片頭痛はなぜ片側だけ痛むことがある?ズキズキする頭痛の仕組み
監修:医師・薬剤師
「右側のこめかみだけズキズキする」「毎回同じ側の頭が痛くなる」といった症状は、片頭痛でよくみられる特徴のひとつです。片頭痛という名前から「必ず頭の片側だけが痛む病気」と思われがちですが、実際には両側が痛むこともあります。
それでも片頭痛で片側だけが痛みやすいのは、脳の痛みを感じる仕組みや三叉神経、脳を包む膜の血管周辺で起こる反応が左右均等とは限らないためと考えられています。
今回は、片頭痛でなぜ片側だけ痛むことがあるのか、ズキズキした痛みが生じる仕組み、受診を急いだほうがよい頭痛との違いについてわかりやすく解説します。
片頭痛は「血管が広がるだけ」の病気ではない
以前は、片頭痛は脳の血管が拡張することで起こると説明されることが多くありました。しかし現在では、それだけでは十分に説明できないことがわかっています。
片頭痛には、脳内の神経活動の変化、三叉神経の活性化、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチド、脳を包む髄膜周辺の炎症反応など、複数の仕組みが関係すると考えられています。
米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)でも、片頭痛は神経系の複雑な変化に関係する神経疾患として扱われています。
つまり、片頭痛は単純な「血管の病気」ではなく、神経と血管の両方が関係する病気です。
片側だけ痛むのは三叉神経が関係している
片頭痛の痛みに深く関係するのが「三叉神経」です。三叉神経は顔の感覚を脳へ伝える大きな神経で、頭部の痛みにも関係しています。
片頭痛発作では、この三叉神経系が活性化し、髄膜周辺にある神経終末からCGRPなどの物質が放出されると考えられています。その結果、痛みの信号が脳へ伝わり、ズキズキするような頭痛が起こります。
三叉神経の活動は必ずしも左右同じように起こるわけではありません。
そのため、片側の三叉神経系がより強く刺激されると、その側のこめかみや目の奥を中心に痛みを感じることがあります。
片頭痛は本当に「片側だけ」が多い?
国際頭痛分類では、片頭痛の代表的な特徴として「片側性」が挙げられています。しかし、片側性は診断に必要な特徴のひとつであり、すべての人に必ずみられるわけではありません。
実際には、両側が痛む片頭痛もあります。また、発作によって右側が痛む日もあれば、別の日には左側が痛むこともあります。
「両側だから片頭痛ではない」「毎回同じ側だから危険」と単純に判断することはできません。
痛む場所だけでなく、ズキズキする性質、動くと悪化するか、吐き気があるか、光や音がつらいかなど、全体の症状から判断する必要があります。
なぜ「ズキズキ」「ドクンドクン」と痛むの?
片頭痛では、「脈を打つように痛い」「ドクンドクンする」と表現されることがあります。
これは、三叉神経を中心とする痛みの回路が活性化し、脳が血管周辺からの刺激を拍動性の痛みとして感じるためと考えられています。
ただし、実際の片頭痛では必ずしも脈拍と痛みが完全に一致しているわけではありません。
そのため、現在では「血管が脈打つから痛い」という単純な仕組みではなく、神経系が刺激に敏感になり、脈打つような痛みとして知覚していると考えるほうが適切です。
歩いたり階段を上ったりすると悪化するのはなぜ?
片頭痛の特徴のひとつに、歩行や階段の上り下りなど日常的な動作によって痛みが悪化しやすいことがあります。
発作中は脳の痛みを感じる経路が敏感になっており、身体を動かすことによる刺激も不快に感じやすくなります。
そのため、「できるだけ動きたくない」「暗い部屋で横になっていたい」と感じる人も多くいます。
動くと痛みが強くなることは、緊張型頭痛と片頭痛を見分けるヒントのひとつになる場合があります。
光や音がつらくなるのも片頭痛の特徴
片頭痛は単なる頭痛ではありません。
発作中には、光がまぶしく感じる「光過敏」、音がうるさく感じる「音過敏」、においに敏感になるといった症状が現れることがあります。
また、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
これは片頭痛によって脳内の感覚処理が過敏になっていることが関係すると考えられています。
頭痛と同時に「光がつらい」「音を避けたい」「気持ち悪い」と感じる場合は、片頭痛を疑う材料になります。
頭痛の前に「前兆」が出る人もいる
片頭痛の一部では、頭痛が始まる前に前兆(オーラ)がみられます。
代表的なのは、視界の一部がチカチカする、ギザギザした光が見える、視野が欠けるといった視覚症状です。そのほか、手や顔のしびれ、言葉が出にくいといった症状が出ることもあります。
片頭痛の前兆には「皮質拡延性抑制」と呼ばれる脳の神経活動の変化が関係していると考えられています。
ただし、突然片側の手足が動かなくなる、ろれつが回らない、意識がおかしいといった症状は脳卒中でも起こるため、自己判断しないことが重要です。
片頭痛のきっかけは人によって違う
片頭痛にはさまざまな誘因があります。
例えば、睡眠不足、寝すぎ、強いストレス、ストレスから解放されたタイミング、月経、空腹、脱水、まぶしい光、気圧変化などです。
女性では月経周期と片頭痛が関連することもあり、ホルモン変動によって発作が起こりやすくなるケースがあります。
一方で、「チョコレートを食べると必ず片頭痛になる」など、すべての人に共通する原因があるわけではありません。
自分の発作パターンを記録し、どのような状況で起こりやすいかを把握することが重要です。
片頭痛が起きたときはどうすればいい?
発作が起きたときは、強い光や音を避け、静かな場所で休むことで楽になることがあります。
市販の鎮痛薬を使用する場合は、用法・用量を守り、できるだけ頭痛が強くなる前に服用することが一般的です。
また、片頭痛に対してはトリプタン系薬剤やCGRP関連薬など、医療機関で使用される治療薬もあります。
ただし、頭痛薬を頻繁に使いすぎると「薬剤の使用過多による頭痛」を起こすことがあります。
頭痛が頻繁に起こり、鎮痛薬を何度も使っている場合は自己判断で薬を増やさず、医療機関へ相談しましょう。
片側だけの頭痛なら必ず片頭痛とは限らない
片側だけ痛む頭痛には、片頭痛以外の病気もあります。
例えば群発頭痛では、片側の目の奥に非常に強い痛みが起こり、涙や鼻水、目の充血などを伴うことがあります。
また、脳出血やくも膜下出血など重大な病気でも頭痛が起こります。
そのため、頭痛の場所だけで「いつもの片頭痛」と決めつけないことが大切です。
すぐに医療機関を受診したほうがよい頭痛
次のような頭痛は、一般的な片頭痛とは異なる可能性があるため注意が必要です。
例えば、突然発症した今までに経験したことのない激しい頭痛、頭を打った後の強い頭痛、高熱や首の硬さを伴う頭痛、意識障害やけいれんを伴う場合などです。
また、片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、顔の片側が下がるなどの症状を伴う場合には脳卒中の可能性もあります。
「いつもの頭痛と違う」と感じる場合は、我慢せず早めに医療機関を受診してください。
頭痛日記をつけると診断や治療に役立つ
片頭痛が繰り返す場合は、頭痛が起きた日、痛む場所、痛みの強さ、持続時間、吐き気や光過敏の有無、服用した薬などを記録しておくと役立ちます。
月経、睡眠時間、飲酒、天候なども一緒に記録すると、自分の発作パターンが見えてくることがあります。
特に「毎回同じ側なのか」「左右が入れ替わるのか」といった情報も診察時の参考になります。
まとめ
片頭痛で片側だけが痛むのは、三叉神経を中心とした痛みの経路や脳の神経活動が左右均等に起こるとは限らないためと考えられています。
また、「ズキズキする」痛みは単純に血管が広がるためではなく、三叉神経系やCGRPなどが関わる複雑な神経反応によって生じます。
片頭痛は片側だけでなく両側が痛む場合もあり、痛む場所だけでは診断できません。吐き気、光や音への過敏、動くと悪化するなどの症状もあわせて判断することが重要です。
突然の激しい頭痛や麻痺、ろれつが回らないなどの神経症状を伴う場合は、いつもの片頭痛と思い込まず速やかに医療機関を受診しましょう。

