いぼ痔と切れ痔はどう違う?出血・痛みから考える症状
医師・薬剤師監修
「排便したらトイレットペーパーに血がついた」「肛門が痛いけれど、いぼ痔なのか切れ痔なのか分からない」と不安になる方もいるのではないでしょうか。
いぼ痔(痔核)と切れ痔(裂肛)は、どちらも排便時に出血することがありますが、症状の出方には違いがあります。
内側のいぼ痔では痛みが少なく鮮やかな赤い血が出ることがあり、切れ痔では排便時の鋭い痛みと出血が特徴的です。一方、外側にできるいぼ痔では強い痛みを伴うこともあります。
「出血=いぼ痔」「痛い=切れ痔」と単純に分けることはできないため、出血の色・痛むタイミング・しこりの有無などを合わせて考えることが大切です。
いぼ痔と切れ痔はどう違う?
いぼ痔と切れ痔は、症状が起きている場所や仕組みが異なります。
いぼ痔は、肛門や直腸の周囲にある血管を含む組織が腫れたり、下がってきたりした状態です。医学的には「痔核」と呼ばれます。
一方の切れ痔は、硬い便などによって肛門の皮膚が裂けた状態で、「裂肛」と呼ばれます。
NIDDK(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)では、痔核は肛門周囲または直腸下部にある腫れた血管を含む組織とされています。
また、NHS(英国国民保健サービス)では、裂肛は肛門部分にできる小さな裂け目と説明されています。
| 特徴 | いぼ痔(痔核) | 切れ痔(裂肛) |
|---|---|---|
| 主な状態 | 肛門・直腸周囲の組織が腫れる | 肛門の皮膚が裂ける |
| 出血 | 鮮血が出ることがある | 鮮血が出ることがある |
| 痛み | 内痔核では少ないこともある | 排便時に強く痛みやすい |
| しこり | 感じることがある | 通常は主症状ではない |

いぼ痔ではどんな出血が起こる?
内痔核では、排便時に鮮やかな赤い血が出ることがあります。
トイレットペーパーへ血が付いたり、便の表面に赤い血が付いたり、便器の水が赤く見えたりすることがあります。
NIDDKでも、内痔核では排便後に便・トイレットペーパー・便器内へ鮮血がみられることがあるとされています。
内痔核が肛門の奥にとどまっている場合、出血があっても痛みをほとんど感じないことがあります。
「血が出たのに痛くない」という場合でも、内痔核では珍しい症状ではありません。
切れ痔ではどんな痛みが出る?
切れ痔では、排便するときに「切れるような」「刺されるような」鋭い痛みが出ることがあります。
排便後もヒリヒリ、ジンジンする痛みが数分から数時間続く場合があります。
NHS(英国国民保健サービス)では、裂肛の代表的な症状として、排便時の強く鋭い痛みと、排便後に数時間続くことのある焼けるような痛みを挙げています。
出血する場合は鮮やかな赤色で、トイレットペーパーや便の表面に少量付着することが多くあります。
「硬い便を出した瞬間に強く痛み、その後もしばらくヒリヒリする」という症状は、切れ痔を疑う手がかりになります。
いぼ痔でも痛くなることはある?
あります。
特に肛門の外側にできる「外痔核」では、痛みを伴うことがあります。
外痔核の内部に血の塊ができる「血栓性外痔核」では、肛門の周囲に急に硬いしこりができ、強く痛むことがあります。
NIDDKでも、外痔核では肛門周囲の痛みや硬く圧痛のあるしこりがみられるとされています。
そのため、「痛いから切れ痔」とは限りません。
内痔核と外痔核の違いは?
いぼ痔は、できる位置によって内痔核と外痔核に分けられます。
肛門内部には「歯状線」と呼ばれる境界があり、その内側は痛みを感じる神経が比較的少ないため、内痔核では出血があっても痛みを感じにくいことがあります。
一方、外側の皮膚には痛みを感じる神経が多くあるため、外痔核は腫れると痛みが強くなりやすい特徴があります。
| 種類 | 主な症状 |
|---|---|
| 内痔核 | 鮮血、肛門からの脱出、違和感など |
| 外痔核 | 肛門周囲のしこり、腫れ、痛みなど |

便に血がついたら痔と考えていい?
痔は肛門からの出血を起こす代表的な病気ですが、血便をすべて痔と決めつけるのは危険です。
大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患、直腸炎などでも出血することがあります。
NHS(英国国民保健サービス)でも、肛門からの出血には痔や裂肛だけでなく、大腸や直腸の病気などさまざまな原因があるとされています。
特に、
- 血が便の中に混ざっている
- 黒っぽい便が出る
- 出血が何度も続く
- 便が以前より細くなった
- 体重が理由なく減っている
- 腹痛や下痢を伴う
といった場合は、自己判断せず医療機関へ相談しましょう。
便秘があるといぼ痔・切れ痔になりやすい?
なりやすくなる可能性があります。
硬い便を出すときに強くいきむと、肛門周囲へ大きな圧力がかかります。
その結果、痔核が悪化したり、硬い便が肛門の皮膚を傷つけて裂肛を起こしたりすることがあります。
NIDDKでも、排便時の強いいきみや慢性的な便秘・下痢、長時間トイレに座ることなどが痔核の要因として挙げられています。
切れ痔でも、硬く大きな便は代表的なきっかけのひとつです。
自宅でできる対策は?
いぼ痔・切れ痔のどちらでも、便を硬くしないことが重要です。
- 水分を適度に取る
- 食物繊維を意識する
- 便意を我慢しない
- 強くいきみすぎない
- 長時間トイレに座らない
- 肛門周囲を強くこすらない
切れ痔では、硬い便によって傷が再び開くと治癒しにくくなるため、便通の管理が特に重要です。
NHS(英国国民保健サービス)でも、水分や食物繊維を取り、便を柔らかく保つことが裂肛の対策として勧められています。
市販の痔の薬を使ってもいい?
軽い痔症状では、市販の軟膏や坐剤などが使われることがあります。
ただし、薬によって対象となる症状や成分が異なります。
また、「痔だと思って薬を使っているのに出血が続く」という場合は、別の病気を見逃す可能性があります。
市販薬を使っても改善しない場合や、出血を繰り返す場合は、薬だけで様子を見続けないようにしましょう。
大量に出血した場合はどうする?
少量の鮮血は痔や裂肛でもみられますが、大量出血は別です。
NHS(英国国民保健サービス)では、出血が止まらない、便器の水が赤くなるほど出血する、大きな血の塊が出る場合は緊急の医療対応が必要としています。
また、黒いタール状の便や暗赤色の便は、肛門より奥の消化管からの出血が関係している場合があります。
「痔だから大丈夫」と考えず、出血量が多い場合や便の色が通常と明らかに違う場合は速やかに受診してください。
こんな場合は肛門科・消化器外科へ相談を
次のような場合は、肛門科や消化器外科、消化器内科などへの相談を検討しましょう。
- 排便のたびに出血する
- 強い肛門痛が続いている
- 肛門に硬いしこりがある
- 肛門から何かが出て戻らない
- 市販薬を使っても改善しない
- 便に血が混ざっている
- 原因不明の体重減少がある
- 黒い便や暗赤色の便が出る
NIDDKでは、痔核の診断に問診や肛門周囲の診察、直腸診、必要に応じて肛門鏡などが行われるとしています。
恥ずかしさから受診をためらう方もいますが、症状だけで原因を確定するのは難しいため、出血を繰り返す場合は診察を受けることが大切です。
まとめ
いぼ痔と切れ痔は、どちらも排便時の出血を起こすことがありますが、症状の出方に違いがあります。
内痔核では鮮血が出ても痛みが少ないことがあり、切れ痔では排便時の鋭い痛みや排便後のヒリヒリ感が出やすいのが特徴です。
一方、外痔核や血栓性外痔核では、強い痛みやしこりを伴うことがあります。
「血が出たから痔」と決めつけず、出血が繰り返す、量が多い、便に血が混ざる、黒い便が出るなどの場合は医療機関で原因を確認しましょう。
日常生活では便を硬くしないこと、排便時に強くいきまないこと、トイレへ長時間座らないことなどが、いぼ痔・切れ痔の悪化予防につながります。

