脂肪肝は痩せれば治る?体重減少と肝機能改善の関係
医師・薬剤師監修
健康診断で「脂肪肝があります」「ALTやASTが高いですね」と言われると、「痩せれば元に戻るの?」「何kgくらい減らせばいい?」と気になる方は多いでしょう。
結論からいうと、肥満や内臓脂肪と関係する脂肪肝では、体重を減らすことで肝臓にたまった脂肪が減り、肝機能が改善することがあります。
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)では、体重の3~5%程度を減らすことで肝脂肪の減少が期待でき、7~10%程度の減量では肝臓の炎症や線維化の改善につながる可能性があるとされています。
ただし、脂肪肝には飲酒や薬、ウイルス性肝炎など別の原因が関係することもあります。「痩せればすべての脂肪肝が治る」というわけではありません。
そもそも脂肪肝とは?
脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまっている状態です。
肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの代謝異常と関係する脂肪肝は、現在ではMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)と呼ばれることがあります。
一方、アルコールの摂取が主な原因となる脂肪肝もあります。
同じ「脂肪肝」でも原因が異なるため、まず自分の脂肪肝が何と関係しているのかを確認することが重要です。
なぜ太ると肝臓に脂肪がたまる?
摂取するエネルギーが消費するエネルギーを上回る状態が続くと、余ったエネルギーは脂肪として蓄えられます。
その一部が肝臓にもたまり、脂肪肝につながることがあります。
特に内臓脂肪が多い人やインスリン抵抗性がある人では、血液中の脂肪酸が肝臓へ流れ込みやすくなり、肝脂肪が増えやすくなります。
見た目の体重だけでなく、腹囲や内臓脂肪も脂肪肝と関係します。
何%痩せれば肝臓は改善する?
脂肪肝改善の目標としてよく使われるのが、「現在の体重から何%減らすか」という考え方です。
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)では、体重の3~5%程度の減少で肝臓にたまった脂肪が減る可能性があるとしています。さらに7~10%程度の減量では、脂肪肝に伴う炎症や線維化の改善も期待されます。
最初から大幅減量を目指すのではなく、まず5%前後を現実的な目標にすると取り組みやすいでしょう。
体重80kgなら何kg減らせばいい?
例えば体重80kgの場合、5%減量は約4kgです。
10%なら約8kgになります。
「20kg痩せなければ脂肪肝は改善しない」というわけではなく、数kgの減量でも肝脂肪が減る可能性があります。
少しの減量でも意味があるため、最初から完璧な体重を目指す必要はありません。
ALT・ASTも痩せれば下がる?
脂肪肝によって肝細胞に炎症や負担がかかっている場合、減量によってALTやASTが改善することがあります。
特にALTは肝細胞障害との関連が強いため、生活習慣の改善によって数値が下がるケースがあります。
ただし、ALT・ASTが高い原因は脂肪肝だけではありません。
体重が減ったのに肝機能異常が続く場合は、ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害、飲酒など別の原因も確認する必要があります。
体重が減れば脂肪肝は完全に元通りになる?
単純な脂肪蓄積の段階であれば、減量によって大きく改善する可能性があります。
しかし、脂肪肝が長期間続き、肝炎や線維化が進んでいる場合は、体重を減らしたからといって必ず完全に元の状態へ戻るわけではありません。
AASLD(アメリカ肝臓病学会)では、5~10%程度の減量が肝脂肪・炎症・線維化の改善と関連し、10%を超える減量ではより大きな組織学的改善が期待できるとしています。
脂肪肝は早い段階で対策するほど改善を期待しやすいと考えられます。
急激に痩せればもっと早く治る?
「早く肝臓をきれいにしたい」と極端な食事制限をするのはおすすめできません。
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)では、急激な減量や栄養不足は肝疾患を悪化させる可能性があるため、徐々に減量することが勧められています。
脂肪肝改善では「短期間で何kg落とすか」より、無理なく減量し、その体重を維持することが重要です。
運動だけでも脂肪肝は改善する?
体重が大きく減らなくても、運動には肝臓の脂肪を減らす効果が期待できます。
ウォーキング、ジョギング、自転車などの有酸素運動に加えて、筋力トレーニングも選択肢になります。
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)でも、体重減少がなくても身体活動そのものが脂肪肝に有益であるとしています。
「体重が減らないから運動は意味がない」と考えず、続けられる運動を習慣にしましょう。
脂肪肝改善では食事と運動どちらが大切?
どちらか一方ではなく、両方を組み合わせるのが基本です。
食事で摂取エネルギーを調整し、運動で消費エネルギーや筋肉量を維持することで、無理なく体重を落としやすくなります。
体重管理では「運動したから好きなだけ食べる」「食事を減らしたから動かない」という極端な方法を避けることが大切です。
どんな食事を意識すればいい?
脂肪肝だからといって、脂質だけを完全にカットする必要はありません。
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)では、摂取カロリーを適切に抑えながら、野菜、果物、全粒穀物などを取り入れ、飽和脂肪やトランス脂肪を減らす食事が勧められています。
また、糖分の多い清涼飲料や甘いジュースなど、単純糖質を多く含む食品・飲料の摂りすぎにも注意が必要です。
特定の食品を禁止するより、1日の総摂取エネルギーを見直すことが重要です。
果糖の多い飲み物には注意
清涼飲料水、甘いスポーツドリンク、加糖されたお茶、ジュースなどには、多くの糖分が含まれることがあります。
こうした飲料を日常的に多量摂取すると、余分なエネルギー摂取につながります。
食事量を減らしていても、甘い飲み物から大量のカロリーを摂っていると減量しにくくなります。
水や無糖のお茶などへ置き換える方法も有効です。
お酒を飲まなければ脂肪肝にならない?
脂肪肝はお酒を飲まない人にも起こります。
肥満、糖尿病、脂質異常症などと関連するMASLDでは、飲酒量が少なくても肝臓に脂肪が蓄積します。
一方、脂肪肝がある状態で多量飲酒を続けると、肝臓への負担がさらに大きくなる可能性があります。
「自分はお酒を飲まないから脂肪肝ではない」とは判断できません。
脂肪肝なら禁酒したほうがいい?
飲酒が脂肪肝に関係している場合は、減酒や禁酒が重要になります。
代謝異常と関係する脂肪肝でも、アルコールは肝臓へ追加の負担をかける可能性があります。
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)でも、脂肪肝がある人はアルコール摂取を最小限にすることが勧められています。
肝機能異常がある場合は、自分にとって適切な飲酒量を医師へ確認すると安心です。
痩せている人でも脂肪肝になる?
なります。
体重が標準範囲でも、内臓脂肪が多い、糖尿病や脂質異常症がある、筋肉量が少ないなどの要因によって脂肪肝になる人がいます。
そのため、痩せ型の脂肪肝では単純に「もっと体重を落とせばいい」とは限りません。
標準体重や低体重の人は、医師や管理栄養士と相談しながら体脂肪・食事・運動を調整することが重要です。
リバウンドすると脂肪肝も戻る?
減量によって肝脂肪が減っても、その後体重が大きく増えれば再び脂肪がたまる可能性があります。
脂肪肝改善では「一度痩せること」だけでなく、適正体重を維持することが重要です。
短期的なダイエットより、半年・1年と続けられる生活習慣を作ることが再発予防につながります。
サプリメントで脂肪肝は治せる?
「肝臓に良い」とされる健康食品やサプリメントは多数販売されていますが、それだけで脂肪肝を治療できるとは限りません。
むしろ一部の健康食品やハーブなどによって薬剤性肝障害が起こることがあります。
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)でも、サプリメントや代替療法を利用する前に医師へ相談するよう注意しています。
脂肪肝対策の中心は、体重管理、食事、運動などの生活習慣改善です。
どれくらいで肝機能は改善する?
改善までの期間には個人差があります。
生活習慣を見直して数か月でALTなどが改善する人もいれば、時間がかかる場合もあります。
また、肝機能の数値が下がったからといって、肝臓の脂肪や線維化が完全に改善したとは限りません。
体重だけでなく、ALT・ASTなどの血液検査や腹部超音波などを定期的に確認することが大切です。
脂肪肝を放置するとどうなる?
単純に脂肪がたまっているだけの状態から、炎症を伴うMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)へ進む人がいます。
さらに肝臓の線維化が進行すると、肝硬変や肝がんなどにつながる可能性があります。
症状がなくても、脂肪肝を健康診断で指摘された場合は放置しないことが重要です。
どんな場合は医療機関へ相談する?
ALT・ASTが繰り返し高い、糖尿病や肥満がある、腹部超音波で脂肪肝を指摘された場合などは、内科や消化器内科へ相談しましょう。
また、皮膚や白目が黄色くなる、尿が濃くなる、強い倦怠感、腹部の腫れなどがある場合は、進行した肝疾患なども考える必要があります。
「痩せればいいから」と自己流のダイエットだけで長期間様子を見るのではなく、自分の肝臓がどの段階なのか確認することが大切です。
まとめ
肥満や代謝異常と関係する脂肪肝では、体重を減らすことで肝臓の脂肪や肝機能が改善する可能性があります。
目安として、体重の3~5%程度の減量でも肝脂肪の減少が期待でき、7~10%程度の減量では炎症や線維化の改善につながる可能性があります。
ただし、急激なダイエットは避け、食事と運動を組み合わせて徐々に減量することが重要です。体重が大きく減らなくても、運動そのものが肝臓に良い影響を与えることがあります。
また、脂肪肝には飲酒や薬、ウイルス性肝炎など別の原因が関係することもあるため、ALT・ASTの異常が続く場合は原因を確認しましょう。
脂肪肝改善では、「一気に痩せること」よりも、現実的な減量を継続し、その体重を維持することが重要です。

