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ADHDの人が片付けられない理由とは?散らかりにくい部屋を維持するコツ

ADHD注意欠陥多動性障害

ADHDの人が片付けられない理由とは?散らかりにくい部屋を維持するコツ

監修:医師・薬剤師

「片付けようと思っているのに始められない」「一度きれいにしても、数日で元に戻ってしまう」「どこから手をつければいいのか分からない」――。

こうした悩みは、ADHD(注意欠如・多動症)のある人によくみられる困りごとの一つです。

ADHDの人が片付けに苦労するのは、単に「だらしない」「やる気がない」からではありません。注意がそれやすい、物事を順序立てて進めにくい、必要な物を忘れたり失くしたりしやすいなど、ADHDの特性が片付けという作業と相性が悪いことがあります。

NIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)では、大人のADHDでみられる困りごととして、整理整頓の難しさ、先延ばし、時間管理や計画の苦手さ、日常的な用事を忘れること、物を失くしやすいことなどを挙げています。

NHS(英国国民保健サービス)も、大人のADHDでは「気が散りやすい」「時間を整理するのが難しい」「最後まで作業を終えにくい」「財布やスマートフォン、鍵などをよく失くす」といった特徴がみられるとしています。

そのため、ADHDの片付けでは「もっと頑張る」よりも、片付けなくても散らかりにくい仕組みを作ることが重要です。

この記事では、ADHDの人が片付けにくい理由と、部屋をきれいな状態で維持するための具体的なコツを分かりやすく解説します。

ADHDの人が片付けられないのはなぜ?

部屋の片付けは、実はかなり複雑な作業です。

例えば机の上を片付けるだけでも、

  • 何から始めるか決める
  • 必要・不要を判断する
  • 物を分類する
  • 収納場所を思い出す
  • 途中で別の作業へ移らない
  • 最後まで終わらせる

といった複数の処理を同時に行います。

ADHDでは、注意を維持する、作業を整理する、計画を立てる、最後まで遂行するといった場面で困難が生じることがあります。NIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)でも、不注意の特徴として、課題を続けることや整理された状態を保つことの難しさを挙げています。

片付けが苦手なのではなく、「片付け」という複数工程のタスクを管理することが難しい場合がある、と考えると分かりやすいでしょう。

理由1|どこから始めればいいか分からなくなる

部屋全体が散らかっていると、

「服を片付けるべきか」「ゴミを捨てるべきか」「机を整理すべきか」など、複数の選択肢が同時に目に入ります。

すると、何を最初にするか決めるだけで負担になり、結局何も始められなくなることがあります。

大きなタスクや複数の作業を整理することの難しさは、大人のADHDでも報告されている代表的な特徴です。

このタイプでは、

「部屋を片付ける」

ではなく、

「床にあるペットボトルを5本捨てる」

くらいまで作業を小さくすると始めやすくなります。

理由2|片付けの途中で別のことを始める

片付けをしている途中で昔の写真を見つけ、その写真を見始める。

本棚を整理していたら漫画を見つけて読み始める。

洗濯物を片付けようとしてスマートフォンの通知を確認し、そのままSNSを見る。

こうした「途中で別の刺激へ注意が移る」ことも、ADHDでは起こりやすい傾向があります。NHS(英国国民保健サービス)では、大人のADHDの不注意症状として、気が散りやすいことや、指示に従って作業を終えることが難しいことを挙げています。

結果として、複数の場所を少しずつ触っただけで、片付けが完了しない状態になりやすくなります。

理由3|「あとでやろう」で物が増えていく

郵便物をテーブルに置く。

服を椅子へ掛ける。

通販の段ボールを部屋の隅へ置く。

一つひとつは小さな行動ですが、「あとで片付けよう」が積み重なると、短期間で物が増えていきます。

ADHDでは先延ばしや時間管理の難しさがみられることがあります。NIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)も、大人のADHDで「先延ばし」「時間管理・計画・整理の問題」が生じることがあるとしています。

ADHDの部屋づくりでは、「あとで片付ける」という行動自体をなるべく発生させない仕組みが重要です。

理由4|物の定位置を忘れる・物を失くしやすい

「鍵をどこへ置いたか分からない」「必要な書類が見つからない」という経験が多い人もいます。

ADHDでは物を失くしやすいことや、日常的な用事を忘れやすいことがあります。NHS(英国国民保健サービス)やNIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)でも、この特徴が大人のADHDでみられることを示しています。

収納場所が複雑だと、毎回「これはどこに戻すんだっけ?」という判断が必要になります。

そのため、細かく分類する収納よりも、「ここに入れればOK」と一目で分かる収納の方が維持しやすい人もいます。

コツ1|収納を細かく分けすぎない

片付け上手な人の収納方法をそのまま真似すると、逆に続かないことがあります。

例えば書類を、

  • 公共料金
  • 保険
  • 税金
  • 病院
  • 仕事

と細かく分類すると、毎回「これはどこに入れる?」という判断が必要になります。

ADHDの人では、

「重要書類」「あとで見る」「捨てる」の3分類

くらいの方が続けやすい場合があります。

衣類も同様です。

シャツ、部屋着、靴下などを細かく畳んで収納するより、収納ボックスへ大まかに分ける方が負担を減らせます。

コツ2|よく使う物は「見える収納」にする

収納棚や引き出しへ完全にしまい込むと、存在そのものを忘れてしまう人もいます。

そこで、頻繁に使うものは見える場所へ置きます。

  • 鍵は玄関のフック
  • 財布は玄関のトレー
  • 毎日使う薬は決まったケース
  • 充電器はデスク横の専用箱
  • 仕事用品は一つのバッグへまとめる

「思い出して片付ける」のではなく、目に入れば戻せる状態を作ることがポイントです。

コツ3|ゴミ箱を増やす

ゴミを捨てるために毎回キッチンまで移動しなければならないと、「あとで捨てよう」となりやすくなります。

そこで、ゴミが出る場所の近くへゴミ箱を置きます。

  • デスクの横
  • ベッドの横
  • 洗面所
  • リビング

など、必要であれば複数設置して構いません。

片付けでは「収納用品を減らす」のが一般的なアドバイスですが、ADHDの場合は、片付けるために必要な移動や手順を減らす方が有効なことがあります。

コツ4|「5分だけ片付ける」

部屋全体を片付けようとすると、作業量が大きすぎて始めにくくなります。

そこで、スマートフォンのタイマーを5分に設定します。

5分間だけ、

  • ゴミだけ捨てる
  • 床にある服だけ集める
  • 机の上だけ片付ける

というように作業を限定します。

5分経過したら終了して構いません。

片付けを「完成させる作業」ではなく、「5分間だけ行う行動」に変えると、始めるハードルを下げられます。

コツ5|片付ける場所を1か所だけ決める

「今日はリビング全部」と決めるのではなく、もっと小さく区切ります。

例えば、

  • テーブルの右半分
  • ソファの上
  • 玄関の靴だけ
  • 洗面台の上だけ

にします。

作業の範囲が目で確認できる程度に小さければ、「どこまでやれば終わりなのか」が分かりやすくなります。

コツ6|「とりあえずボックス」を作る

片付け中に、どこへ収納すればよいか判断できない物が出てくることがあります。

そのたびに考えていると、作業が止まります。

そこで、収納場所を迷った物を入れる「とりあえずボックス」を一つ作ります。

迷ったらそこへ入れ、片付け作業を続けます。

ただし、とりあえずボックスを何個も作ると、単なる物置になってしまいます。

1箱だけにし、週1回など決めたタイミングで中身を確認するとよいでしょう。

コツ7|物そのものを減らす

物が多いほど、片付ける判断も増えます。

服が100着ある人と30着の人では、当然30着の方が管理は簡単です。

ADHDの片付けでは、収納テクニックを増やすより、物を減らすことが効果的な場合があります。

ただし、一度に大量に捨てようとすると判断疲れが起こります。

「半年以上使っていない物を今日は3個だけ処分する」など、小さなルールで進めましょう。

コツ8|毎日リセットする場所を1か所だけ作る

家全体を毎日完璧にする必要はありません。

例えば、

「寝る前にダイニングテーブルだけ何もない状態に戻す」

と決めます。

1か所でも毎日リセットされる場所があると、そこから物が増殖しにくくなります。

慣れてきたら、

  • キッチンカウンター
  • ソファ
  • 洗面台

などを少しずつ追加します。

「収納場所は使う場所の近く」が基本

例えば脱いだ服を寝室から離れた洗面所まで持っていく必要があると、その途中で床や椅子へ置いてしまう可能性があります。

そこで、服を脱ぐ場所に洗濯かごを置きます。

同じように、

  • 郵便物を開封する場所にゴミ箱
  • 鍵を使う玄関に収納
  • 仕事をする机に書類ボックス

を置きます。

「正しい収納場所」よりも、「実際にその人が戻せる場所」に収納を作る方が維持しやすくなります。

家族と暮らしている場合はルールをシンプルにする

家族と一緒に生活している場合、「なぜ片付けられないの?」という言葉がストレスになることがあります。

一方で、家族側も散らかった部屋に困っているケースがあります。

この場合は、

  • 床には物を置かない
  • 食器はその日のうちにキッチンへ
  • 共有スペースだけは夜に戻す

など、守るルールを2~3個程度に絞ります。

「常に完璧に片付ける」という曖昧なルールより、具体的な行動で決めた方が分かりやすくなります。

薬を飲めば片付けられるようになる?

ADHDの治療には、薬物療法や心理社会的な支援などがあります。

NICE(英国国立医療技術評価機構)のガイドラインでは、成人のADHDについて症状や生活への影響に応じて、薬物療法を含む治療を検討することが示されています。

薬によって集中や衝動性などの症状が改善すると、結果として家事や整理整頓が行いやすくなる人はいます。

ただし、薬を飲めば自動的に部屋が片付くわけではありません。

治療と同時に、収納場所を単純化する、タイマーを使う、手順を減らすといった環境調整を組み合わせることが重要です。

「片付けられない=ADHD」とは限らない

部屋が散らかっているだけでADHDと判断することはできません。

ADHDでは、不注意、多動性、衝動性などの症状が子どもの頃から存在し、学校、仕事、家庭など複数の場面で生活へ影響しているかを含めて評価します。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)でも、ADHDの診断は医師や心理職など専門家によって行われるものとしています。

片付けられない原因には、

  • 強い疲労
  • 睡眠不足
  • うつ状態
  • 不安
  • 仕事や家事が忙しすぎる

なども考えられます。

インターネットのチェック項目だけで自己診断しないことが大切です。

医療機関へ相談した方がよいケース

片付けだけでなく、次のような困りごとが長く続き、仕事や生活へ影響している場合は、精神科・心療内科などへ相談してもよいでしょう。

  • 忘れ物や失くし物が非常に多い
  • 仕事を最後まで終えられないことが多い
  • 締め切りを何度も忘れる
  • 時間管理ができず頻繁に遅刻する
  • 家事がたまり生活に支障が出る
  • 衝動的な行動で困ることが多い
  • 片付けの問題で家族関係に影響している

NIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)では、成人のADHDによって整理整頓、時間管理、忘れ物、仕事の完遂などさまざまな日常機能に問題が生じる場合があるとしています。

よくある質問

ADHDの人はみんな部屋が汚いですか?

いいえ。ADHDの症状や程度には大きな個人差があります。整理整頓が得意な人もいます。また、生活上の工夫によって問題が目立たなくなっている人もいます。

一気に片付けた方が早くないですか?

短期間では早い場合もありますが、毎回大掃除が必要な仕組みでは維持が難しくなります。5分程度の小さな片付けを繰り返す方が続けやすい人もいます。

収納ボックスを増やせば片付きますか?

増やしすぎると、どこへ入れたか分からなくなる場合があります。分類を細かくしすぎず、少ない収納先へまとめる方が使いやすい場合があります。

片付ける気はあるのに始められないのもADHDですか?

ADHDでは、課題の開始、整理、計画、最後まで続けることに困難が生じる場合があります。ただし、それだけでADHDと診断することはできません。

ADHDの治療で片付けも改善しますか?

ADHD症状が治療によって軽減すると、結果として家事や整理整頓がしやすくなる可能性はあります。ただし、環境や収納方法などの工夫を一緒に行うことが重要です。

まとめ

ADHDの人が片付けに苦労する背景には、注意がそれやすい、作業を順序立てにくい、先延ばししやすい、物を失くしやすいといった特性が関係することがあります。

そのため、「もっときれいにしなければ」と気合いで解決するより、片付けに必要な判断や手順そのものを減らすことがポイントです。

収納を大まかにする、よく使う物は見える場所へ置く、ゴミ箱を増やす、5分だけ片付ける、1日1か所だけリセットするといった方法から始めてみましょう。

目標はモデルルームのような部屋ではなく、「生活に困らない程度の状態を少ない負担で維持できること」です。

片付けだけでなく、忘れ物、遅刻、仕事の未完了、時間管理など複数の問題が続いている場合は、自己判断でADHDと決めつけず、精神科や心療内科などへ相談するとよいでしょう。

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