水をたくさん飲めば便秘は治る?水分だけでは改善しないケース
医師・薬剤師監修
便秘になると、「とにかく水をたくさん飲めばいい」と考える方は少なくありません。
たしかに、水分不足は便を硬くする原因のひとつです。しかし、便秘の原因がすべて水分不足というわけではなく、水を増やすだけでは改善しないケースも多くあります。
腸の動きが弱い、食物繊維が不足している、便意を我慢する習慣がある、薬の副作用があるなど、便秘にはさまざまな原因があります。
「出ない=水が足りない」と決めつけず、自分の便秘のタイプを考えることが大切です。
- 水分不足で便秘になるのはなぜ?
- 水を飲めば便が柔らかくなる?
- 「1日2リットル飲めば便秘が治る」は本当?
- 水分だけでは改善しない便秘1.食物繊維が少ない
- 食物繊維には種類がある
- 水分だけでは改善しない便秘2.腸の動きが弱い
- 水分だけでは改善しない便秘3.便意を我慢している
- 朝の水だけで便秘は治る?
- 冷たい水と温かい水、どちらがいい?
- コーヒーでも水分補給になる?
- 牛乳を飲むと出やすくなるのは便秘改善?
- 水分だけでは改善しない便秘4.薬の副作用
- 水分だけでは改善しない便秘5.過敏性腸症候群
- 便が硬い場合は水分を増やす意味がある?
- 大量に水を飲むのは危険なこともある?
- 便秘薬を使ったほうがいいケースもある?
- 便秘対策で大切な生活習慣
- 急な便秘は注意したほうがいい?
- 体重減少や血便を伴う場合も受診を
- まとめ
水分不足で便秘になるのはなぜ?
大腸では、便から水分が吸収されます。
体内の水分が不足していると、身体はできるだけ水分を保持しようとするため、大腸でも便から水分が多く吸収されやすくなります。
その結果、便が硬くなり、排出しにくくなることがあります。
特に汗を多くかく時期、発熱中、食事量が少ないときなどは、水分不足が便秘を悪化させることがあります。
水を飲めば便が柔らかくなる?
もともと水分摂取量が少ない人では、水分を適切に取ることで便が柔らかくなりやすくなることがあります。
ただし、すでに十分な水分を取っている人が、さらに大量の水を飲んだからといって、必ず便秘が改善するわけではありません。
必要以上に水を飲んでも、その分がそのまま便へ移動するわけではありません。
「1日2リットル飲めば便秘が治る」は本当?
必要な水分量は、体格、食事内容、気温、運動量、発汗量などによって異なります。
そのため、「全員が毎日2リットル飲めばよい」と一律に決めることはできません。
また、味噌汁、果物、野菜など食事からも水分は摂取しています。
大切なのは決まった数字を無理に達成することではなく、脱水にならない範囲でこまめに水分を取ることです。
水分だけでは改善しない便秘1.食物繊維が少ない
便の量を作るためには、食物繊維も重要です。
野菜、果物、豆類、海藻、全粒穀物などが極端に少ない食生活では、便そのものの量が少なくなり、排便しにくくなることがあります。
この場合、水だけを増やしても十分な改善につながらないことがあります。
水分と食物繊維はセットで考えることが大切です。
食物繊維には種類がある
食物繊維は大きく、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維に分けられます。
不溶性食物繊維は便のかさを増やしやすく、水溶性食物繊維は便の状態を整えたり腸内細菌のエサになったりします。
便秘だからと不溶性食物繊維だけを大量に増やすと、お腹の張りが強くなる人もいます。
食事全体のバランスを見ながら取り入れましょう。
水分だけでは改善しない便秘2.腸の動きが弱い
大腸の動きが低下していると、便を直腸へ送り出す力が弱くなります。
高齢者、運動量が少ない人、寝たきりの人などでは、こうしたタイプの便秘がみられることがあります。
水分を取って便が多少柔らかくなっても、腸が十分に動かなければ排便しにくいままです。
適度な運動や日常的に身体を動かすことも、便秘対策では重要です。
水分だけでは改善しない便秘3.便意を我慢している
朝や食後に便意があるのに、仕事や通学のため毎回我慢していると、徐々に便意を感じにくくなることがあります。
便が直腸に長くとどまると、その間にも水分が吸収されて硬くなります。
どれだけ水を飲んでも、便意を繰り返し我慢する習慣が続けば便秘は改善しにくくなります。
朝の水だけで便秘は治る?
朝起きて水を飲むことで胃が刺激され、腸の動きが始まりやすくなる人はいます。
さらに朝食を取ると、胃結腸反射によって大腸の動きが活発になります。
ただし、朝にコップ1杯の水を飲めば全員が排便できるわけではありません。
朝の水は「腸を動かすきっかけ」のひとつとして考え、朝食やトイレ習慣と組み合わせるとよいでしょう。
冷たい水と温かい水、どちらがいい?
便秘に対して、冷水と白湯のどちらが絶対に優れているという明確なルールはありません。
冷たい水の刺激で腸が動きやすくなる人もいれば、温かい飲み物のほうが飲みやすい人もいます。
温度よりも、無理なく続けられる方法で十分な水分を取ることのほうが重要です。
コーヒーでも水分補給になる?
コーヒーやお茶も水分として数えることはできます。
ただし、カフェインを多く取ると、人によっては動悸や睡眠障害など別の問題が起こることがあります。
また、コーヒーを飲むと腸の動きが促され、便意を感じる人もいます。
水分補給の中心は水やノンカフェインのお茶などにし、コーヒーだけに頼らないほうがよいでしょう。
牛乳を飲むと出やすくなるのは便秘改善?
牛乳を飲むと排便しやすくなる人もいますが、乳糖を十分に分解できない人では、下痢や腹痛が起こっているだけの場合もあります。
下痢になることを「便秘が治った」と考えるのは適切ではありません。
無理にお腹を下して排便させる方法は、便秘対策とは異なります。
水分だけでは改善しない便秘4.薬の副作用
薬の中には便秘を起こしやすいものがあります。
例えば、一部の鎮痛薬、抗コリン薬、鉄剤、カルシウム拮抗薬などで便秘がみられることがあります。
この場合、水分を増やすだけでは十分に改善しないことがあります。
薬を飲み始めてから便秘が悪化した場合は、自己判断で薬を中止せず医師・薬剤師へ相談してください。
水分だけでは改善しない便秘5.過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(IBS)では、腸そのものに目立った病変がなくても、腹痛と便通異常を繰り返します。
便秘型では、硬い便、腹痛、残便感などが続くことがあります。
ストレスなども関係するため、水分だけで改善するとは限りません。
腹痛を伴う便秘が何度も繰り返す場合は、単純な水分不足以外の原因も考えましょう。
便が硬い場合は水分を増やす意味がある?
コロコロした硬い便が出る場合、水分不足が関係していることがあります。
この場合は、普段の水分摂取量が十分か確認する価値があります。
ただし、便が硬い原因には、便が腸内に長くとどまっていることも関係します。
水分だけでなく、食事・運動・排便習慣も同時に見直しましょう。
大量に水を飲むのは危険なこともある?
短時間に極端な量の水を飲むと、血液中のナトリウム濃度が下がる「低ナトリウム血症」を起こす可能性があります。
また、心不全や腎機能低下などがある人では、水分摂取量を制限されていることもあります。
「便秘を治したいから」と自己判断で何リットルもの水を無理に飲むのは避けましょう。
便秘薬を使ったほうがいいケースもある?
生活習慣を見直しても便秘が続く場合は、便秘薬を使用することがあります。
便秘薬には、便に水分を集めて柔らかくする薬、腸の分泌を促す薬、腸を刺激する薬など複数の種類があります。
便秘のタイプによって適した薬は異なります。
特に刺激性下剤を頻繁に自己使用している場合は、治療方法について医師や薬剤師へ相談しましょう。
便秘対策で大切な生活習慣
水分だけでなく、食事、運動、睡眠、トイレ習慣などをまとめて整えることが大切です。
朝食を取る、食物繊維をバランスよく摂る、適度に歩く、便意を我慢しないなど、小さな習慣を積み重ねましょう。
便秘対策では「これだけすれば治る」という方法を探すより、複数の要因を少しずつ整えることが重要です。
急な便秘は注意したほうがいい?
これまで便秘ではなかった人が急に出なくなった場合には、注意が必要です。
特に、強い腹痛、嘔吐、お腹が大きく張る、血便が出るなどの場合は、腸閉塞など別の病気が隠れていることがあります。
こうした症状がある場合は、水を増やして様子を見るのではなく医療機関へ相談してください。
体重減少や血便を伴う場合も受診を
便秘が続くだけでなく、理由のない体重減少、血便、黒い便、発熱、貧血などを伴う場合は、消化管の病気が隠れていないか確認する必要があります。
長年の便秘と違う変化が出た場合は、「いつもの便秘」と決めつけないことが大切です。
まとめ
水分不足がある人では、水を適切に飲むことで便が硬くなるのを防ぎ、便秘が改善することがあります。
しかし、便秘には食物繊維不足、腸の動きの低下、便意の我慢、薬の副作用などさまざまな原因があり、水分だけでは改善しないケースも少なくありません。
「1日○リットル」と数字だけを追うのではなく、こまめな水分補給に加えて、食事、運動、朝食後のトイレ習慣なども整えましょう。
また、短時間に大量の水を飲むことは身体への負担になる場合があります。心臓病や腎臓病などで水分制限を受けている人は、自己判断で摂取量を増やさないでください。
便秘が長期間続く場合や、強い腹痛、嘔吐、血便、体重減少などを伴う場合は、消化器内科などへ相談しましょう。

