フォシーガで尿の回数が増えたのは正常?SGLT2阻害薬と頻尿の関係
医師・薬剤師監修
「フォシーガを飲み始めてからトイレへ行く回数が増えた」「夜中にも尿が出るようになったけれど、このまま飲み続けて大丈夫?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)は、SGLT2阻害薬と呼ばれる薬です。腎臓でブドウ糖が再吸収されるのを抑え、尿と一緒に糖を体外へ排出する作用があります。
この作用によって尿中の糖が増えると、水分も一緒に尿へ引き込まれやすくなるため、服用後に尿量や排尿回数が増えることは、フォシーガの作用として起こり得ます。
PMDAのフォシーガ添付文書・安全性情報でも、多尿や頻尿が報告されています。
ただし、「尿が増えるのは薬が効いている証拠だから大丈夫」とすべてを自己判断するのは避けましょう。強い喉の渇き、めまい、ふらつきなどがある場合は脱水にも注意が必要です。
フォシーガを飲むと尿の回数が増えるのは正常?
フォシーガの作用によって、排尿回数や尿量が増えることはあります。
フォシーガは腎臓にあるSGLT2という輸送体の働きを抑えます。
通常、腎臓でろ過されたブドウ糖の多くは体内へ再吸収されますが、SGLT2を阻害するとブドウ糖が尿中へ排出されやすくなります。
尿中にブドウ糖が増えると浸透圧の影響で水分も尿へ移動しやすくなります。これを「浸透圧利尿」と呼びます。
そのため、
- トイレへ行く回数が増える
- 1回あたりの尿量が増える
- 夜間に尿意を感じる
- 以前より喉が渇く
といった変化がみられる場合があります。
NHS(英国国民保健サービス)でも、ダパグリフロジンの一般的な副作用として、普段より尿が増えることが挙げられています。

SGLT2阻害薬で尿が増える仕組み
SGLT2阻害薬は、単純な「利尿剤」と同じ仕組みで尿を増やす薬ではありません。
ポイントは、尿へブドウ糖を排出することです。
尿中の糖濃度が高くなると、糖が水分を引き寄せるため、その分だけ尿量が増加することがあります。
PMDAの適正使用情報でも、フォシーガの尿糖排泄作用に伴う浸透圧利尿によって尿量が増加し、脱水を起こす可能性があることが注意喚起されています。
フォシーガを飲み始めたあとに多少トイレが近くなるのは、薬の作用から説明できる変化です。
尿の回数はいつまで増える?
個人差があります。
服用開始直後に尿量の増加を感じやすく、その後ある程度慣れてくる人もいます。
一方、血糖値が高い場合にはもともと尿量が多くなりやすく、フォシーガの作用が加わることで頻尿を強く感じることもあります。
また、服用量、腎機能、水分摂取量、同時に使用している薬などによっても変わります。
「何回までなら正常」と一律に判断するのではなく、服用前と比べてどの程度増えたか、生活へ支障が出ているかを確認しましょう。
夜中に何度もトイレへ行くのも副作用?
フォシーガの作用によって尿量が増えると、夜間の排尿回数が増える場合もあります。
ただし、夜間頻尿にはほかにもさまざまな原因があります。
- 夕方以降の水分摂取量が多い
- 前立腺肥大症
- 過活動膀胱
- 高血糖
- 睡眠障害
- 心不全などによる体液バランスの変化
そのため、「フォシーガを飲んでいるから仕方ない」と決めつけるのは避けましょう。
夜中に何度も起きて睡眠へ大きく影響する場合や、急に頻尿が悪化した場合は医師へ相談してください。
尿が増えたら水分を減らした方がいい?
自己判断で水分を極端に減らすのは避けましょう。
尿量が増えている状態で水分摂取まで大きく減らすと、脱水につながる可能性があります。
特に、
- 暑い日に長時間屋外で過ごす
- スポーツや肉体労働で汗をかく
- 発熱している
- 下痢や嘔吐がある
- 食事や水分が十分に取れていない
といった状況では注意が必要です。
PMDAでは、高齢者、利尿薬を併用している人、発熱・下痢・嘔吐などがある人、屋外活動をする人などでは脱水に注意するよう示されています。
水分量について制限を指示されている心不全・腎疾患などがある場合は、自己判断で増減せず主治医の指示に従いましょう。
どんな症状があれば脱水を疑う?
尿量が増えても体内の水分を十分補えていれば問題にならないことがあります。
一方、体から失われる水分が多くなると脱水が起こる可能性があります。
注意したい症状には、
- 強い喉の渇き
- 口の中が乾く
- 立ち上がったときにふらつく
- めまいがする
- 強いだるさがある
- 血圧が下がる
などがあります。
Cambridge University Hospitalsでも、SGLT2阻害薬で尿量が増えることによる脱水症状として、喉の渇きやめまいなどに注意するよう案内されています。

利尿剤と一緒に飲んでいる場合は注意
心不全や高血圧などで利尿薬を服用している人では、フォシーガと組み合わせることで体から失われる水分が増える可能性があります。
そのため、
- 急に体重が減った
- 血圧が下がった
- 立ちくらみが増えた
- 強い喉の渇きがある
といった場合には医師へ相談してください。
利尿薬の量を自分で減らしたり中止したりすることは避けましょう。
頻尿だけでなく排尿時の痛みがある場合は?
尿路感染症の可能性も考える必要があります。
SGLT2阻害薬を使用すると、尿中のブドウ糖が増えます。
そのため、性器周辺の感染症などが起こりやすくなることがあります。
特に、
- 排尿すると痛い
- 尿が近いだけでなく残尿感がある
- 尿が濁る
- 血尿が出る
- 発熱がある
- 背中やわき腹が痛む
といった症状がある場合は、単なる薬の利尿作用とは別に感染症を疑う必要があります。
「フォシーガを飲んでいるから頻尿なんだ」と思い込み、排尿痛や発熱を放置しないようにしましょう。
陰部のかゆみもフォシーガと関係する?
関係することがあります。
尿に糖が多く含まれることで、外陰部周辺では真菌が増殖しやすくなり、性器カンジダ症などが起こる場合があります。
NHS(英国国民保健サービス)でも、ダパグリフロジンでみられる一般的な副作用のひとつとして、性器の真菌感染が挙げられています。
陰部の強いかゆみ、赤み、腫れ、分泌物などがある場合は医療機関へ相談してください。
頻尿がつらいからフォシーガをやめてもいい?
自己判断で中止するのは避けましょう。
フォシーガは糖尿病だけでなく、慢性心不全や慢性腎臓病などでも使用される薬です。
そのため、急に中止すると本来得られる治療効果が失われる可能性があります。
頻尿が生活に支障を与えている場合には、
- どの時間帯に尿が増えるか
- 1日に何回程度排尿しているか
- 夜間何回起きるか
- 喉の渇きやめまいがあるか
- ほかの利尿薬を使用しているか
を記録して主治医へ伝えると相談しやすくなります。
体調不良の日は特に注意
発熱、下痢、嘔吐などがあり、食事や水分を十分取れない状態は「シックデイ」と呼ばれます。
SGLT2阻害薬を使用している人では、シックデイに脱水やケトアシドーシスなどのリスクが高くなる可能性があります。
PMDAでも、発熱・下痢・嘔吐、食欲不振などがある場合には注意が必要とされています。
食事や水分が取れないほど体調が悪い場合は、そのまま普段通り服用するのではなく、事前に医師から指示されたシックデイルールを確認してください。
こんな場合は医療機関へ相談を
尿の回数が多少増えただけで体調に問題がなければ、フォシーガの作用による変化の可能性があります。
一方、次のような場合は医師・薬剤師への相談を検討してください。
- 頻尿が強く日常生活に支障がある
- 夜間に何度もトイレへ起きる
- 強い喉の渇きがある
- めまい・ふらつきがある
- 急激に体重が減った
- 水分や食事が十分取れない
- 排尿時に痛みがある
- 発熱や血尿がある
- 陰部に強いかゆみ・赤みがある
特に、吐き気、腹痛、強いだるさ、息苦しさなどがある場合は、血糖値がそれほど高くなくてもケトアシドーシスが起きている可能性があるため、速やかに医療機関へ相談してください。
まとめ
フォシーガはSGLT2阻害薬で、腎臓から尿中へブドウ糖を排出することで作用します。
尿中の糖が増えると水分も一緒に排出されやすくなるため、服用後に尿量やトイレへ行く回数が増えることは、薬の作用として起こり得ます。
一方、尿が増えることで脱水につながる場合もあり、特に高齢者、利尿薬を使用している人、発熱・下痢・嘔吐などがある人では注意が必要です。
軽い頻尿だけなら薬の作用による可能性がありますが、強い口渇・めまい・ふらつき・排尿痛・発熱などがある場合は「正常な頻尿」と考えず医療機関へ相談しましょう。
また、頻尿がつらくてもフォシーガを自己判断で中止せず、主治医へ症状を伝えて治療を調整してもらうことが大切です。

