ピルを飲むと生理はこないの?「消退出血」と本来の月経の違いを解説
監修:医師・薬剤師
低用量ピルを飲み始めると、「生理は来なくなるの?」「休薬期間に出血するけど、これは普通の生理?」「出血がなかったら妊娠している?」と疑問に感じる人は少なくありません。
結論からいうと、ピルを服用すると本来の意味での「月経」は起こりにくくなりますが、休薬期間や偽薬を飲んでいる期間に「消退出血」と呼ばれる生理に似た出血が起こることがあります。
一般的な低用量経口避妊薬は排卵を抑え、子宮内膜が厚くなるのも抑えるため、自然な月経周期とは異なる状態になります。例えば国内承認の一部の低用量ピルでは、21日間実薬を服用したあと7日間休薬し、出血が終わっているか続いているかにかかわらず次の周期へ進む用法になっています。
一方、連続服用するタイプでは出血の回数を減らしたり、一定期間出血を起こさないようにしたりすることもあります。ACOG(アメリカ産科婦人科学会)でも、ピルの休薬期間に起こる出血は自然な月経ではなくホルモンの中断による消退出血であり、健康維持のために毎月必ず起こす必要があるわけではないとしています。
この記事では、「ピルを飲むと生理はどうなるのか」を中心に、消退出血との違い、出血がなくても大丈夫なのか、妊娠を疑うべきケースまで分かりやすく解説します。
- そもそも自然な「生理」はどうして起こる?
- ピルを飲むと排卵が抑えられる
- ピルを飲んでいるときの「生理」は消退出血
- ピルを飲むと経血量が少なくなるのはなぜ?
- ピルを飲んでいたら生理がまったく来ないこともある?
- 「生理が来ないと体に悪い」は本当?
- ピルには「毎月出血するタイプ」と「出血回数を減らせるタイプ」がある
- 出血がないなら妊娠している可能性はある?
- 1回だけ消退出血がない場合は?
- ピルを飲み始めたら逆に出血が続くこともある?
- 連続服用すると出血は完全になくなる?
- ピルをやめたら生理は戻る?
- ピル服用中でも妊娠検査薬は使える?
- ピルを飲んでいて生理が来ないときの確認ポイント
- 「生理を止めたいから自己判断で休薬しない」のも重要
- こんな出血なら婦人科へ相談を
- よくある質問
- まとめ
そもそも自然な「生理」はどうして起こる?
ピルを飲んでいない通常の月経周期では、卵巣から分泌されるエストロゲンやプロゲステロンの変化によって子宮内膜が厚くなります。
排卵後、妊娠が成立しなければホルモン量が低下し、不要になった子宮内膜が剥がれて体外へ排出されます。
これが一般に「生理」と呼ばれる月経です。
つまり自然な生理は、
- 卵胞が発育する
- 排卵する
- 子宮内膜が厚くなる
- 妊娠しなければ内膜が剥がれる
という一連の月経周期の結果として起こります。
ピルを飲むと排卵が抑えられる
低用量ピルには、一般にエストロゲンとプロゲスチンという女性ホルモンに似た成分が含まれています。
これらを一定量服用することで、脳から卵巣へ送られるホルモン刺激を抑え、排卵を起こりにくくします。
また、子宮内膜の増殖も抑えられます。国内で承認されたエストロゲン・プロゲスチン配合剤でも、卵胞成熟抑制、排卵抑制、子宮内膜増殖抑制が作用として示されています。
そのため、ピル服用中に起こる出血は、自然な排卵後に起こる本来の月経とは仕組みが異なります。
ピルを飲んでいるときの「生理」は消退出血
一般的な21錠タイプや28錠タイプの低用量ピルでは、一定期間ホルモンを含む実薬を服用したあと、休薬またはホルモンを含まない偽薬へ切り替えます。
すると体内のホルモン濃度が低下し、その刺激によって子宮内膜の一部が剥がれ、出血します。
これを「消退出血」と呼びます。
見た目は通常の生理と似ていますが、仕組みは異なります。
| 項目 | 自然な月経 | ピル服用中の消退出血 |
|---|---|---|
| 排卵 | 通常あり | 基本的に抑制される |
| 原因 | 自然なホルモン周期の変化 | 休薬などによるホルモン低下 |
| 子宮内膜 | 周期に応じて厚くなる | 増殖が抑えられ比較的薄い |
| 出血量 | 個人差あり | 少なくなることが多い |
「ピルを飲んでいるのに毎月生理が来ている」と思っていた出血は、実際には消退出血であることが多いのです。
ピルを飲むと経血量が少なくなるのはなぜ?
低用量ピルでは子宮内膜が厚くなりにくいため、休薬期間に剥がれる内膜の量も少なくなる傾向があります。
そのため、服用前と比べて、
- 出血量が減った
- 生理期間が短くなった
- 生理痛が軽くなった
- 茶色い少量の出血だけだった
と感じる場合があります。
これはピル服用中によくみられる変化の一つです。
出血量が少ないからといって、「子宮の中に血がたまっている」というわけではありません。
ピルを飲んでいたら生理がまったく来ないこともある?
あります。
子宮内膜が非常に薄くなっていると、休薬期間になっても剥がれる内膜が少なく、消退出血がほとんど起こらない場合があります。
また、ピルを連続して服用する方法では、意図的に消退出血の回数を減らすこともあります。
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)では、複合型経口避妊薬を連続使用することで月経を抑制でき、毎月の消退出血は健康上必須ではないとしています。
NHS関連の患者向け資料でも、連続服用によって子宮内膜が薄い状態に保たれるため、「出血させないと血がたまる」ということはないとされています。
「生理が来ないと体に悪い」は本当?
ピルによって月経・消退出血を減らすこと自体が、健康上必ず悪いというわけではありません。
自然周期の月経とは違い、ピル服用中は子宮内膜の増殖が抑えられているため、毎月大量の内膜がたまっているわけではありません。
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)では、ホルモン療法による月経抑制は将来の妊孕性を低下させるものではなく、月ごとの消退出血を必ず起こす必要もないとしています。
「毎月出血しないと悪い血がたまる」という考え方は医学的には適切ではありません。
ピルには「毎月出血するタイプ」と「出血回数を減らせるタイプ」がある
ピルやLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)には複数の服用方法があります。
21日服用+7日休薬タイプ
21日間実薬を服用し、その後7日間休薬します。
通常は休薬期間中に消退出血が起こります。国内の一部製剤でも、21日服用・7日休薬を1周期として使用します。
28錠タイプ
28錠のうち一部が実薬、一部がホルモンを含まない偽薬になっているタイプです。
毎日錠剤を飲むため飲み忘れを防ぎやすく、偽薬期間中に消退出血が起こるのが一般的です。国内のデソゲストレル・エチニルエストラジオール製剤でも、偽薬服用中に消退出血が起こるとされています。
連続投与タイプ
一定期間連続して実薬を服用し、出血が続いた場合や規定の日数に達したところで短期間休薬するタイプです。
国内でも、最大120日間連続投与し、一定条件で4日間休薬する製剤があります。
このタイプでは、毎月出血するとは限りません。
出血がないなら妊娠している可能性はある?
ピルを正しく服用していても、避妊効果は100%ではありません。
また、
- 飲み忘れがあった
- 服用後に激しい嘔吐や下痢が続いた
- 薬の吸収や作用へ影響する薬を併用した
場合は妊娠の可能性を考える必要があります。
一方で、消退出血がなかった=必ず妊娠している、というわけでもありません。子宮内膜が薄くなっているだけの場合もあります。
国内承認の一部の経口避妊薬では、正しく服用しているにもかかわらず消退出血が2周期連続して起こらなかった場合、服用継続前に妊娠していないことを確認するよう添付文書で定められています。
1回だけ消退出血がない場合は?
1周期だけ出血がなかった場合でも、飲み忘れや妊娠の可能性がある性行為があれば妊娠検査を検討します。
特に、
- 実薬を2錠以上飲み忘れた
- 服用開始が遅れた
- 嘔吐や激しい下痢が続いた
- 避妊効果に影響する可能性のある薬を使っている
場合は、単に「ピルで生理が止まった」と自己判断しない方がよいでしょう。
心当たりがある場合は、出血を待つより妊娠検査薬や婦人科受診で確認することが重要です。
ピルを飲み始めたら逆に出血が続くこともある?
あります。
ピルを飲み始めて数か月は、ホルモン環境が変化するため、不正出血や点状出血が起こることがあります。
NHS(英国国民保健サービス)でも、複合型ピルを開始した最初の数か月は、生理と生理の間に出血する「breakthrough bleeding(破綻出血・不正出血)」や月経パターンの変化がよくみられるとしています。
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)でも、ホルモン避妊法開始後の不正出血は比較的よくみられ、多くの場合は数か月で改善するとしています。
「生理が止まるはずなのに出血した=ピルが効いていない」とは限りません。
連続服用すると出血は完全になくなる?
必ずではありません。
連続服用では出血回数を大きく減らせる場合がありますが、途中で少量の不正出血が起こることがあります。
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)では、連続的な複合ホルモン避妊法は無月経を得る方法として有効ですが、完全に出血がなくなることを保証するものではないとしています。
そのため、
「連続服用しているのに少し血が出た」
というだけで異常とは限りません。
ただし、大量出血や強い腹痛がある場合は医療機関へ相談してください。
ピルをやめたら生理は戻る?
多くの場合、ピルを中止すると排卵周期が再開し、自然な月経も戻ってきます。
ピルによって一時的に排卵を抑えていても、「長く飲んだから卵巣が働かなくなる」というわけではありません。
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)でも、ホルモンによる月経抑制は将来の妊孕性へ悪影響を与えないとしています。
ただし、ピルを飲む前から月経不順だった人では、中止後に元の不規則な周期へ戻る場合があります。
ピル服用中でも妊娠検査薬は使える?
基本的に使用できます。
市販の妊娠検査薬は、妊娠すると増えるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を検出するものです。
低用量ピルに含まれるエストロゲンやプロゲスチンによって、通常の妊娠検査薬が陽性になるわけではありません。
出血が来ないことに加えて、飲み忘れや妊娠の可能性がある場合は、検査薬を利用することも選択肢です。
ピルを飲んでいて生理が来ないときの確認ポイント
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 正しく服用し、1回だけ出血がない | 子宮内膜が薄いため起こらない場合もある |
| 2周期連続で消退出血がない | 妊娠の有無を確認 |
| 飲み忘れがある | 妊娠可能性を考える |
| 嘔吐・下痢が続いた | 薬の吸収不良による避妊効果低下に注意 |
| 連続服用タイプ | 毎月出血しないことも想定されている |
「生理を止めたいから自己判断で休薬しない」のも重要
生理を減らしたいからといって、自己判断で通常のピルの休薬期間を飛ばしたり、逆に出血させたいから途中で服用をやめたりすることはおすすめできません。
製剤ごとに服用方法が異なるためです。
例えば、21日服用・7日休薬を基本とする製剤と、最大120日間連続投与できる製剤では使用方法がまったく異なります。
出血回数を減らしたい場合は、自分が服用している薬で可能か医師・薬剤師へ確認してください。
こんな出血なら婦人科へ相談を
ピル服用中の少量の不正出血は珍しくありませんが、次のような場合は医療機関へ相談しましょう。
- 出血量が非常に多い
- 何週間も出血が続く
- 強い腹痛を伴う
- 性交後に毎回出血する
- 長期間安定していたのに急に出血パターンが変わった
- 妊娠の可能性がある
出血にはピル以外の原因が隠れている場合もあるため、長引く場合は婦人科で確認することが重要です。
よくある質問
ピルを飲んでいると生理は完全に止まりますか?
必ずではありません。一般的な低用量ピルでは休薬期間や偽薬期間に消退出血が起こります。一方、連続服用タイプでは出血回数を減らすことができます。
ピル服用中の出血は本当の生理ですか?
一般的には自然な排卵後の月経ではなく、休薬によるホルモン低下で起こる「消退出血」です。ACOG(アメリカ産科婦人科学会)でも、休薬期間の出血は自然な月経を模した消退出血とされています。
生理が来ないと血が子宮にたまりませんか?
通常はたまりません。ピルによって子宮内膜の増殖自体が抑えられているため、連続服用で出血を起こさなくても「血がどんどんたまる」ということはありません。
ピルを飲んでいるのに生理が来なければ妊娠ですか?
必ずではありません。ただし、飲み忘れなどがある場合や2周期連続で消退出血がない場合は妊娠を確認する必要があります。国内の一部経口避妊薬でも、2周期連続で消退出血がない場合は妊娠確認が求められています。
ピルをやめれば普通の生理に戻りますか?
多くの場合は排卵が再開し、自然な月経周期へ戻っていきます。ホルモン療法による月経抑制が将来の妊孕性を低下させるとはされていません。
まとめ
ピルを服用すると、自然な排卵を伴う本来の「生理」は抑えられます。
一般的な低用量ピルでは、実薬を服用したあとに休薬期間または偽薬期間を設け、その際にホルモン濃度が低下することで「消退出血」が起こります。国内の一部製剤でも、21日間服用したあと7日間休薬する用法が設定されています。
この出血は見た目こそ生理に似ていますが、自然な排卵後に起こる月経とは仕組みが異なります。
また、ピルによって子宮内膜の増殖が抑えられるため、出血量が少なくなったり、場合によっては消退出血が起こらなかったりすることもあります。
連続服用できるタイプでは、毎月出血させず、出血回数を減らす使い方も可能です。ACOG(アメリカ産科婦人科学会)でも、休薬期間の消退出血は健康のために必須ではなく、月経抑制によって血液が子宮内へ蓄積するわけではないとされています。
ただし、「出血がない=絶対に問題ない」と自己判断するのも避けましょう。
飲み忘れや激しい嘔吐・下痢などがあり妊娠の可能性がある場合は確認が必要です。また、国内の一部経口避妊薬では、正しく服用していても消退出血が2周期連続して起こらなかった場合は、妊娠していないことを確認してから服用を継続するよう定められています。
ピルを飲んでいて生理・出血の変化に不安がある場合は、「普通の生理」と「消退出血」を区別して考え、服用している製剤の用法を確認したうえで医師・薬剤師へ相談しましょう。

