監修:医師・薬剤師監修
ED治療薬と前立腺の薬は併用できる?α遮断薬との飲み合わせに注意
前立腺肥大症の薬を服用している人のなかには、「ED治療薬も一緒に使えるのか」「前立腺の薬を飲んだ日はED治療薬を避けたほうがよいのか」と不安に感じる人もいるでしょう。
結論からいうと、ED治療薬と前立腺の薬は、医師が薬の種類・血圧・体調を確認したうえで併用されることがあります。ただし、前立腺肥大症の治療に使われるα遮断薬とED治療薬を併用すると、血圧が下がりすぎる可能性があるため注意が必要です。
特に、タムスロシン、シロドシン、ナフトピジル、ドキサゾシン、テラゾシンなどを服用している人は、ED治療薬を自己判断で追加してはいけません。現在服用している薬の名前だけでなく、服用量、服用を始めた時期、普段の血圧、降圧薬の有無などを確認したうえで、併用の可否を判断する必要があります。
この記事では、ED治療薬と前立腺の薬を併用する際の考え方、α遮断薬との飲み合わせで起こり得る症状、安全に使用するための注意点を一般読者向けに解説します。
ED治療薬と前立腺の薬は必ず併用禁止ではない
ED治療薬と前立腺肥大症治療薬の組み合わせは、すべてが「併用禁止」に指定されているわけではありません。前立腺肥大症とEDは中高年以降の男性に併存することがあり、医療機関では両方の症状を考慮して治療薬が選択される場合があります。
ただし、前立腺の薬には複数の種類があり、飲み合わせの注意点は同じではありません。なかでも注意したいのが、前立腺や膀胱出口付近の筋肉を緩めるα1遮断薬です。
シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルなどのED治療薬も血管を拡張させる作用を持っています。そのため、α遮断薬とED治療薬を併用すると、両方の作用が重なり、立ちくらみ、めまい、ふらつき、失神などを伴う血圧低下が起こる可能性があります。
「前立腺の薬を飲んでいるからED治療薬は絶対に使えない」というわけではありませんが、「問題なく併用できる」と自己判断することも危険です。PMDA(医薬品医療機器総合機構)の各添付文書でも、α遮断薬との併用は注意が必要な組み合わせとして記載されています。
前立腺の薬には複数の種類がある
「前立腺の薬」と一括りにされることがありますが、前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬は、作用の仕方によっていくつかに分類されます。
| 薬の種類 | 主な成分例 | ED治療薬との併用で確認したい点 |
|---|---|---|
| α1遮断薬 | タムスロシン、シロドシン、ナフトピジル、ドキサゾシン、テラゾシンなど | 血圧低下、めまい、立ちくらみ、失神に注意 |
| 5α還元酵素阻害薬 | デュタステリドなど | α遮断薬とは作用が異なるが、性機能への影響や他の併用薬を含めて確認が必要 |
| PDE5阻害薬 | 前立腺肥大症用タダラフィル5mgなど | ED治療用タダラフィルとの成分重複に注意 |
| 抗コリン薬・β3作動薬 | ソリフェナシン、イミダフェナシン、ミラベグロンなど | 尿閉、血圧、心拍数など、それぞれの薬に応じた確認が必要 |
日本泌尿器科学会の「男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン」では、α1遮断薬としてタムスロシン、ナフトピジル、シロドシンなどが挙げられています。また、前立腺肥大症に対するPDE5阻害薬とED治療用のPDE5阻害薬は、目的や用法・用量が異なる薬として扱う必要があるとされています。
α遮断薬とはどのような薬?
α1遮断薬は、前立腺や膀胱頸部に存在するα1アドレナリン受容体を遮断し、前立腺周辺の平滑筋を緩める薬です。尿道にかかる圧力を軽減することで、尿が出にくい、排尿に時間がかかる、尿の勢いが弱い、残尿感があるといった症状を改善します。
一方で、α1アドレナリン受容体は血管にも関係しています。薬の種類や選択性、服用量、患者の体質によって程度は異なりますが、血管が広がることで血圧が下がり、立ち上がったときにふらつく「起立性低血圧」が起こる場合があります。
特に、α遮断薬を飲み始めた直後や、薬の量を増やした直後は注意が必要です。ドキサゾシンの添付文書でも、投与初期や用量を急に増やした際に、立ちくらみ、めまい、脱力感、発汗、動悸などが現れる場合があるとされています。
ED治療薬とα遮断薬で血圧が下がる理由
シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルなどのED治療薬は、PDE5阻害薬と呼ばれます。性的刺激によって生成されるcGMPという物質が分解されるのを抑え、陰茎海綿体の血管を広げることで勃起を補助します。
ED治療薬の作用は陰茎だけに完全に限定されるものではなく、全身の血管にも一定の影響を与えるため、服用後にほてり、顔の赤み、頭痛、動悸、めまいなどが現れることがあります。
α遮断薬も血管を広げる方向に作用するため、両者を併用すると血圧を下げる作用が重なる可能性があります。特に立った状態では、重力によって血液が下半身に移動するため、脳へ送られる血液が一時的に減少し、目の前が暗くなる、ふらつく、意識が遠のくといった症状につながることがあります。
併用時に注意すべきなのは、単に血圧の数値が下がることだけではありません。転倒によるけが、運転中の事故、入浴中の意識消失などにつながる可能性もあるため、症状を軽く考えないことが大切です。
シルデナフィルとα遮断薬の飲み合わせ
シルデナフィルは、バイアグラやそのジェネリック医薬品に含まれる有効成分です。日本国内では、通常25mgまたは50mgがED治療に使用されます。
シルデナフィルとドキサゾシンなどのα遮断薬を併用した場合、めまいなどの症状を伴う血圧低下が報告されています。添付文書では、α遮断薬との併用時には低用量から慎重に使用することや、α遮断薬による治療中の血行動態が安定しているかを確認することが示されています。
ここでいう「安定している」とは、単に薬を数回飲んだという意味ではありません。α遮断薬の服用後に強い立ちくらみがないか、普段の血圧が低すぎないか、最近薬の量が変更されていないかなどを確認する必要があります。
すでにシルデナフィル50mgを使用した経験がある人でも、α遮断薬が追加された後は同じ条件で安全とは限りません。処方薬が変わった場合は、ED治療薬を使用する前に医師または薬剤師へ相談してください。
バルデナフィルとα遮断薬の飲み合わせ
バルデナフィルは、レビトラの有効成分として知られるPDE5阻害薬です。先発医薬品のレビトラは販売を終了していますが、国内ではバルデナフィルのジェネリック医薬品が使用されています。
バルデナフィルの添付文書では、α遮断薬と併用すると症候性低血圧が現れる可能性があるため、α遮断薬による治療で状態が安定していることを確認したうえで、低用量の5mgから開始することが示されています。
また、α遮断薬と併用する場合には、両方の薬の投与間隔を考慮することも記載されています。ただし、添付文書に「すべての人が必ず何時間空ければ安全」という一律の時間が示されているわけではありません。
体格、年齢、血圧、α遮断薬の種類、服用量、腎機能や肝機能、ほかの降圧薬の有無などによって判断が変わるため、インターネット上の情報だけを参考に服用時間を調整するのは避けましょう。
タダラフィルとα遮断薬の飲み合わせ
タダラフィルは、ED治療薬のシアリスやそのジェネリック医薬品に含まれる有効成分です。作用が長く続くことが特徴であり、添付文書では投与後36時間まで有効性が認められています。
タダラフィルもα遮断薬との併用によって血圧低下が強くなる可能性があります。ドキサゾシンとタダラフィルを併用した試験では、立位の収縮期血圧が最大9.81mmHg、拡張期血圧が最大5.33mmHg低下したと報告されています。また、α遮断薬との併用で失神などの症状を伴う血圧低下が報告されています。
この数字はあくまで臨床試験で得られた平均的なデータであり、「10mmHg程度しか下がらないから安全」という意味ではありません。もともとの血圧が低い人や、脱水状態の人、複数の降圧薬を使用している人では、わずかな血圧低下でも強い症状が現れることがあります。
タダラフィルは作用時間が長いため、服用直後だけでなく、その後も血圧低下やめまいに注意する必要があります。
前立腺肥大症用タダラフィルとED用タダラフィルの重複に注意
タダラフィルには、ED治療用として使用される製剤のほかに、前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善するための製剤があります。
前立腺肥大症用のタダラフィルは、一般的に5mgを1日1回継続して服用します。一方、ED治療用のタダラフィルは、性行為の前に10mgまたは20mgを服用する使い方が基本です。
商品名や錠剤の見た目が異なっていても、有効成分は同じタダラフィルです。前立腺肥大症用タダラフィルを毎日服用している人が、さらにED治療用タダラフィルを追加すると、同じ成分を重複して摂取することになります。
タダラフィルの過量使用は、頭痛、ほてり、動悸、低血圧、めまい、背部痛などの副作用を強める可能性があります。前立腺肥大症用タダラフィルを服用中にED症状が気になる場合は、自己判断で増量せず、処方医に相談してください。
日本泌尿器科学会のガイドラインでも、前立腺肥大症を目的とするPDE5阻害薬とED治療を目的とするPDE5阻害薬は、用法・用量が異なる別の治療として扱われています。
5α還元酵素阻害薬なら問題ない?
デュタステリドなどの5α還元酵素阻害薬は、男性ホルモンの一種であるDHTの生成を抑え、肥大した前立腺を徐々に縮小させる薬です。α遮断薬とは作用点が異なるため、「ED治療薬とα遮断薬の血管拡張作用が重なる」という問題とは分けて考えます。
ただし、5α還元酵素阻害薬では、性欲低下、勃起機能の低下、射精に関する変化などがみられる場合があります。ED治療薬を追加する前に、現在のED症状が加齢や生活習慣によるものなのか、前立腺肥大症そのものに関連するのか、薬の影響が考えられるのかを確認することが大切です。
α遮断薬ではないから無条件で併用できる、という意味ではありません。ほかに使用している降圧薬、心臓病の薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬などによってED治療薬の安全性が変わるため、服用薬全体を確認する必要があります。
併用時に低血圧を起こしやすい人
ED治療薬とα遮断薬を併用したすべての人に症状が出るわけではありません。しかし、次のような条件が重なると、血圧低下やめまいが起こりやすくなる可能性があります。
- もともとの血圧が低い
- α遮断薬を飲み始めたばかりである
- α遮断薬の服用量を増やしたばかりである
- 高血圧の治療薬を複数服用している
- 高齢である
- 下痢、発熱、発汗などによって脱水状態になっている
- 食事を十分に取っていない
- 飲酒量が多い
- 腎機能または肝機能が低下している
- 過去に立ちくらみや失神を起こしたことがある
特に飲酒には注意が必要です。アルコールにも血管を広げる作用があり、ED治療薬やα遮断薬の作用と重なることで、ふらつきや血圧低下が強くなる可能性があります。飲酒によって判断力も低下するため、異常に気づくのが遅れることもあります。
「普段から飲み慣れている」「以前は問題なかった」という経験だけで安全性を判断しないでください。薬の種類や量が変われば、同じ飲酒量でも反応が変わる可能性があります。
薬の服用時間を空ければ安全なのか
α遮断薬とED治療薬の服用時間をずらすことで、血中濃度が高くなる時間帯の重なりを減らせる場合があります。バルデナフィルの添付文書でも、α遮断薬との投与間隔を考慮するよう記載されています。
しかし、服用時間を空ければ必ず安全になるわけではありません。薬によって作用時間が異なり、α遮断薬のなかには1日を通して作用するものもあります。タダラフィルのように作用が長いED治療薬もあるため、「2時間空ければよい」「朝と夜に分ければ問題ない」と一律に決めることはできません。
また、ED治療薬を使用するために、前立腺の薬をその日だけ自己判断で中止することも避けてください。前立腺肥大症の症状が悪化したり、排尿困難が強くなったりする可能性があります。
薬の時間を調整する必要がある場合は、処方した医師や薬剤師から具体的な指示を受けましょう。
併用する前に医師へ伝えるべきこと
ED治療薬の処方や購入前には、前立腺の薬を含め、現在使用している医薬品をすべて申告してください。薬の名前が分からない場合は、お薬手帳、処方内容が分かるアプリ、薬袋、錠剤のシートなどを提示すると確認しやすくなります。
特に、次の情報は併用可否を判断するうえで重要です。
- 前立腺の薬の商品名・成分名・服用量
- 薬を飲み始めた時期
- 最近、薬の量を変更したか
- 普段の血圧
- 立ちくらみや失神の経験
- 高血圧、狭心症、不整脈、心不全などの有無
- 腎臓病、肝臓病の有無
- ほかのED治療薬や前立腺肥大症用タダラフィルの使用
- 個人輸入を含む、医療機関以外で入手した薬の使用
個人輸入でED治療薬を入手する場合でも、常用薬との飲み合わせ確認は必要です。商品名だけでは成分や含量を判断しにくいことがあるため、成分名と1錠あたりの含有量を確認してください。
硝酸薬はα遮断薬と異なり併用禁忌
α遮断薬は多くのED治療薬で「併用注意」とされていますが、狭心症などに使用される硝酸薬・NO供与薬は、ED治療薬との併用禁忌です。
ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、亜硝酸アミル、ニコランジルなどとED治療薬を併用すると、急激かつ重篤な血圧低下を起こす危険があります。飲み薬だけでなく、舌下錠、スプレー、貼り薬なども対象になるため注意してください。
狭心症の薬を「発作が起きたときだけ使う」人も、ED治療薬を自己判断で使用してはいけません。ED治療薬を服用したあとに胸痛が起きた場合は、硝酸薬を使用せず、救急要請時にED治療薬を服用したことと服用時刻を伝える必要があります。
併用後にめまいやふらつきが出たときの対応
ED治療薬とα遮断薬を併用したあとに、立ちくらみ、めまい、冷や汗、動悸、目の前が暗くなる感じが出た場合は、転倒を防ぐため、すぐに座るか横になってください。
急に立ち上がらず、症状が改善するまで運転、自転車の使用、階段の昇降、入浴、高所作業などは避けます。症状が軽くても繰り返す場合は、その後のED治療薬の使用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
次のような症状がある場合は、速やかな医療対応が必要です。
- 意識を失った
- 強い胸痛や胸部圧迫感がある
- 息苦しさがある
- 片側の手足が動かしにくい
- 言葉が出にくい
- 急激な視力低下がある
- 勃起が4時間以上続いている
ED治療薬の添付文書では、4時間以上続く勃起がみられた場合、陰茎組織の損傷や勃起機能への永続的な影響を避けるため、直ちに医師の診察を受けるよう注意喚起されています。
よくある質問
タムスロシンを飲んでいてもED治療薬は使えますか?
医師の管理下で併用されることはあります。ただし、タムスロシンもα遮断薬であるため、血圧低下や立ちくらみに注意が必要です。タムスロシンの服用状態が安定しているか、ほかの降圧薬を使用していないかなどを確認したうえで判断します。
シロドシンやナフトピジルなら安全ですか?
薬によって受容体への選択性や血圧への影響は異なりますが、α遮断薬である以上、自己判断で安全と決めることはできません。現在の服用量と普段の血圧を含め、医師または薬剤師へ伝えてください。
前立腺の薬を飲まない日にED治療薬を使えばよいですか?
自己判断による休薬は推奨できません。α遮断薬は、服用を休んでも体内からすぐに消えるとは限らず、排尿症状が悪化する可能性もあります。休薬や服用時間の変更は、処方医の指示に従ってください。
前立腺肥大症用タダラフィルを飲んでいますが、EDにも効きますか?
前立腺肥大症用タダラフィルもPDE5阻害薬ですが、前立腺肥大症とEDでは承認された目的や用法・用量が異なります。ED症状があるからといって自己判断で錠数を増やしたり、ED用タダラフィルを追加したりしないでください。
ED治療薬を低用量にすれば自己判断で併用できますか?
低用量でも血圧低下が起こらないとは限りません。低用量から開始することはリスクを抑える方法の一つですが、事前にα遮断薬による治療状態や心血管系の健康状態を確認することが前提です。
まとめ
ED治療薬と前立腺の薬は、薬の組み合わせと患者の状態によっては併用できます。ただし、前立腺肥大症に使用されるα遮断薬とED治療薬は、どちらも血管を広げる方向に作用するため、血圧低下、立ちくらみ、めまい、失神などに注意が必要です。
シルデナフィルでは低用量からの慎重な使用、バルデナフィルではα遮断薬による治療が安定していることの確認や投与間隔への配慮、タダラフィルでは作用時間の長さやドキサゾシンとの併用による血圧低下などが重要な確認事項になります。
また、前立腺肥大症用タダラフィルを服用している人が、ED用タダラフィルを追加すると同一成分の重複になるため、自己判断で併用してはいけません。
前立腺の薬を服用している人がED治療薬を使用するときは、薬の商品名だけでなく、成分名、服用量、服用時刻、普段の血圧、ほかの降圧薬の有無を医師または薬剤師に伝えましょう。処方薬を自己判断で中止したり、インターネット上の情報だけで服用間隔を決めたりせず、安全性を確認したうえで使用することが大切です。

