記憶力が高まる「スマートサプリ」って本当に効果あるの?研究データから期待できる成分を解説
監修:医師・薬剤師
「最近、人の名前がすぐに出てこない」「仕事で覚えることが多く、もう少し記憶力を高めたい」「勉強するときの集中力をサポートしたい」――そんな人から注目されているのが、いわゆる「スマートサプリ」です。
スマートサプリは正式な医学用語ではありませんが、一般には記憶、注意力、集中力などの認知機能をサポートすることを目的とした成分やサプリメントを指して使われます。
では、本当にサプリメントを飲むことで記憶力は高まるのでしょうか。
結論からいうと、「飲めば誰でも頭がよくなる」というほど単純ではありませんが、一部の成分ではヒトを対象としたランダム化比較試験で、記憶や認知機能について前向きな結果が報告されています。
例えば、バコパ・モニエリ、シチコリン、ホスファチジルセリンを含む食品、マルチビタミンなどでは、対象者や試験条件によって記憶機能の改善を示した研究があります。近年も認知機能を対象としたサプリメント研究は続いており、「すべて根拠がない」とまとめて否定するのは適切ではありません。
この記事では、スマートサプリに期待できる可能性を、できるだけ肯定的な研究データを中心に分かりやすく解説します。
スマートサプリは本当に記憶力を高める可能性がある?
ポイントは、「サプリメント」という大きなくくりではなく、どの成分を、どの量で、どのくらいの期間摂取したかを見ることです。
例えば、同じ「脳にいいサプリ」として販売されている商品でも、含まれている成分や含有量は大きく異なります。そのため、「スマートサプリは効く・効かない」という二択では評価できません。
一方で、特定の成分についてランダム化二重盲検プラセボ対照試験が行われ、記憶や認知機能に統計学的な改善が確認された研究もあります。バコパ・モニエリでは健康な成人や高齢者を対象とした複数の研究があり、シチコリンでも加齢に伴う記憶の低下を訴える健康な高齢者を対象に前向きな結果が報告されています。
「脳機能系サプリには科学的根拠がまったくない」という状態ではなく、一部の成分については研究が積み重なってきている段階と考えるのが現状に近いでしょう。
期待できる成分1|バコパ・モニエリ
記憶力をサポートする成分として比較的研究が多いものの一つが、バコパ・モニエリ(Bacopa monnieri)です。
バコパはインドの伝統医学で長く利用されてきた植物で、近年では認知機能を対象としたヒト試験も行われています。
健康な成人を対象とした二重盲検プラセボ対照試験では、バコパ・モニエリ抽出物300mgを12週間摂取したグループで、視覚情報処理速度、学習速度、記憶の定着などがプラセボ群より改善しました。特に効果は5週間時点より12週間時点で明確になっており、即効型というより継続摂取型の成分である可能性が示されています。
また、65歳以上の認知症ではない高齢者を対象とした12週間のランダム化二重盲検試験では、バコパ300mg/日を摂取したグループで、遅延再生記憶を測るテストなどに改善が認められました。
さらに、健康な高齢者を対象とした別の試験でも、バコパによって記憶の獲得と保持が改善したと報告されています。
9件のランダム化比較試験を解析したメタ解析では、バコパ・モニエリには認知機能、とくに注意処理速度を改善する可能性があると結論づけられています。
スマートサプリの中でも、バコパは「記憶・学習・注意」の複数領域で比較的研究データがそろっている成分の一つです。
期待できる成分2|シチコリン
シチコリン(Citicoline、CDP-コリン)も認知機能との関係が研究されている成分です。
シチコリンは、細胞膜を構成するリン脂質の合成などに関係する物質です。
2021年に発表された健康な50~85歳の男女100人を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、シチコリン500mgを12週間摂取したグループで、プラセボ群と比較してエピソード記憶などの指標に改善が確認されました。研究者らは、シチコリンの継続摂取が加齢に伴う記憶低下への対策として有用となる可能性を示しています。
さらに以前の研究でも、比較的記憶効率が低い高齢者にシチコリンを投与したところ、言語記憶機能が改善したと報告されています。
複数研究をまとめたレビューでも、CDP-コリンには少なくとも短期から中期において記憶や行動面へ前向きな効果を示すエビデンスがあると報告されています。
「最近、以前より物覚えが悪くなった気がする」という中高年層では、研究対象として特に注目されている成分です。
期待できる成分3|ホスファチジルセリン
ホスファチジルセリン(PS)は、神経細胞を含む細胞膜を構成するリン脂質の一つです。
ホスファチジルセリンを含むサプリメントについても、記憶や認知機能を対象とした研究があります。
2025年に公表された軽度認知障害(MCI)の人を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、ホスファチジルセリンを含む食品サプリメントを摂取したグループで複数の認知機能が改善し、特に短期記憶で前向きな結果が報告されました。
また、認知症ではないものの記憶力の低下を自覚している高齢者を対象とした研究では、ホスファチジルセリンとDHAを含む製剤によって認知機能が改善する可能性が示されています。
ホスファチジルセリンについては研究ごとに結果の違いもありますが、特に年齢とともに記憶力が気になり始めた人を対象とした研究で、肯定的な結果が報告されている点は注目できます。
期待できる成分4|マルチビタミンにも意外な研究結果
「脳専用サプリ」ではありませんが、近年注目されたのがマルチビタミンです。
米国で行われた大規模研究COSMOSの一部では、高齢者が毎日マルチビタミンを摂取すると、プラセボと比較して記憶機能が改善したと報告されています。2023年に発表された研究では、3,500人以上の高齢者を対象に評価し、マルチビタミン群でエピソード記憶の改善が認められました。
さらに2024年に発表されたCOSMOSの別解析でも、毎日のマルチビタミン・ミネラル摂取が高齢者の全般的な認知機能やエピソード記憶に利益をもたらす可能性が示されました。
不足している栄養素を適切に補うことが、結果として脳機能を支える可能性があるという点は、スマートサプリを考えるうえでも興味深いデータです。
新しい研究ではマグネシウムL-スレオネートにも注目
最近では、マグネシウムL-スレオネート(Magnesium L-threonate)についても認知機能を対象とした研究が行われています。
2026年にPubMedへ収載されたランダム化比較試験では、6週間の摂取後に全般的認知機能、ワーキングメモリー、反応時間などが改善したと報告されています。
まだ研究の蓄積という点ではバコパなどより少ないものの、スマートサプリ分野では新しい候補成分として今後の研究が期待される成分といえるでしょう。
スマートサプリはすぐ効く?
今回紹介した研究を見ると、いわゆるスマートサプリは「飲んだ30分後に急に記憶力が上がる」というものより、数週間~数か月継続して認知機能を評価するタイプの研究が中心です。
例えばバコパでは12週間摂取した試験で記憶や学習の改善が確認され、健康な高齢者を対象としたシチコリンの研究でも12週間継続されています。
そのため、数日飲んで「何も変わらない」と判断するより、研究で使用された摂取期間や成分量を確認することが重要です。
どんな人ほど試す価値がありそう?
研究結果から考えると、次のような人では特に関心を持つ価値があるでしょう。
- 年齢とともに物忘れが気になってきた
- 名前や言葉が以前より出てきにくい
- 仕事や勉強で覚える情報量が多い
- 集中力や注意力を維持したい
- 健康的な生活に加えて脳のコンディションも意識したい
特にシチコリンやホスファチジルセリンなどでは、中高年や記憶低下を自覚する人を対象とした研究で肯定的な結果が示されています。
スマートサプリを選ぶときは「成分名」まで確認する
「記憶力サポート」「脳活サプリ」と書かれているだけでは、科学的根拠の程度は判断できません。
選ぶ際は、
- どの成分が入っているか
- 1日量あたり何mg含まれるか
- ヒトを対象とした研究があるか
- 研究で使用された量と大きく違わないか
- 機能性表示食品の場合は届出内容
を確認するとよいでしょう。
日本の機能性表示食品は、事業者の責任で科学的根拠に基づく機能性を表示する制度で、消費者庁のウェブサイトから安全性・機能性の根拠となった届出情報を確認できます。
広告のキャッチコピーだけではなく、「何の成分を、どの程度摂取できる商品なのか」を見ることがスマートサプリ選びでは重要です。
サプリだけに頼るより「脳が働きやすい環境」と組み合わせる
スマートサプリを活用する場合でも、睡眠不足や極端な食生活をそのままにしてよいわけではありません。
サプリメントはあくまで食品であり、医薬品のように認知症などの病気を治療するものではありません。機能性表示食品についても、消費者庁は疾病の診断・治療・予防を目的とするものではなく、国が個々の製品の効果を認めた制度ではないことを明示しています。
そのうえで、十分な睡眠、運動、バランスのよい食事などを整えながら、プラスアルファとして研究データのある成分を取り入れるという考え方が現実的です。
効果を期待するなら「どの商品でも同じ」ではない
ここは特に重要です。
今回紹介した肯定的な研究結果は、「スマートサプリと呼ばれるすべての商品が効く」という意味ではありません。
研究では、特定の規格・用量のバコパ、シチコリン、ホスファチジルセリンなどが使用されています。市販の商品で含有量が大きく違えば、研究と同じ結果になるとは限りません。
また、同じ成分でも研究結果が一貫しない場合があります。例えば2025年に発表された別のバコパ試験では、認知機能についてプラセボを上回る改善が確認されなかった一方、ストレスや疲労については前向きな結果が示されました。
したがって、「一定の可能性を示すデータはある。しかし誰にでも確実に効くとはまだいえない」という理解が適切です。
薬を飲んでいる人は飲み合わせにも注意
健康食品や植物由来成分でも、薬との相互作用が起こる可能性があります。
消費者庁も、機能性表示食品について、疾病がある人や医薬品を服用している人は医師・薬剤師へ相談したうえで摂取すること、体調に異変を感じた場合は摂取を中止して医師へ相談することを求めています。
複数のサプリメントを同時に使う場合も、同じ成分の重複摂取に注意してください。
「物忘れ」が急に増えた場合はサプリだけで様子を見ない
年齢とともに軽い物忘れを自覚することはありますが、日常生活へ支障が出るほど記憶力が低下した場合は、サプリメントだけで対応するべきではありません。
特に、今までできていた仕事や家事ができない、同じ質問を何度も繰り返す、道に迷うなど明らかな変化がある場合は、医療機関へ相談しましょう。
スマートサプリは認知症の診断・治療を行うものではなく、機能性表示食品についても疾病の治療や予防を目的とする食品ではありません。
よくある質問
スマートサプリを飲めば記憶力は上がりますか?
一部の成分では記憶や認知機能が改善したランダム化比較試験があります。バコパ、シチコリン、ホスファチジルセリンを含む製剤などが代表例です。ただし、すべての人で同じ効果が出るわけではありません。
健康な人が飲んでも意味がありますか?
健康な成人を対象とした研究でも肯定的な結果があります。バコパでは健康な成人で学習や記憶、情報処理に改善がみられた試験があり、シチコリンでも健康な中高年・高齢者を対象とした研究があります。
どの成分が特におすすめですか?
記憶を目的にするなら、研究数という点ではバコパ・モニエリ、シチコリン、ホスファチジルセリンなどが候補になります。ただし、目的、年齢、服用している薬などによって適した成分は異なります。
飲んですぐ頭が冴えますか?
今回紹介した成分の多くは、数週間~12週間程度継続した研究で評価されています。バコパでは12週間で効果がより明確になった研究もあり、即効型というより継続的なサポートを期待する成分と考えた方がよいでしょう。
機能性表示食品なら国が効果を認めているのですか?
いいえ。機能性表示食品は事業者の責任で科学的根拠を届け出る制度であり、国が個別の商品について機能性や安全性を審査して効果を認定する制度ではありません。届出資料は消費者庁ウェブサイトで確認できます。
まとめ
記憶力や認知機能をサポートする「スマートサプリ」には、科学的に期待できる可能性を示した成分があります。
特にバコパ・モニエリでは、健康な成人や高齢者を対象とした試験で学習、記憶、注意機能などの改善が報告され、複数試験をまとめたメタ解析でも認知機能への前向きな結果が示されています。
シチコリンでは健康な中高年・高齢者の記憶機能、ホスファチジルセリンを含む製剤では軽度認知障害などを対象に短期記憶の改善を示した研究があります。
さらに、マルチビタミンを使った大規模COSMOS研究でも、高齢者の記憶や認知機能について前向きな結果が報告されています。
つまり、「スマートサプリは全部気休め」と考える必要はありません。成分によってはヒト試験で興味深い結果が出ており、今後さらに研究が進む分野です。
ただし、効果は成分・用量・年齢・体質などによって異なります。広告だけで判断せず、ヒト試験のある成分や機能性表示食品の届出資料などを確認し、生活習慣を整えたうえで上手に活用することがポイントです。
「記憶力を少しでも維持したい」「年齢とともに脳のコンディションが気になってきた」という人にとって、研究データのあるスマートサプリは、健康管理の選択肢の一つとして検討する価値があるでしょう。

