男性にはED薬があるけど女性にも薬はあるの?女性の性機能に使われる治療薬を解説
監修:医師・薬剤師監修
男性にはシルデナフィルやタダラフィルなどのED治療薬がありますが、「女性にも性欲や性的な反応を改善する薬はあるの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
結論からいうと、女性にも性機能の悩みに使われる薬はあります。ただし、男性のED治療薬のように「性器への血流を増やせば解決する」という単純なものではありません。
女性の性機能の悩みには、性欲が湧かない、性的な刺激を受けても興奮しにくい、腟が濡れにくい、挿入時に痛い、オーガズムを感じにくいなど、さまざまな種類があります。そのため、症状の原因に合わせて薬や治療方法を選ぶ必要があります。
女性の性機能の悩みにはどのようなものがある?
女性の性機能に関する悩みは、一般的に次のように分けられます。
- 性欲が以前より低下した
- 性的な刺激を受けても気持ちが高まりにくい
- 腟が濡れにくく、摩擦や痛みを感じる
- 挿入時や性交後に痛みがある
- オーガズムに達しにくい
- 性行為への不安や恐怖がある
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)では、「女性性機能障害」は性行為に関する問題を幅広く含む言葉であり、性欲、興奮、オーガズム、痛みなどを分けて評価することが重要とされています。
女性の場合、性欲低下と腟の乾燥は別の問題です。性欲はあるのに乾燥や痛みで性行為が難しい人もいれば、身体には問題がなくても性欲そのものが低下している人もいます。
男性のED薬と女性向けの薬は何が違う?
男性のED治療薬は、陰茎の血管を広げる働きを助け、性的刺激を受けたときに勃起しやすくする薬です。性欲を高める催淫剤ではありません。
一方、女性の性的な悩みは、女性ホルモン、脳内の神経伝達物質、腟の乾燥、痛み、ストレス、パートナーとの関係、服用薬などが複雑に関係します。
| 比較項目 | 男性のED治療薬 | 女性の性機能に使われる薬 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 勃起を起こしやすくする | 性欲低下、乾燥、性交痛など症状別に治療する |
| 主な作用 | 陰茎への血流を増やす | 脳内物質や女性ホルモン、腟粘膜へ働きかける |
| 服用方法 | 性行為の前に飲む薬が中心 | 毎日飲む薬、性行為前の注射、腟剤などがある |
| 性欲への作用 | 基本的に性欲は高めない | 性欲低下を対象とする薬もある |
| 日本での使用 | 複数の承認薬がある | 国内では症状に応じたホルモン療法などが中心 |
女性の性欲低下に使われる薬
フリバンセリン
フリバンセリンは、性欲低下によって本人が強く悩んでいる女性に使われる内服薬です。商品名はAddyi(アディ)として知られています。
脳内のセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの働きを調整し、性的な欲求を改善する目的で使用されます。
FDA(アメリカ食品医薬品局)では、医学的な病気、精神疾患、薬の副作用、パートナーとの関係などでは説明できない、後から生じた全般的な性欲低下に対する処方薬として承認されています。現在の米国添付文書では、65歳未満の女性が対象です。
フリバンセリンは、性行為の直前に飲む薬ではありません。通常は毎晩就寝時に服用し、一定期間継続して効果を確認します。
フリバンセリンは「女性用バイアグラ」と呼ばれることがありますが、男性のED薬とは作用も飲み方も異なります。
主な副作用は次のとおりです。
- めまい
- 眠気
- 疲労感
- 吐き気
- 口の渇き
- 不眠
- 血圧低下
- 失神
アルコールを服用時刻の近くに飲むと、血圧低下や失神の危険が高まります。また、眠気を起こす薬や、一部の抗真菌薬、抗菌薬などとの併用にも注意が必要です。服用後は少なくとも6時間、運転や危険な機械の操作を避ける必要があります。
ブレメラノチド
ブレメラノチドは、商品名Vyleesi(バイリシ)として米国で承認されている注射薬です。
性行為の予定がある約45分前に、腹部または太ももの皮下へ自己注射します。脳内のメラノコルチン受容体へ作用し、性的欲求を高める方向へ働くと考えられています。
FDA(アメリカ食品医薬品局)では、閉経前で、以前は性欲に問題がなかったものの、後から全般的な性欲低下が生じ、本人が強く悩んでいる女性を対象としています。病気、精神的な問題、薬の影響、パートナーとの問題が原因の場合には使用しません。
主な副作用は次のとおりです。
- 吐き気
- 顔のほてり
- 頭痛
- 注射部位の痛み
- 一時的な血圧上昇
- 皮膚や歯ぐきの色素沈着
コントロールされていない高血圧や心血管疾患がある人は、ブレメラノチドを使用できません。また、24時間以内に複数回使用したり、月に8回を超えて使用したりしないよう定められています。
更年期の腟の乾燥や性交痛に使われる薬
腟用エストロゲン
閉経前後にはエストロゲンが減少し、腟の粘膜が薄く乾燥しやすくなります。その結果、性欲はあっても、挿入時にヒリヒリする、裂けるように痛む、性交後に出血するといった症状が起こることがあります。
このような状態は、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)と呼ばれます。
腟用エストロゲンには、腟錠、クリーム、腟リングなどがあり、腟へ直接少量のエストロゲンを補います。腟粘膜の厚みや潤いを改善し、乾燥、刺激感、性交痛を軽減する目的で使用されます。
NHS(英国国民保健サービス)やACOG(アメリカ産科婦人科学会)でも、閉経に伴う腟の乾燥や刺激、性交痛に対し、低用量の腟用エストロゲンが使われるとされています。
主な副作用は、腟の違和感、腹痛、頭痛、不正出血などです。
閉経後の不正出血や性交後の出血がある場合は、自己判断でホルモン剤を使う前に婦人科を受診してください。
全身に作用するHRT
ほてり、発汗、不眠、気分の落ち込み、腟の乾燥など、更年期症状が複数ある場合は、ホルモン補充療法(HRT)が選択されることがあります。
HRTによって腟の乾燥や痛みが改善すると、性行為への不安が減り、結果的に性欲や満足感が改善する場合があります。
ただし、HRTは性欲増進だけを目的とした薬ではありません。また、乳がん、子宮内膜がん、血栓症、原因不明の性器出血、重い肝機能障害などがある人は使用できない場合があります。
NHS(英国国民保健サービス)では、HRTはほてり、気分の変化、腟の乾燥などの更年期症状を改善する治療とされています。
プラステロンとオスペミフェン
海外では、閉経後の腟萎縮や性交痛に対して、プラステロンの腟剤やオスペミフェンという内服薬が使用されることがあります。
プラステロンはDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)を腟内へ使用し、腟粘膜の状態を改善する薬です。
オスペミフェンはSERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)に分類され、腟組織ではエストロゲンに近い働きをして、性交痛や乾燥を改善します。ACOG(アメリカ産科婦人科学会)でも、閉経後の腟萎縮に対する治療選択肢として紹介されています。
ただし、血栓症の既往、乳がんや子宮の病気などがある場合は、使用可否を慎重に判断する必要があります。
女性がシルデナフィルを飲めば効果はある?
シルデナフィルは、男性のED治療薬として陰茎への血流を増やす薬です。女性が使用した場合も、外陰部やクリトリス周辺の血流が増える可能性はあります。
しかし、女性の性欲低下や性的満足度に対する効果は一定しておらず、女性の性機能障害に対する一般的な治療薬として確立しているわけではありません。
女性の性機能は、血流だけでなく、ホルモン、脳の反応、痛み、感情、パートナーとの関係などの影響を強く受けます。そのため、男性のED薬をそのまま女性へ使っても、期待した効果が得られないことがあります。
頭痛、顔のほてり、鼻づまり、動悸、血圧低下などの副作用が起こる可能性もあります。硝酸薬を使用している人は、性別にかかわらず併用できません。
テストステロンは女性の性欲低下に使われる?
テストステロンは男性ホルモンとして知られていますが、女性の体内でも少量作られています。性欲や活力に関係するため、閉経後の強い性欲低下に対して、専門医の判断で経皮テストステロンが検討されることがあります。
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)では、閉経後の性的関心・興奮障害に対し、リスクや長期的な安全性が十分に分かっていないことを説明したうえで、短期間の経皮テストステロンが選択肢になる場合があるとしています。
主な副作用は次のとおりです。
- ニキビ
- 皮脂の増加
- 体毛の増加
- 頭髪の減少
- 声が低くなる
- 肝機能や脂質への影響
男性用の高濃度テストステロン製剤を、女性が自己判断で少量ずつ使用することは避けてください。必要量を超えると、声の変化など元に戻りにくい副作用が起こる可能性があります。
女性の性欲が落ちる主な原因
薬を選ぶ前に、性欲低下の原因を確認する必要があります。
- 妊娠、出産、授乳
- 更年期による女性ホルモンの低下
- 腟の乾燥や性交痛
- 睡眠不足や慢性疲労
- 仕事、育児、介護によるストレス
- うつ病や不安障害
- 甲状腺機能の異常
- 糖尿病などの持病
- パートナーとの関係
- 過去の痛みや性行為への恐怖
- 抗うつ薬や一部の低用量ピルなどの影響
NHS(英国国民保健サービス)では、性欲低下の原因として、ストレス、うつ、関係の問題、更年期、薬、避妊法、持病などが挙げられています。
特にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬では、性欲低下、濡れにくさ、オーガズムに達しにくいといった副作用が起こる場合があります。ただし、自己判断で急に中止してはいけません。
症状別に見る主な治療方法
| 主な悩み | 考えられる治療 | 確認したい原因 |
|---|---|---|
| 性欲が湧かない | フリバンセリン、ブレメラノチド、心理療法など | ストレス、うつ、薬、関係性、ホルモン |
| 腟が濡れにくい | 潤滑剤、保湿剤、腟用エストロゲン | 更年期、授乳、薬の影響 |
| 挿入時に痛い | 腟用エストロゲン、潤滑剤、原因疾患の治療 | 腟萎縮、感染症、皮膚疾患、子宮内膜症 |
| 興奮しにくい | 原因薬の見直し、カウンセリング、ホルモン治療 | 心理面、血流、ホルモン、疲労 |
| オーガズムに達しにくい | 原因薬の変更、心理療法、刺激方法の見直し | 抗うつ薬、神経疾患、ストレス |
薬以外の治療も重要
女性の性機能の悩みでは、薬だけで解決しないことがあります。
性交痛がある場合は、無理に挿入を続けると「また痛くなるかもしれない」という不安が強くなり、骨盤周辺の筋肉が緊張して、さらに痛みが強くなることがあります。
治療では次のような方法が組み合わされます。
- 水性またはシリコン系の潤滑剤
- 腟用保湿剤
- 骨盤底筋のリハビリ
- 性に関するカウンセリング
- パートナーとのコミュニケーション
- 睡眠やストレスの改善
- 痛みの原因となる病気の治療
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)では、腟の乾燥や性交痛に対し、潤滑剤、保湿剤、腟用エストロゲンなどを症状に応じて使う方法が紹介されています。
個人輸入で女性向けの性機能改善薬を購入する場合
個人輸入では、日本国内では入手しにくいフリバンセリン、ブレメラノチド、腟用ホルモン剤などを自宅から注文できる場合があります。剤形や含有量、価格を比較できる点はメリットです。
ただし、女性の性機能改善をうたう商品には、表示されていない医薬品成分が混入している例があります。
FDA(アメリカ食品医薬品局)は、女性向け性機能サプリメントとして販売された商品から、表示されていないシルデナフィル、タダラフィル、フリバンセリンが検出された事例を報告しています。
購入前には次の項目を確認してください。
- 有効成分
- 1錠または1回当たりの含有量
- 内服薬、注射薬、腟剤のどれか
- 服用または使用するタイミング
- 対象となる症状
- 閉経前・閉経後のどちらが対象か
- 妊娠中や授乳中の使用可否
- アルコールや併用薬との相互作用
- 低血圧、高血圧、心臓病、肝臓病での使用可否
- 製造元と成分表示
「女性用バイアグラ」「飲むだけで必ず感じる」といった表現だけで商品を選ばないでください。フリバンセリンとブレメラノチドは使用方法が異なり、シルデナフィルは女性の性欲低下に対する標準薬ではありません。
また、複数の性機能改善薬を重ねたり、効果が弱いからと自己判断で増量したりしないでください。
医療機関へ相談する目安
次のような場合は、婦人科、女性外来、更年期外来などへ相談してください。
- 性欲低下が6か月以上続いている
- 性欲低下によって本人が強く悩んでいる
- 性交時の痛みや出血がある
- 腟の乾燥やかゆみが続いている
- おりものの色や臭いが変わった
- 閉経後に出血した
- 抗うつ薬や低用量ピルを始めてから症状が出た
- 更年期症状も強い
- 市販の潤滑剤を使っても痛みが改善しない
- 海外の性機能改善薬を検討している
性交痛や出血には、感染症、子宮内膜症、皮膚疾患、子宮や卵巣の病気が隠れている場合があります。
痛みを我慢して性行為を続けたり、原因を確認せず性欲改善薬だけを使用したりしないことが大切です。
まとめ
女性にも、性欲低下や腟の乾燥、性交痛などに使われる薬があります。
性欲低下に対しては、海外でフリバンセリンやブレメラノチドが承認されています。更年期による腟の乾燥や性交痛には、腟用エストロゲン、HRT、プラステロン、オスペミフェンなどが選択肢になります。
女性向けの薬は、男性のED治療薬を女性用にしたものではありません。性欲、興奮、乾燥、痛みのどこに問題があるかによって、使用する薬が異なります。
性欲低下の原因には、更年期、ストレス、睡眠不足、うつ、服用薬、性交痛、パートナーとの関係などもあります。薬だけでなく、潤滑剤、保湿剤、カウンセリング、生活習慣の見直しを組み合わせることも重要です。
個人輸入を利用する場合は、有効成分、含有量、対象年齢、閉経の有無、併用薬、副作用を確認し、表示の不明確な性機能サプリメントは避けましょう。

