ショートスリーパーって鍛えればなれるの?それとも特異体質?短時間睡眠との違いを解説
監修:医師・薬剤師
「1日4~5時間の睡眠で平気な人がいるなら、自分も鍛えればショートスリーパーになれるのでは?」と考えたことはありませんか。
仕事や趣味に使える時間を増やせるため、短時間睡眠に憧れる人もいるでしょう。
結論からいうと、本来の意味でのショートスリーパーは、睡眠時間を削るトレーニングによって誰でもなれるものとは考えられていません。医学的にいう「natural short sleeper(自然な短時間睡眠者)」は、年齢から期待される睡眠時間よりかなり短くても、日中に異常な眠気がなく、普段どおり機能できる人を指します。MedlinePlus(米国国立医学図書館の健康情報)でも、このように定義されています。
さらに、自然なショートスリーパーの一部では、DEC2やADRB1などの遺伝子変異が確認されており、睡眠時間が短い体質に遺伝的要因が関係していることが分かってきています。
一方、睡眠時間を無理に4~5時間へ減らし、「慣れた気がする」状態は、本当のショートスリーパーとは別です。
眠気を自覚しなくなったとしても、身体や脳が睡眠不足の影響を受けていないとは限りません。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では、成人には原則として1日7時間以上の睡眠が推奨されています。
この記事では、ショートスリーパーは鍛えてなれるのか、本物のショートスリーパーにはどのような特徴があるのか、単なる睡眠不足との違いを分かりやすく解説します。
そもそもショートスリーパーとは?
一般には睡眠時間が短い人を「ショートスリーパー」と呼ぶことがあります。
しかし医学的に重要なのは、単に睡眠時間が短いことではありません。
自然なショートスリーパーは、通常より少ない睡眠時間でも、
- 日中に強い眠気がない
- 集中力や判断力に問題がない
- 休日に長時間寝だめしなくても平気
- 目覚まし時計なしでも自然に短時間で目覚める
- 短い睡眠時間が長期間続いている
といった特徴を持つ人です。
MedlinePlus(米国国立医学図書館の健康情報)では、自然なショートスリーパーを「同年代で予想される睡眠時間よりかなり短く眠るにもかかわらず、異常な眠気がない人」としています。
「毎日5時間しか眠れていない人」と「5時間で十分な人」は、同じではありません。
ショートスリーパーは鍛えればなれる?
現在のところ、睡眠時間を少しずつ削ることで、誰でも自然なショートスリーパーになれることを示す医学的根拠はありません。
例えば、
- 毎週30分ずつ睡眠を削る
- 昼寝を組み合わせる
- 眠気を我慢して体を慣らす
- 休日も短時間睡眠を続ける
といった方法で、本来必要な睡眠時間そのものを恒久的に短くできるとは確認されていません。
むしろ睡眠不足の状態を続けているだけになる可能性があります。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では、成人で7時間未満の睡眠を「short sleep duration(短い睡眠時間)」として扱っており、十分な睡眠を取ることは体重管理、心血管の健康、代謝、注意力、記憶などにも重要としています。
「短時間睡眠に慣れた」と「必要な睡眠量そのものが減った」は区別する必要があります。
本物のショートスリーパーは特異体質?
一部では、その可能性が高いと考えられています。
自然なショートスリーパーの研究では、睡眠時間に関連する複数の遺伝子変異が確認されています。
DEC2遺伝子
自然な短時間睡眠を示す家系で、DEC2という遺伝子の変異が発見されています。
この遺伝子は睡眠・覚醒に関係する仕組みに関与すると考えられており、特定の変異を持つ人では通常より短い睡眠時間でも健康的に生活できる可能性が研究されています。自然なショートスリーパー遺伝子をまとめたレビューでも、DEC2は代表的な関連遺伝子として挙げられています。
ADRB1遺伝子
2019年には、ADRB1という遺伝子のまれな変異を持つ自然なショートスリーパーが報告されました。
NIH(アメリカ国立衛生研究所)では、この変異を持つ人は自然に1晩6.5時間未満しか眠らなくても、明らかな悪影響なく生活していたと紹介しています。
研究では、この変異を持つ人は変異を持たない家族より平均で約2時間短く眠っていたことも報告されています。
つまり、本来のショートスリーパーは「睡眠を我慢できる人」ではなく、睡眠・覚醒を調節する仕組み自体に違いがある可能性があります。
「5時間睡眠でも平気」はショートスリーパー?
必ずしもそうではありません。
短い睡眠時間が続いていても、次のような状態がある場合は単なる睡眠不足の可能性があります。
- 朝なかなか起きられない
- 目覚ましを何度も止める
- 午前中から眠い
- 昼食後に強烈な眠気がある
- 休日に2~3時間以上長く寝る
- 電車やソファですぐ寝てしまう
- 集中力が以前より落ちた
- カフェインがないと仕事にならない
自然なショートスリーパーは、短い睡眠しか「取れない」のではなく、短い睡眠でも自然に目覚め、日中の眠気をほとんど感じないことが特徴です。
休日に長く寝るならショートスリーパーではない?
一つの判断材料になります。
平日は5時間睡眠なのに、土日は9~10時間眠ってしまう場合、平日に不足した睡眠を休日に補っている可能性があります。
本当に必要な睡眠時間が5時間程度なのであれば、毎週末に何時間も長く眠る必要は通常ありません。
「休日ならいくらでも眠れる」という人は、自分をショートスリーパーだと思い込む前に、慢性的な睡眠不足を疑った方がよいでしょう。
睡眠不足は「慣れる」ことがある?
睡眠不足を長く続けていると、「最初ほど眠くなくなった」と感じることはあります。
しかし、自覚する眠気が弱くなったからといって、睡眠不足の影響がなくなったとは限りません。
慢性的な睡眠不足は、注意力、判断力、気分、代謝、心血管系などさまざまな健康状態と関連します。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では、不十分な睡眠が肥満、糖尿病、高血圧、心疾患、脳卒中、不安やうつ、けがなどと関連するとしています。
また、十分な睡眠は記憶力や注意力、日中のパフォーマンスを維持するうえでも重要です。
「眠くないから足りている」とは限らない点が、睡眠の難しいところです。
成人は何時間眠るのが理想?
睡眠時間には個人差があります。
ただし、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では、成人には少なくとも1日7時間の睡眠を推奨しています。
一般的には7~9時間程度が一つの目安になりますが、全員が必ず8時間必要というわけではありません。
重要なのは、睡眠時間だけでなく、
- 朝自然に起きられるか
- 日中に強い眠気がないか
- 仕事や勉強へ集中できるか
- 休日に大量の寝だめが必要ないか
などを総合的に見ることです。
6時間睡眠なら問題ない?
6時間で問題なく生活できる人もいます。
ただし、成人全体では7時間未満は短い睡眠時間と扱われています。
毎日6時間程度しか眠っておらず、
- 日中に眠い
- 休日に寝だめする
- 朝がつらい
- 集中力が低下している
のであれば、自分にとって6時間では足りていない可能性があります。
逆に、自然に6時間程度で目覚め、休日も同じ睡眠時間で、日中の眠気もないのであれば、必要睡眠時間が比較的短い体質である可能性はあります。
短時間睡眠を目指すより「睡眠の質」を整える
睡眠時間を無理に減らすより、まず睡眠の質を整える方が現実的です。
例えば、
- 起床時刻を大きく変えない
- 朝に日光を浴びる
- 夜遅いカフェインを避ける
- 飲酒による寝落ちを習慣にしない
- 寝室を暗く静かにする
- 寝る直前までスマートフォンを見続けない
などを意識します。
睡眠時間を削ることではなく、必要な時間をきちんと眠って、翌日に疲労を残さないことを目標にしましょう。
睡眠時間は長いのに昼間眠い場合は?
7~8時間眠っているのに日中に強い眠気がある場合は、単純な睡眠時間だけの問題ではない可能性があります。
例えば睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり浅くなったりするため、十分な時間寝ていても睡眠の質が低下します。MedlinePlus(米国国立医学図書館の健康情報)でも、睡眠時無呼吸では睡眠中に呼吸が何度も止まると説明されています。
また、ナルコレプシーなどの過眠症では、十分な睡眠時間を確保していても強い日中の眠気が起こります。
「自分はロングスリーパーだから」と決めつけず、十分寝ても眠気が強い場合は睡眠外来などへ相談しましょう。
ショートスリーパーかどうか簡単に確認するポイント
次の項目を確認してみましょう。
- 昔から睡眠時間が短い
- 目覚ましなしでも自然に起きる
- 4~6時間程度でも日中眠くならない
- 休日も睡眠時間がほとんど増えない
- 昼寝がなくても問題ない
- カフェインに頼らなくても活動できる
- 集中力や判断力に問題を感じない
多く当てはまれば、必要な睡眠時間が比較的短い可能性があります。
ただし、このチェックだけで自然なショートスリーパーと診断できるわけではありません。
「もっと時間が欲しい」から睡眠を削るのはおすすめしない
ショートスリーパーになりたい理由として多いのが、自由時間を増やしたいというものです。
確かに8時間睡眠を5時間にできれば、毎日3時間使える時間が増えます。
しかし、その3時間と引き換えに集中力や判断力が落ちれば、仕事や勉強の効率が低下する可能性があります。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)でも、十分な睡眠は注意力や記憶を改善し、日常活動のパフォーマンスを支えるとしています。
睡眠時間を削って活動時間を増やすより、十分眠って起きている時間の生産性を上げる方が合理的な場合があります。
よくある質問
毎日4時間睡眠を続ければ慣れますか?
眠気の感じ方に慣れる可能性はありますが、必要睡眠時間そのものが4時間へ変わることを示す根拠はありません。成人では少なくとも7時間程度の睡眠が推奨されています。
本物のショートスリーパーは何時間寝ますか?
明確に「○時間以下」という統一基準があるわけではありませんが、研究では6時間前後あるいは6.5時間未満でも日中の機能に問題がない人が対象になることがあります。NIH(アメリカ国立衛生研究所)が紹介した遺伝子研究でも、6.5時間未満の睡眠で問題なく生活する家系が調べられています。
5時間睡眠で眠くなければ大丈夫ですか?
体質的に睡眠時間が短い可能性はありますが、自覚症状だけでは判断できません。休日の寝だめ、集中力、疲労感なども確認しましょう。
ショートスリーパーは健康に悪くないの?
自然なショートスリーパーは、必要な睡眠量自体が少ない特殊な体質と考えられています。一方、通常の睡眠量が必要な人が睡眠を削ることは別で、不十分な睡眠は肥満、糖尿病、心血管疾患、精神的な不調などと関連します。
遺伝子検査をすればショートスリーパーか分かりますか?
DEC2やADRB1など関連する遺伝子は報告されていますが、自然なショートスリーパーには複数の遺伝的要因が関係すると考えられています。現時点で一般的な遺伝子検査だけから、必要睡眠時間を正確に決められるわけではありません。
まとめ
本来のショートスリーパーは、睡眠を削る訓練によって誰でもなれるものとは考えられていません。
自然なショートスリーパーは、通常よりかなり短い睡眠時間でも日中の異常な眠気がなく、問題なく生活できる人を指します。
さらに、DEC2やADRB1などの遺伝子変異が確認された家系もあり、必要な睡眠時間が少ない特異な体質には遺伝的要因が関係している可能性があります。
一方、毎日4~5時間しか眠っていない人でも、朝起きるのがつらい、昼間眠い、休日に寝だめする、カフェインがないと活動できないのであれば、本当のショートスリーパーというより睡眠不足の可能性があります。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では、成人には少なくとも1日7時間の睡眠が推奨されており、不十分な睡眠は肥満、糖尿病、心疾患、精神的な不調などさまざまな健康問題と関連しています。
ショートスリーパーを目指して睡眠時間を削るより、「自分に必要な睡眠時間を確保し、その睡眠の質を高める」ことを優先しましょう。

