利尿剤による電解質異常とは?筋肉のけいれん・だるさ・動悸に注意
監修:医師・薬剤師
利尿剤を服用していて、「最近、足がつりやすい」「体がだるい」「動悸がする」と感じていませんか。
こうした症状の原因の一つとして考えられるのが、利尿剤による電解質異常です。
利尿剤は尿量を増やして体内の余分な水分やナトリウムを排出する薬で、高血圧や心不全、むくみなどの治療に使われます。一方で、薬の種類によってはナトリウムやカリウムなども尿とともに失われたり、反対にカリウムが体内へたまりすぎたりすることがあります。フロセミドの添付文書でも、急激な利尿による電解質失調や脱水への注意、長期使用時の定期的な検査が求められています。
特に注意したいのが、筋肉のけいれん、手足の力が入りにくい、強いだるさ、動悸などです。これらは低カリウム血症などで現れることがあります。PMDA(医薬品医療機器総合機構)の重篤副作用疾患別対応マニュアルでも、低カリウム血症の症状として手足のだるさ、力が抜ける感じ、筋肉痛、麻痺、不整脈などが挙げられています。
この記事では、利尿剤で起こる電解質異常の仕組み、注意したい症状、利尿剤の種類による違い、受診の目安について分かりやすく解説します。
そもそも電解質とは?
電解質とは、血液や体液の中に存在し、神経や筋肉、心臓などが正常に働くために必要なミネラルです。
代表的なものには、
- ナトリウム
- カリウム
- マグネシウム
- カルシウム
- クロール
などがあります。
これらは単に「栄養素」として存在しているだけではなく、体内の水分量を調節したり、神経から筋肉へ信号を送ったり、心臓のリズムを維持したりするうえで重要です。
そのため電解質が極端に増減すると、筋肉や神経、心臓などに症状が現れる可能性があります。
なぜ利尿剤で電解質異常が起こる?
利尿剤は腎臓へ作用し、ナトリウムや水分の再吸収を抑えることで尿量を増やします。
例えばフロセミドは腎尿細管におけるナトリウムとクロールの再吸収を抑え、尿量を増やす薬です。
このとき水分だけが選択的に排泄されるわけではなく、薬の種類によってはカリウムなどの電解質も一緒に失われます。
反対に、スピロノラクトンのようなカリウム保持性利尿薬では、カリウムの排泄を抑えるため高カリウム血症が起こることがあります。国内添付文書でも、長期使用時には高カリウム血症などの電解質異常に注意し、定期的な検査を行うことが求められています。
利尿剤で起こりやすい電解質異常
1.低カリウム血症
フロセミドなどのループ利尿薬や、ヒドロクロロチアジドなどのチアジド系利尿薬では、尿中へのカリウム排泄が増え、血液中のカリウムが低くなることがあります。フロセミドの添付文書では低カリウム血症への注意が示され、ヒドロクロロチアジドについても低カリウム血症を起こすことが知られています。
カリウムは筋肉や心臓の正常な電気活動に関係するため、低下するとさまざまな症状が現れます。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)では、低カリウム血症の症状として、
- 手足のだるさ
- 力が入りにくい
- 筋肉のこわばり
- 筋肉痛
- 麻痺
- 不整脈
などを挙げています。
「最近よく足がつる」「筋肉に力が入りにくい」「動悸が増えた」という症状がある場合は、カリウム値を確認する必要があります。
2.低ナトリウム血症
利尿剤ではナトリウムも尿中へ排泄されるため、低ナトリウム血症が起こることがあります。
特に高齢者では低ナトリウム血症や低カリウム血症が起こりやすいため注意が必要です。フロセミドなどの添付文書でも、高齢者ではこうした電解質異常が現れやすいことが示されています。
低ナトリウム血症では、
- 体がだるい
- 食欲がない
- 吐き気
- 嘔吐
- 頭痛
などが現れ、重症になるとけいれんや意識障害につながることがあります。PMDA(医薬品医療機器総合機構)の安全性情報でも、低ナトリウム血症の症状として倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、けいれん、意識障害などが示されています。
3.高カリウム血症
「利尿剤=カリウムが減る」とは限りません。
スピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬では、カリウムを尿へ排泄しにくくするため、反対に血液中のカリウムが上昇することがあります。スピロノラクトンの添付文書では、高カリウム血症が重大な副作用として注意され、継続使用では定期的な検査が必要とされています。
特に、
- 腎機能が低下している
- カリウムを上げる作用のある薬を併用している
- カリウム製剤を使用している
場合は高カリウム血症のリスクが高くなる可能性があります。
高カリウム血症でも筋力低下や不整脈が起こることがあるため、「足がつる=カリウム不足」と自己判断しないことが重要です。
筋肉のけいれん・足がつるのはなぜ?
カリウムなどの電解質は、筋肉が収縮したり緩んだりするための電気的な信号に関係しています。
利尿剤によって電解質のバランスが崩れると、この働きが正常に行われにくくなり、筋肉のけいれんやこわばり、脱力感として現れることがあります。
ただし、足がつる原因は電解質異常だけではありません。
- 発汗による脱水
- 激しい運動
- 筋肉疲労
- 長時間同じ姿勢を取る
などでも起こります。
利尿剤を飲んでいる人で、以前にはなかった筋肉のけいれんが繰り返し起こる場合は、血液検査で電解質を確認することが重要です。
「だるさ」も電解質異常のサインになる
利尿剤を始めてから体がだるくなっても、「血圧が下がったからかな」「疲れているだけ」と考えてしまうことがあります。
しかし、低カリウム血症では手足のだるさや力が抜ける感じが、低ナトリウム血症でも全身倦怠感が現れることがあります。
また、利尿が強すぎて脱水状態になると、血圧低下によるふらつきやめまいが起こる場合もあります。フロセミドでは急激な利尿による脱水や電解質失調への注意が必要とされています。
薬を飲み始めたり増量したりしたあとに、強いだるさが続く場合は処方医へ相談しましょう。
動悸がする場合は特に注意
カリウムは心臓の電気活動にも重要です。
カリウム値が低すぎても高すぎても、心臓のリズムに影響する可能性があります。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)の低カリウム血症マニュアルでも、不整脈が症状の一つとして示されています。
そのため、利尿剤を服用している人が、
- 脈が飛ぶ感じがする
- 心臓が急にドキドキする
- 胸が苦しい
- めまいを伴う
- 失神しそうになる
と感じた場合は注意してください。
強い動悸や胸痛、失神、息苦しさなどがある場合は、単なる「副作用かな」と様子を見ず、速やかに医療機関へ相談する必要があります。
利尿剤の種類によって異常の方向が違う
| 利尿剤のタイプ | 代表例 | 注意する電解質 |
|---|---|---|
| ループ利尿薬 | フロセミド | 低ナトリウム・低カリウムなど |
| チアジド系利尿薬 | ヒドロクロロチアジド | 低ナトリウム・低カリウムなど |
| カリウム保持性利尿薬 | スピロノラクトン | 高カリウム |
フロセミドでは低ナトリウム血症・低カリウム血症などへの注意が示され、ヒドロクロロチアジドも低カリウム血症を起こすことが知られています。一方、スピロノラクトンでは高カリウム血症が問題になります。
つまり、利尿剤を飲んでいるからといって「カリウムを多く取ればいい」という単純な話ではありません。
自己判断でカリウムサプリを飲まない
足がつったり、だるさがあったりすると「カリウム不足かもしれない」と考えて、バナナを大量に食べたりカリウムサプリメントを追加したくなるかもしれません。
しかし、服用している薬がスピロノラクトンなどであれば、もともとカリウムが高くなりやすい可能性があります。
また、腎機能が低下している人はカリウムを十分に排泄できない場合があります。
電解質異常は症状だけでは「低いのか高いのか」を判断できないことがあります。
自己判断でサプリメントや塩分を増減する前に、血液検査で実際の値を確認しましょう。
水を大量に飲めば予防できる?
利尿剤を飲んでいるからといって、自己判断で大量の水分を取ればよいわけではありません。
利尿剤は心不全やむくみなど、体内に余分な水分がたまっている状態を治療するために使われることがあります。その場合、病状によっては水分摂取量そのものを調整していることがあります。
一方で、暑い季節や下痢・嘔吐などが重なると脱水が進み、電解質異常が起こりやすくなる場合があります。フロセミドでは電解質失調とともに脱水にも十分注意することが求められています。
水分量は「多ければよい」のではなく、心臓や腎臓の状態を含めて処方医の指示に従うことが重要です。
夏は特に注意した方がいい?
夏は発汗によって水分や電解質を失いやすくなります。
その状態に利尿剤の作用が加わると、脱水や電解質異常へ傾く可能性があります。
特に、
- 猛暑日に屋外で長時間活動する
- 大量に汗をかいた
- 食欲がなく食事量が減っている
- 下痢や嘔吐がある
場合は、通常より体液バランスが変化しやすくなります。
ただし、心不全や腎疾患などで水分制限を受けている人は、自己判断で水分量や塩分量を増やさず、医師へ相談してください。
定期的な血液検査が大切
電解質異常は、症状が出る前に血液検査で見つかることがあります。
フロセミドの添付文書では、長期間使用する場合には電解質失調が起こることがあるため定期的に検査を行うことが求められています。スピロノラクトンについても、高カリウム血症などの電解質異常を確認するため定期的な検査が必要です。
検査では、状況に応じて、
- ナトリウム
- カリウム
- 腎機能
などを確認します。
特に薬を開始・変更した直後、高齢者、腎機能が低下している人などでは、より注意深い確認が必要になることがあります。
こんな症状が出たら処方医へ相談
利尿剤を使用していて、次の症状が新しく現れた場合は医師や薬剤師へ相談しましょう。
- 足や手の筋肉が頻繁につる
- 手足に力が入りにくい
- 強いだるさが続く
- 食欲が低下した
- 吐き気や嘔吐がある
- めまいやふらつきがある
- 動悸がする
低カリウム血症では筋力低下や不整脈、低ナトリウム血症では倦怠感、吐き気、けいれん、意識障害などが起こることがあります。
緊急性が高い症状
次のような症状がある場合は、早急な医療対応が必要です。
- 強い動悸と胸の痛み
- 意識がもうろうとする
- 失神した
- けいれんがある
- 呼吸が苦しい
- 体にほとんど力が入らない
重度の低ナトリウム血症ではけいれんや意識障害が、低カリウム血症では不整脈などが起こる可能性があります。
症状が強い場合は、自分でカリウムや塩分を補給して様子を見るのではなく、医療機関で血液検査や心電図などによる評価を受けてください。
利尿剤を勝手に中止してはいけない
筋肉がつる、だるいなどの症状があると、「薬が原因なら飲むのをやめよう」と考えるかもしれません。
しかし利尿剤は、心不全や高血圧、むくみなどの治療に重要な薬です。フロセミドも高血圧や心性・腎性・肝性浮腫などに使用されます。
急に中止すると、元の病気が悪化する可能性があります。
気になる症状がある場合は、自己判断で中止・減量するのではなく、処方医へ相談して血液検査や用量調整、薬の変更などを検討してもらいましょう。
よくある質問
利尿剤を飲むと足がつりやすくなりますか?
薬の種類によってはあります。ループ利尿薬やチアジド系利尿薬では低カリウム血症などが起こることがあり、筋肉のだるさやこわばり、力が抜ける感じなどが現れることがあります。
利尿剤を飲んで動悸がするのは危険ですか?
動悸にはさまざまな原因がありますが、低カリウム血症などの電解質異常で不整脈が起こることがあります。新しく動悸が出た場合は処方医へ相談し、胸痛や失神、強い息苦しさを伴う場合は速やかな受診が必要です。
バナナを食べればカリウム不足を防げますか?
自己判断でカリウムを増やすことはおすすめできません。カリウム保持性利尿薬では反対に高カリウム血症が起こる場合があるためです。まず血液検査でカリウム値を確認してください。
利尿剤を飲んでだるいだけでも受診した方がいい?
軽いだるさだけならさまざまな原因が考えられますが、利尿剤開始後や増量後に症状が続く場合は相談しましょう。低カリウム血症や低ナトリウム血症でも倦怠感が現れることがあります。
電解質異常は血液検査で分かりますか?
はい。血清ナトリウムやカリウムなどを測定して確認します。利尿剤を長期間使用する場合には、定期的な電解質検査が重要です。
まとめ
利尿剤は余分な水分を尿として排出する一方、薬の種類によって体内の電解質バランスを変化させることがあります。
フロセミドなどでは低ナトリウム血症・低カリウム血症などが起こる可能性があり、長期使用では定期的な電解質検査が必要です。
低カリウム血症では、手足のだるさ、力が抜ける感じ、筋肉痛、不整脈などが現れる場合があります。
低ナトリウム血症では、倦怠感、食欲低下、吐き気などがみられ、重症ではけいれんや意識障害につながることがあります。
一方、スピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬では、反対に高カリウム血症へ注意が必要です。
そのため、「利尿剤を飲んでいるからカリウムを補給しよう」と自己判断するのは避けましょう。電解質が低いのか高いのかは、症状だけでは判断できない場合があります。
筋肉のけいれん、強いだるさ、動悸などが続く場合は処方医へ相談し、必要に応じて血液検査を受けてください。強い動悸、胸痛、失神、けいれん、意識障害などがある場合は、速やかな医療対応が必要です。

