ピロリ菌がいると胃がんになりやすい?検査と除菌を考えるタイミング
医師・薬剤師監修
「ピロリ菌がいると胃がんになるの?」「症状がなくても検査したほうがいい?」と不安に感じる方は少なくありません。
結論からいうと、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の慢性感染は、胃がんの重要なリスク因子のひとつです。ただし、ピロリ菌に感染している人が必ず胃がんになるわけではありません。
ピロリ菌が長期間胃に住み続けると慢性的な胃炎を起こし、胃粘膜の萎縮などを経て、一部の人では胃がんにつながることがあります。NCI(アメリカ国立がん研究所)でも、慢性的なピロリ菌感染は胃がんの主要なリスク因子であり、除菌によって胃がん発症リスクを下げられることが報告されています。
そもそもピロリ菌とは?
ピロリ菌は胃の粘膜に感染する細菌です。
胃の中は強い酸性ですが、ピロリ菌は特殊な仕組みによって胃酸から身を守り、胃粘膜に長期間住み続けることができます。
感染しても自覚症状がない人は珍しくありません。そのため、本人が知らないまま何十年も感染が続くことがあります。
「胃が痛くないからピロリ菌はいない」とは判断できません。
なぜピロリ菌が胃がんにつながるの?
ピロリ菌に感染すると、胃粘膜に慢性的な炎症が起こります。
炎症が長期間続くことで、正常な胃粘膜が徐々に薄くなる「萎縮性胃炎」が進行することがあります。
さらに粘膜の性質が変化する腸上皮化生などを経て、胃がんが発生しやすい状態になる場合があります。
ピロリ菌が直接その場で胃がんを作るというより、長年の慢性炎症によって胃粘膜が変化し、発がんしやすい環境になると考えると分かりやすいでしょう。
ピロリ菌がいたら必ず胃がんになる?
いいえ。感染しているからといって、すべての人が胃がんになるわけではありません。
胃がんの発症には、ピロリ菌感染だけでなく、年齢、遺伝的要因、喫煙、食生活、胃粘膜の萎縮の程度など複数の要素が関係します。
一方で、ピロリ菌の慢性感染が胃がんリスクを高めることは明らかになっています。
「必ずがんになる菌」ではありませんが、「胃がんリスクを高める重要な因子」と理解しておくことが大切です。
除菌すれば胃がんを防げる?
ピロリ菌を除菌すると、胃粘膜で続いていた炎症を抑えられ、将来的な胃がんリスクを下げることが期待できます。
NCI(アメリカ国立がん研究所)では、ピロリ菌除菌によって胃がん発症が減少することが複数の研究で示されており、長期追跡研究では胃がん発症を大きく低下させた結果も報告されています。
ただし、除菌すれば胃がんリスクが完全にゼロになるわけではありません。
なぜ除菌後も胃がんになることがある?
ピロリ菌感染が長期間続き、すでに胃粘膜の萎縮や腸上皮化生などが進んでいる場合、除菌後も胃がんリスクが残ります。
特に高齢になってから除菌した人や、内視鏡で強い萎縮性胃炎を指摘されている人では注意が必要です。
除菌は「これからのリスクを下げる治療」であり、それまでに起きた胃粘膜の変化をすべて元通りにする治療ではありません。
そのため、除菌成功後も医師から胃内視鏡検査を勧められた場合には定期的に受けることが重要です。
どんな人がピロリ菌検査を考えたほうがいい?
胃・十二指腸潰瘍を経験したことがある人、慢性胃炎を指摘された人、胃内視鏡で胃粘膜の萎縮を指摘された人などでは、ピロリ菌感染について確認することがあります。
また、家族に胃がんになった人がいる場合に、自分のピロリ菌感染が気になる方もいるでしょう。
症状の有無だけでは感染を判断できないため、リスクが気になる場合は消化器内科などで検査の必要性を相談しましょう。
胃痛や胸やけがあればピロリ菌?
胃痛、胃もたれ、吐き気などはピロリ菌感染に伴って起こることがありますが、症状だけで診断することはできません。
逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、胃潰瘍、薬の副作用などでも似た症状が出ます。
反対に、ピロリ菌に感染していてもまったく症状がない人もいます。
「胃が痛いからピロリ菌」「症状がないから感染していない」という判断はできません。
ピロリ菌はどうやって検査する?
ピロリ菌の検査には複数の方法があります。
代表的なのが尿素呼気試験です。検査用の薬を服用し、呼気を調べることでピロリ菌感染の有無を判定します。
そのほか、便中抗原検査、血液や尿を使った抗体検査、胃内視鏡検査の際に胃粘膜を採取して行う検査などがあります。
どの検査を選ぶかは、初回検査なのか除菌後の確認なのか、胃内視鏡が必要なのかによって異なります。
血液検査だけで分かる?
血液中のピロリ菌抗体を測定する方法があります。
簡便な検査ですが、過去に感染して除菌した人でも抗体がしばらく残ることがあります。
そのため、「現在もピロリ菌がいるか」を確認する目的では、尿素呼気試験や便中抗原検査など別の検査が適していることがあります。
検査結果だけを自己判断せず、過去の除菌歴なども医師へ伝えましょう。
ピロリ菌の除菌はどうやって行う?
一般的な除菌治療では、胃酸を抑える薬と複数の抗菌薬を一定期間組み合わせて服用します。
治療方法は、使用できる薬や過去の除菌歴、薬剤耐性などによって変わることがあります。
重要なのは、症状がなくなったからと途中で薬をやめないことです。
抗菌薬を自己判断で中断すると除菌に失敗するだけでなく、薬剤耐性につながる可能性があります。
除菌薬を飲めばそれで終了?
除菌治療を終えただけでは、本当にピロリ菌がいなくなったかは分かりません。
除菌に失敗することもあるため、治療後には除菌判定を行います。
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)では、治療終了後少なくとも4週間程度経過してから、ピロリ菌が消失したか確認する検査を行うことが推奨されています。
「薬を飲み切った=除菌成功」ではなく、除菌判定まで受けることが大切です。
一度除菌に失敗したらどうする?
1回目の治療で除菌できないこともあります。
その場合には、使用する抗菌薬などを変更した二次除菌が検討されます。
自己判断で以前の抗菌薬をもう一度飲んだり、手元に残っている薬を使用したりするのは避けてください。
除菌失敗後は薬剤耐性の可能性も考え、医師が次の治療を選択します。
若いうちに除菌したほうがいい?
一般的には、ピロリ菌による胃粘膜のダメージが進む前に除菌できれば、将来の胃がんリスク低減という点でメリットが期待できます。
長期間感染が続くほど萎縮性胃炎などが進行する可能性があるためです。
ただし、年齢だけで除菌の必要性を判断するのではなく、感染の有無を適切に検査したうえで治療を検討します。
「若いから放置してよい」というものではなく、感染が確認された場合は医師と除菌について相談しましょう。
高齢になってから除菌しても意味はある?
すでに胃粘膜の萎縮が進んでいる場合でも、除菌によってその後の胃がんリスクを低下させられる可能性があります。
一方で、若い時期に除菌した場合よりも残存リスクが高いケースがあります。
年齢が高いから除菌しても意味がないということではありませんが、除菌後の胃がん検診・内視鏡検査がより重要になる場合があります。
家族に胃がんがいる場合は検査したほうがいい?
胃がんにはピロリ菌以外にも遺伝的・環境的な要因が関係します。
家族歴があるから必ず胃がんになるわけではありませんが、胃がんのリスクを考えるうえで重要な情報のひとつです。
NCI(アメリカ国立がん研究所)でも、胃がんの家族歴がある人でピロリ菌除菌によって胃がん発症が減少した研究結果が報告されています。
親や兄弟姉妹に胃がんになった人がいて、自分の感染状況が分からない場合は、医療機関でピロリ菌検査について相談してみるとよいでしょう。
除菌後も胃カメラは必要?
除菌によって胃がんリスクを下げることはできますが、ゼロにはなりません。
特に萎縮性胃炎が進んでいる人や、過去に早期胃がんの治療を受けた人などでは、除菌後も定期的な胃内視鏡検査が重要です。
「ピロリ菌を除菌したから、もう胃がん検診は不要」という考え方は適切ではありません。
胃がんを疑う症状はある?
早期の胃がんでは、自覚症状がないこともあります。
進行すると、胃痛、食欲低下、体重減少、吐き気、貧血などが現れる場合がありますが、これらはほかの胃腸疾患でも起こります。
特に、理由のない体重減少、黒い便、繰り返す嘔吐、強い貧血、食事がつかえるような症状がある場合には早めの受診が必要です。
症状がないから胃がんが絶対にないとは言えないため、リスクに応じた検査を受けることが重要です。
まとめ
ピロリ菌の慢性感染は胃がんの重要なリスク因子ですが、感染しているすべての人が胃がんになるわけではありません。
ピロリ菌による慢性胃炎が長期間続くことで、萎縮性胃炎などの胃粘膜の変化が進み、一部の人で胃がん発症リスクが高まります。
ピロリ菌の除菌は胃がんリスクを低下させることが期待できますが、除菌後もリスクが完全になくなるわけではありません。
胃・十二指腸潰瘍の経験がある、慢性胃炎や胃粘膜の萎縮を指摘されている、家族に胃がんの人がいるなど、感染が気になる場合は消化器内科などで検査について相談しましょう。
感染が確認されて除菌治療を受けた場合には、薬を飲んで終わりではなく除菌判定まで受け、その後も必要に応じて胃内視鏡検査を継続することが大切です。

