可能性があります。
疑うべき症状⑤ 肌が乾燥する
甲状腺機能低下症では、皮膚の代謝や発汗が低下し、乾燥しやすくなることがあります。
保湿しても以前より肌がカサカサする、かかとや手が乾燥するなどの変化が出る人もいます。
乾燥肌だけで診断はできませんが、ほかの症状と組み合わさると参考になります。
疑うべき症状⑥ 抜け毛が増えた
甲状腺ホルモンは毛周期にも関係しています。
機能が低下すると、髪が乾燥したり、頭全体の抜け毛が増えたりする場合があります。
生え際や頭頂部だけではなく全体的に抜け毛が増え、同時に寒がりやだるさがある場合は甲状腺機能も確認するとよいでしょう。
疑うべき症状⑦ 脈が遅くなった
甲状腺ホルモンが少なくなると、心拍数が低下することがあります。
以前と比べて安静時の脈が明らかに遅くなった、動くとすぐ疲れるという人もいます。
強い徐脈、めまい、失神などがある場合は早めに医療機関へ相談してください。
月経不順も甲状腺と関係する?
甲状腺機能低下症では、月経不順や月経量の変化が起こることがあります。
体重増加だけでなく、生理周期まで変化している場合はホルモン関連の病気も含めて確認することがあります。
月経の変化、むくみ、寒がり、だるさなどが同時にある場合は婦人科や内科で相談しましょう。
コレステロールが急に高くなった場合も注意
甲状腺機能が低下すると脂質代謝も低下し、LDLコレステロールが高くなることがあります。
食生活を大きく変えていないのに、健康診断で急にコレステロールが上がった場合は、甲状腺機能を確認することがあります。
体重増加と脂質異常が同時にみられる場合も、食べすぎだけが原因とは限りません。
血液検査では何を調べる?
甲状腺機能低下症を調べる代表的な検査が、TSHとFT4です。
TSHは脳下垂体から分泌され、甲状腺へホルモンを作るよう指示する役割があります。
典型的な甲状腺機能低下症ではTSHが高くなり、FT4が低下します。
「痩せにくい」という感覚だけで判断するのではなく、血液検査で実際の甲状腺機能を確認することが重要です。
TSHが高いだけなら治療する?
TSHが高くてもFT4が正常な場合は、潜在性甲状腺機能低下症と呼ばれることがあります。
この場合は全員がすぐ治療するわけではありません。
TSHの程度、症状、年齢、妊娠希望、心血管疾患リスクなどを考慮して判断します。
検査結果だけを見て自己判断で甲状腺ホルモン薬を使用しないでください。
橋本病なら必ず痩せにくい?
いいえ。
橋本病があっても甲状腺ホルモンが正常に保たれている段階では、代謝への影響がほとんどない人もいます。
橋本病があることと、現在甲状腺機能が低下していることは同じではありません。
甲状腺機能低下症を治療すれば痩せる?
甲状腺ホルモンが不足している人に適切な治療を行うと、代謝が正常化し、むくみが改善して体重が減少することがあります。
一方、増えた体重すべてが甲状腺の影響とは限らないため、治療だけで理想体重まで自動的に減るわけではありません。
甲状腺の数値が正常になった後も、必要に応じて食事や運動による体重管理を行います。
甲状腺ホルモン薬をダイエット目的で飲むのは?
避けるべきです。
甲状腺機能が正常な人がレボチロキシンなどをダイエット目的で過剰に使用すると、甲状腺機能亢進状態を人工的に作ることになります。
動悸、不整脈、手の震え、発汗、骨量低下などにつながる可能性があります。
甲状腺ホルモン薬は「代謝を上げるダイエット薬」ではありません。
食事を減らしすぎて体重が落ちないこともある?
極端な食事制限を続けると、活動量や筋肉量が低下し、消費エネルギーが減ることがあります。
また、摂取量を少なく見積もっているケースや、飲み物・間食のカロリーが見落とされている場合もあります。
「痩せない=代謝の病気」と考える前に、食事量と活動量を客観的に記録してみることも大切です。
筋肉量が減ると痩せにくくなる?
筋肉はエネルギーを消費する組織です。
過度な食事制限だけで体重を落とすと筋肉量も減り、その後の消費エネルギーが低下することがあります。
ダイエットでは体重の数字だけでなく、十分なたんぱく質と筋力トレーニングで筋肉を守ることも重要です。
睡眠不足でも体重は落ちにくくなる?
睡眠不足は食欲を調節するホルモンや行動パターンに影響し、食事量が増える原因になることがあります。
疲れて運動量が減ったり、夜間の間食が増えたりすることもあります。
甲状腺だけに注目せず、睡眠やストレスも含めてダイエット停滞の原因を考えましょう。
薬の副作用で太ることもある?
一部の薬では食欲増加、むくみ、代謝への影響などによって体重が増えることがあります。
ステロイド薬や一部の精神科領域の薬などが例として挙げられます。
新しい薬を飲み始めてから体重が増えた場合は、自己判断で中止せず処方医へ相談しましょう。
むくみが強いなら甲状腺以外にも注意
強いむくみは、心不全、腎臓病、肝疾患などでも起こります。
特に、数日で急激に体重が増えた、足がパンパンに腫れる、息切れする、尿量が減るといった場合は注意が必要です。
急な体重増加を「甲状腺で太った」と決めつけないことが重要です。
どのタイミングで受診すればいい?
食事や運動を見直しても体重が増え続け、さらに寒がり、強いだるさ、便秘、むくみ、乾燥肌、抜け毛などが複数みられる場合は、一度医療機関へ相談するとよいでしょう。
内科や内分泌内科でTSHやFT4などを確認できます。
特に家族に甲状腺疾患がある場合や、過去に甲状腺の異常を指摘されたことがある場合は、その情報も医師へ伝えましょう。
意識低下や強い低体温がある場合は?
非常に重い甲状腺機能低下症では、まれに意識障害、低体温、呼吸低下などを起こすことがあります。
意識がもうろうとする、極端に体温が低い、呼吸状態がおかしいなどの症状がある場合は速やかな医療対応が必要です。
まとめ
ダイエットしても体重が落ちない原因のひとつとして甲状腺機能低下症はありますが、「痩せない」という症状だけで甲状腺の病気とは判断できません。
甲状腺機能が低下すると基礎代謝が落ち、体重増加やむくみが起こるほか、寒がり、だるさ、便秘、乾燥肌、抜け毛、徐脈などを伴うことがあります。
食事や運動を見直しているのに体重が増え、こうした症状も複数みられる場合は、TSHやFT4などの血液検査で甲状腺機能を確認することが大切です。
一方、ダイエット停滞には食事量、活動量、筋肉量、睡眠、薬など多くの原因があります。体重だけを理由に甲状腺ホルモン薬を使うことは避けましょう。
適切な原因を確認したうえで、甲状腺機能低下症があれば治療し、それ以外の場合は生活習慣を含めて体重管理を見直すことが重要です。

