高血圧でもED治療薬は使える?血圧の薬を飲んでいる人の注意点
医師・薬剤師監修
「高血圧の薬を飲んでいるけれど、ED治療薬を使っても大丈夫?」「血圧が下がりすぎないか心配」と感じている方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、血圧が適切にコントロールされ、心臓や血管の状態に問題がなければ、高血圧の人でもED治療薬を使用できる場合があります。
ただし、ED治療薬には血管を広げて血圧を下げる作用があるため、服用している薬によっては注意が必要です。特に、狭心症などに使われる硝酸薬やNO(一酸化窒素)供与薬との併用はできません。
「高血圧だからED治療薬は使えない」のではなく、「現在の血圧・心血管の状態・服用中の薬を確認してから使う」ことが重要です。
高血圧でもED治療薬は使える?
高血圧があるだけで、シルデナフィル(バイアグラなど)やタダラフィル(シアリスなど)といったPDE5阻害薬が一律に使用できなくなるわけではありません。
欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインでは、PDE5阻害薬と一般的な降圧薬を併用すると血圧が多少追加で低下することはあるものの、多くの場合その低下は小さく、降圧薬を使用していること自体で副作用が大幅に増えるわけではないとされています。
一方で、血圧が十分に管理されていない場合や、性行為そのものが心臓への負担になる状態では使用できないことがあります。
例えばシアリス(タダラフィル)の患者向医薬品ガイドでは、安静時血圧が170/100mmHgを超えるような安定していない高血圧や、低血圧、不安定狭心症などがある人は使用できないとされています。
| 状態 | ED治療薬の考え方 |
|---|---|
| 治療で血圧が安定している | 使用できる場合がある |
| 降圧薬を服用している | 薬の種類を確認したうえで使用を検討 |
| 血圧がかなり高くコントロールされていない | まず血圧の治療・評価を優先 |
| 狭心症で硝酸薬を使用している | ED治療薬との併用不可 |
| 性行為を控えるよう医師から指示されている | ED治療薬を自己判断で使用しない |

なぜED治療薬で血圧が下がる?
シルデナフィルやタダラフィルなどのPDE5阻害薬は、陰茎の血管を広げ、性的刺激があったときに血液が流れ込みやすい状態を作る薬です。
その作用は陰茎だけに限定されるわけではなく、全身の血管にも多少影響します。そのため、服用後に血圧が下がり、頭痛、顔のほてり、めまいなどが起こることがあります。
通常の降圧薬との併用では、この血圧低下は多くの場合軽度ですが、もともと血圧が低い人や複数の薬を使用している人では注意が必要です。
普通の血圧の薬なら一緒に飲める?
高血圧治療でよく使用される降圧薬には、カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬などがあります。
これらを使用しているからといって、ED治療薬が必ず禁止されるわけではありません。PMDAの安全性情報でも、シルデナフィルについて、カルシウム拮抗薬やACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬などを服用している高血圧患者で、血圧低下に伴う症状のリスクが大きく増えなかったことが紹介されています。
ただし、服用量や血圧、腎機能、心疾患の有無などによって判断は変わります。
「血圧の薬なら全部大丈夫」と自己判断するのではなく、ED治療薬を使用する前に現在服用している薬を医師や薬剤師へ伝えてください。
硝酸薬との併用は絶対に避ける
もっとも重要なのが、狭心症などに使用される硝酸薬・NO供与薬との併用です。
代表的な薬には次のようなものがあります。
- ニトログリセリン
- 硝酸イソソルビド
- 亜硝酸アミル
- ニコランジル
PDE5阻害薬とこれらの薬を併用すると、血管を広げる作用が重なり、血圧が危険なほど低下する可能性があります。
シアリスやバイアグラの添付文書でも、硝酸薬・NO供与薬との併用は禁忌とされています。
狭心症の薬を使用している人は、薬の名前が分からない場合もED治療薬を服用せず、先に医師または薬剤師へ確認してください。

リオシグアトを飲んでいる人も併用できない
肺高血圧症などの治療に使用されるリオシグアト(アデムパス)も、PDE5阻害薬との併用ができない薬です。
リオシグアトとタダラフィルやシルデナフィルを併用すると、血管拡張作用が重なり、血圧が低下するおそれがあります。PMDAの添付文書・患者向医薬品ガイドでも併用禁忌とされています。
α遮断薬を飲んでいる人は注意が必要
前立腺肥大症や高血圧の治療で、タムスロシン、ドキサゾシンなどのα遮断薬を使用している人もいます。
α遮断薬も血管を広げる作用があるため、ED治療薬と併用すると血圧がさらに下がり、立ちくらみやめまいを起こす可能性があります。
EAUガイドラインでは、α遮断薬とPDE5阻害薬は併用されることもありますが、血圧への相加的な影響があるため注意が必要とされています。
服用する時間をずらしたり、少量から開始したりする場合もありますが、これは薬の種類や血圧によって異なります。自己判断で調整しないようにしましょう。
高血圧の人にEDが多いのはなぜ?
高血圧とEDは無関係ではありません。
勃起には、陰茎へ十分な血液が流れることが必要です。高血圧の状態が長く続くと血管の内側が傷つき、動脈硬化が進むことで陰茎への血流が低下し、EDにつながる可能性があります。
EAUガイドラインでも、EDには高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙などの心血管リスクが関係するとされ、ED患者では生活習慣や心血管リスクを評価することが推奨されています。
つまり、ED治療薬を使うだけでなく、高血圧そのものを適切に治療することも勃起機能を考えるうえで重要です。
血圧の薬がEDの原因になることもある?
一部の降圧薬では、性機能への影響がみられることがあります。
ただし、高血圧そのものでも血管機能が低下してEDにつながるため、「降圧薬を飲み始めて勃起しにくくなった=薬が原因」とは限りません。
もし降圧薬を開始・変更した後から明らかに勃起機能が変化した場合は、処方した医師へ相談してください。
EDが気になるからといって降圧薬を自己判断で中止するのは危険です。血圧が上昇すれば、心筋梗塞や脳卒中などのリスクにつながります。
ED治療薬を使う前に確認したいこと
高血圧がある人は、ED治療薬を使用する前に次の点を確認しておきましょう。
- 最近の血圧が安定しているか
- 硝酸薬・ニコランジルなどを使用していないか
- リオシグアトを使用していないか
- α遮断薬を使用していないか
- 狭心症や心不全、不整脈などがないか
- 最近、心筋梗塞や脳卒中を起こしていないか
- 性行為を控えるよう医師から指示されていないか

服用後に強いめまいや胸痛が出たら?
ED治療薬の服用後に強いめまい、ふらつき、失神しそうな感覚などがある場合は、血圧が下がっている可能性があります。
また、性行為中や服用後に胸の痛みが出た場合は、速やかに医療機関へ相談してください。
このとき重要なのは、ED治療薬を服用したことを救急隊や医療従事者へ必ず伝えることです。ED治療薬服用後に硝酸薬が投与されると、急激な血圧低下を起こす危険があるためです。PMDAも硝酸薬との併用について強く注意喚起しています。
まとめ
高血圧があっても、血圧が適切にコントロールされ、心血管の状態に問題がなければ、ED治療薬を使用できる場合があります。
また、一般的な降圧薬を服用していることだけで、ED治療薬が必ず使用できなくなるわけではありません。
ただし、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコランジルなどの硝酸薬・NO供与薬や、リオシグアトとの併用はできません。
α遮断薬や複数の降圧薬を使用している場合にも、血圧低下へ注意が必要です。
「高血圧の薬を飲んでいるから」と自己判断でED治療薬を諦めたり、逆に併用可能だと思って使用したりせず、現在飲んでいる薬の名前を確認したうえで医師・薬剤師へ相談しましょう。

