フィナステリドを飲んでいるのに抜け毛が戻った?治療中に再び薄くなる原因
医師・薬剤師監修
「フィナステリドを飲み始めて抜け毛が減っていたのに、最近また増えてきた」「数年間続けているのに、以前より薄くなった気がする」と不安になる方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、フィナステリド服用中に抜け毛が増えたからといって、すぐに「薬が効かなくなった」とは限りません。
AGA(男性型脱毛症)の進行、服薬状況の変化だけでなく、ストレスや病気、急激な減量などによる休止期脱毛、頭皮トラブル、別の脱毛症などが重なっている可能性もあります。
大切なのは「抜け毛が増えた」という1点だけで判断せず、いつから・どのように薄くなったのか、服薬を継続できているか、体調変化がなかったかを確認することです。
フィナステリドを飲んでいても再び薄くなることはある?
フィナステリドは、AGAの進行に関わるDHT(ジヒドロテストステロン)の産生を抑える薬です。
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、男性型脱毛症に対するフィナステリド内服は推奨度Aとされ、強く推奨されています。臨床試験でも6か月、24か月の時点でプラセボより毛髪数が有意に増加し、長期投与でも効果が確認されています。
一方で、フィナステリドは「飲めばAGAの進行を完全に止められる薬」ではありません。治療への反応には個人差があり、AGA自体も徐々に進行する疾患です。ガイドラインでも、年齢や治療開始時のAGAの進行度によって長期的な効果に差がみられています。
そのため、治療中に以前より薄く感じる場合は、いくつかの原因を分けて考える必要があります。

原因1:AGAの進行を完全には抑えきれていない
フィナステリドの主な目的は、AGAの進行を遅らせることです。PMDAの添付文書でも、効能・効果は「男性における男性型脱毛症の進行遅延」とされています。
そのため、治療を継続していても、すべての人が同じように毛量を維持できるわけではありません。
例えば、治療開始時点ですでにAGAが進行していた人や、年齢を重ねた人では、長期間服用していても十分な効果が得られにくいケースがあります。日本人男性801人を5年間追跡した研究でも、治療開始時の年齢が高い人やAGAの重症度が高い人では、効果が不十分になりやすい傾向が報告されています。
「以前より少しずつ生え際が後退している」「頭頂部が数か月~数年かけて薄くなっている」場合は、AGAそのものの進行を評価する必要があります。
原因2:飲み忘れや服用中断が増えている
フィナステリドは、一定期間だけ服用すれば治療が完了する薬ではありません。
PMDAの添付文書では、効果が確認できるまで通常6か月の連日投与が必要であり、効果を持続させるためには継続的に服用するよう記載されています。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、少なくとも6か月程度は継続して効果を確認し、内服を中止すると効果が失われるとされています。
最近になって、
- 飲み忘れる日が増えた
- 数週間~数か月中断していた
- 自己判断で服用回数を減らした
- 処方が切れて服用できない期間があった
といった変化がないか確認してみましょう。
ただし、飲み忘れた分を取り戻そうとして自己判断でまとめて服用するのは避けてください。用量は処方された指示に従います。
原因3:ストレスや体調変化による「休止期脱毛」が重なっている
AGA治療中に急に抜け毛が増えた場合は、AGAとは別に「休止期脱毛」が起きている可能性もあります。
休止期脱毛とは、身体への大きな負担などをきっかけに、多くの毛髪が成長期から休止期へ移行し、数か月後に一斉に抜けやすくなる状態です。
米国皮膚科学会(AAD)では、強いストレス、高熱を伴う病気、手術、急激な体重減少などを経験した数か月後に抜け毛が増えることがあるとしています。多くの場合、原因となる出来事が解消されれば、時間とともに抜け毛が落ち着いていきます。
| 抜け毛が増える前の出来事 | 考えられる影響 |
|---|---|
| 強い精神的ストレス | 休止期脱毛のきっかけになることがある |
| 高熱・感染症 | 回復後数か月して抜け毛が増える場合がある |
| 手術・大きな体調不良 | 毛周期が一時的に変化する場合がある |
| 急激なダイエット | 体重減少や栄養不足が影響することがある |
| 強い睡眠不足・慢性的ストレス | 抜け毛を悪化させる要因になることがある |
特に、頭頂部や生え際だけではなく頭全体から急に抜け毛が増えた場合は、AGAだけでなく休止期脱毛なども考える必要があります。

原因4:栄養不足や甲状腺など別の要因が隠れている
抜け毛はAGAだけで起こるものではありません。
鉄不足などの栄養状態、甲状腺機能の異常、一部の薬剤などでも、びまん性に毛髪が抜けることがあります。DermNetでも、休止期脱毛の原因として急激な体重減少、栄養不足、薬剤、甲状腺疾患などが挙げられています。
「フィナステリドを飲んでいるのだから抜け毛はすべてAGA」と考えてしまうと、別の原因を見逃す可能性があります。
特に、急に大量の毛が抜ける、全体的にボリュームが低下する、強い疲労感や体重変化などを伴う場合は医療機関で原因を確認しましょう。
原因5:AGAとは別の脱毛症が起きている
フィナステリドの適応は男性型脱毛症です。
PMDAの添付文書でも、男性のAGA以外の脱毛症に対する適応はないことが明記されています。
例えば、円形に髪が抜ける円形脱毛症や、頭皮の炎症などによって生じる脱毛では、AGAとは治療方法が異なります。
次のような変化がある場合は、AGAの進行だけとは考えず皮膚科などへ相談してください。
- 円形・まだら状に髪が抜けた
- 短期間で急激に抜け毛が増えた
- 頭皮に強い赤み・痛み・かゆみがある
- フケや皮膚炎が急に悪化した
- 眉毛や体毛にも脱毛がある
フィナステリドに「耐性」がついて効かなくなる?
長期間飲んでいると、「体がフィナステリドに慣れて耐性がついたのでは?」と考える方もいます。
しかし、長期服用によって一般的に薬剤耐性が生じ、フィナステリドが効かなくなることを示す確立した根拠はありません。
実際、日本人男性を対象とした5年間の観察研究では、継続治療による効果が長期にわたって確認されています。
そのため、抜け毛が再び増えた場合は、「耐性」と決めつけるよりも、AGAの進行度や服薬状況、休止期脱毛など別の原因を確認する方が重要です。
抜け毛が戻ったらフィナステリドを増量すればいい?
自己判断で服用量を増やすのは避けてください。
PMDAの添付文書では、男性成人では通常0.2mgを1日1回、必要に応じて増量できますが、1日1mgが上限とされています。また、増量によって効果がさらに高まることは確認されていません。
抜け毛が増えた場合には、まず現在の治療効果を評価し、必要であれば医師と相談しながら治療方法を見直します。
AGA治療では、フィナステリド以外にもミノキシジル外用などの治療選択肢があります。日本皮膚科学会のガイドラインでは、男性型脱毛症に対するフィナステリド内服とミノキシジル外用はいずれも推奨度Aとされています。

こんな場合は医療機関で治療を見直そう
一時的に抜け毛が増えただけであれば、すぐに治療が失敗したとは判断できません。
一方、次のような場合はAGA治療を受けている医療機関や皮膚科へ相談するとよいでしょう。
- 数か月以上、薄毛の進行を感じている
- 生え際・頭頂部が以前より明らかに薄くなった
- 急に抜け毛の量が増えた
- 頭全体から大量に抜ける
- 円形・まだら状の脱毛がある
- 服薬を続けていても変化が大きい
- 頭皮の炎症や強いかゆみを伴う
また、フィナステリドは6か月以上使用する場合も定期的に効果を確認し、継続の必要性を検討することが添付文書で求められています。
まとめ
フィナステリドを服用している途中で抜け毛が増えても、すぐに「薬が効かなくなった」と判断する必要はありません。
AGAそのものの進行や服薬状況に加えて、ストレス、病気、急激な減量などによる休止期脱毛、栄養状態、別の脱毛症などが関係している可能性があります。
長期服用によって一般的にフィナステリドへ耐性がつくという確立した根拠もありません。
抜け毛が戻ったと感じたら、薬を自己判断で増量・中止するのではなく、「いつから・どこが・どのように薄くなったか」を確認して治療を見直すことが大切です。
特に、数か月以上薄毛が進行している、急に大量の髪が抜ける、円形の脱毛や頭皮症状がある場合は、AGA以外の原因も含めて医師へ相談しましょう。

