禁酒した方がいい人の特徴|お酒を控えるだけでは不十分なケース
医師・薬剤師監修
「健康のためにお酒を減らした方がよい」と分かっていても、禁酒までは必要ないと考える人は少なくありません。
しかし、飲酒量を減らすだけでなく、アルコールを完全に避けた方が安全な人もいます。妊娠中、アルコール依存症が疑われる人、飲酒によって病気が悪化している人、アルコールと相互作用する薬を使用している人などです。
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」でも、飲酒による影響は、飲酒量だけでなく、年齢、性別、体質、持病、服薬状況、飲酒する場面によって異なるとされています。飲酒量が少なければ誰にとっても安全というわけではありません。
WHO(世界保健機関)も、アルコール摂取には完全にリスクのない量はなく、少量の飲酒でも一定の健康リスクを伴うとしています。
この記事では、禁酒した方がよい人の特徴、飲酒を続けることで起こり得る問題、自己判断で急にやめる際の注意点について解説します。
禁酒と節酒の違い
禁酒とは、アルコールを含む飲料を飲まない状態を指します。一方、節酒は、飲酒量や飲酒回数を減らすことです。
健康な成人が飲酒習慣を見直す場合は、まず量を減らす方法が選択されることがあります。しかし、次のような人では、少量に抑えるより禁酒が適している場合があります。
- 飲酒量を自分で調整できない
- 少量でも持病や症状が悪化する
- アルコールと併用できない薬を使用している
- 妊娠中または妊娠の可能性がある
- 飲酒によって事故や対人トラブルが起きている
「適量であれば大丈夫」という考え方が当てはまらない人もいるため、自分の健康状態に応じて判断することが重要です。
禁酒した方がいい人の特徴
飲酒量をコントロールできない人
最初は1杯だけのつもりだったのに何杯も飲む、休肝日を作れない、家族から止められても飲むといった状態は、アルコール依存症のサインである可能性があります。
アルコールには依存性があり、習慣的に飲酒すると、同じ量では酔いにくくなる「耐性」が形成されます。その結果、以前と同じ満足感を得るために飲酒量が増え、精神依存や身体依存へ進むことがあります。
次のような状態がある場合は、節酒だけでコントロールすることが難しい可能性があります。
- 朝や昼から飲むことがある
- 隠れて飲酒している
- 飲酒による失敗を繰り返している
- 酒が切れると手が震える、汗が出る
- 仕事や家庭より飲酒を優先する
- 飲酒量について嘘をつく
依存が疑われる人は、意志だけで減らそうとせず、精神科、心療内科、依存症専門医療機関などへ相談してください。
妊娠中・妊娠を希望している人
妊娠中の飲酒は、胎児の発育や脳へ影響し、胎児性アルコール・スペクトラム障害につながる可能性があります。
安全と確認された飲酒量や妊娠時期はなく、少量でも影響する可能性があるため、妊娠中は完全な禁酒が必要です。厚生労働省の健康情報でも、妊娠中は完全に飲酒をやめるよう案内されています。
妊娠に気づく前に飲酒していた場合は、自分を責め続けるのではなく、その時点から禁酒し、産婦人科へ相談しましょう。
20歳未満の人
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。成長段階にある脳や肝臓への影響に加え、成人より短期間で依存が形成される可能性があります。
保護者や周囲の大人が「少量なら経験としてよい」と飲ませることも避けなければなりません。
車の運転や危険な作業をする人
飲酒後は、判断力、注意力、反応速度、平衡感覚が低下します。本人が酔っていないと感じていても、運転能力が低下している可能性があります。
自動車や自転車を運転する人、高所作業、機械操作、水中作業などを行う人は、その前に飲酒してはいけません。
また、深夜まで飲酒した場合は、翌朝にもアルコールが残ることがあります。睡眠を取った、入浴した、コーヒーを飲んだという理由で、アルコールの分解が急に早まるわけではありません。
アルコールと相互作用する薬を使用している人
アルコールは薬の効果や副作用を強めることがあります。特に注意が必要なのは、次のような薬です。
- 睡眠薬
- 抗不安薬
- 抗うつ薬
- 抗精神病薬
- てんかん治療薬
- オピオイド鎮痛薬
- 一部の糖尿病治療薬
- 断酒薬・抗酒薬
睡眠薬や抗不安薬と併用すると、強い眠気、ふらつき、記憶障害、呼吸抑制などが起こる可能性があります。
また、ジスルフィラムやシアナミドなどの抗酒薬では、少量のアルコールでも顔面紅潮、動悸、吐き気、血圧低下などの強い反応が起こることがあります。
薬を飲む日だけ酒を減らすのではなく、処方医や薬剤師から飲酒を止められている場合は禁酒してください。
肝臓の数値が悪い人
アルコールは主に肝臓で代謝されます。飲酒を続けると、脂肪肝、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変などへ進行する可能性があります。
健康診断でAST、ALT、γ-GTPなどの異常を指摘された人は、単に酒量を減らすだけでなく、一定期間の禁酒が必要になることがあります。
肝臓は障害が進んでも自覚症状が出にくいため、「体調が悪くないから大丈夫」とは判断できません。
膵炎になったことがある人
アルコールは急性膵炎や慢性膵炎の原因の一つです。膵炎の既往がある人が飲酒を続けると、再発や慢性化につながる可能性があります。
膵炎では、みぞおちから背中へ広がる強い痛み、吐き気、嘔吐などが現れます。医師から禁酒を指示された場合は、少量であっても飲酒を再開しないでください。
高血圧・不整脈・心臓病がある人
飲酒は一時的に血管を広げるため、血圧が下がったように感じることがあります。しかし、習慣的な飲酒は血圧上昇と関連し、多量飲酒では不整脈や心不全のリスクも高まります。
飲酒後に動悸が起こる、脈が乱れる、胸苦しさを感じる人は、飲酒を続けず循環器内科へ相談してください。
睡眠時無呼吸症候群や強いいびきがある人
アルコールには、のど周囲の筋肉を緩める作用があります。そのため、寝る前に飲酒すると上気道が狭くなり、いびきや無呼吸が悪化する可能性があります。
夜中に呼吸が止まる、朝に頭痛がある、日中の眠気が強い人は、寝酒を避け、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けましょう。
痛風・高尿酸血症がある人
アルコールは尿酸の産生を増やし、腎臓からの尿酸排泄を妨げることがあります。特にビールだけが問題なのではなく、日本酒、焼酎、ワインなどもアルコール自体が尿酸値へ影響します。
飲酒をすると痛風発作を繰り返す人、尿酸降下薬を使用しても尿酸値が下がりにくい人は、禁酒を検討する必要があります。
飲酒によって眠りや気分が悪化する人
寝酒をすると寝つきがよくなったように感じますが、睡眠の後半が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増えることがあります。
また、アルコールは一時的に不安を和らげても、翌日に気分の落ち込みや不安を強める場合があります。うつ病、不安症、不眠症の治療中は、禁酒が必要か主治医へ確認してください。
飲酒によるトラブルを繰り返している人
健康診断の数値が正常でも、飲酒によって次のような問題が起きているなら、禁酒を検討すべき状態です。
- 暴言や暴力がある
- 飲酒後の記憶がない
- 転倒やけがを繰り返す
- 遅刻や欠勤が増えた
- 家族関係が悪化している
- 飲酒に多額のお金を使う
アルコールによる問題は、肝臓の数値だけでは判断できません。家庭、仕事、安全への影響も重要な判断材料です。
少量なら健康によいとは限らない
以前は、少量の飲酒が心血管疾患の予防に役立つ可能性があるといわれることがありました。
しかし現在は、飲酒しない人が健康のために飲酒を始めることは推奨されません。アルコールは、口腔がん、咽頭がん、食道がん、肝がん、乳がん、大腸がんなどのリスクと関連します。
WHO(世界保健機関)は、がんの観点から安全といえる飲酒量は設定できず、飲酒量が増えるほどリスクが高まるとしています。
飲酒習慣がない人は、健康効果を期待して酒を飲み始める必要はありません。
急に禁酒すると危険な人もいる
毎日大量に飲んでいる人が急に禁酒すると、アルコール離脱症状が起こる場合があります。
主な離脱症状には、手の震え、発汗、不眠、吐き気、不安、動悸などがあります。重症化すると、幻覚、けいれん、意識の混乱などが現れることがあります。
朝から飲酒している人、酒が切れると震える人、過去に禁酒でけいれんを起こした人は、一人で急に禁酒せず医療機関へ相談してください。
必要に応じて、入院や薬を使いながら安全に離脱症状を管理します。
禁酒を始める方法
依存症が疑われない場合は、次のような準備が役立ちます。
- 家にある酒を処分する
- 家族へ禁酒を宣言する
- 飲酒する店や集まりを一時的に避ける
- 炭酸水やお茶など代わりの飲み物を用意する
- 飲みたくなる時間帯と状況を記録する
- 禁酒する理由を見える場所に書く
飲酒欲求が強い場合や、何度も禁酒に失敗している場合は、医療機関、保健所、精神保健福祉センター、自助グループなどの支援を利用しましょう。
よくある質問
毎日飲んでいても少量なら禁酒しなくてよいですか?
量だけでは判断できません。薬との相互作用、持病、妊娠、依存の有無によっては少量でも禁酒が必要です。
休肝日を作れば肝臓は大丈夫ですか?
休肝日は飲酒量を減らす方法の一つですが、残りの日に大量飲酒すれば十分な対策にはなりません。肝障害がある人は禁酒を指示されることがあります。
ビールをノンアルコールに変えれば禁酒になりますか?
アルコール分0.00%の商品であればアルコール摂取は避けられます。ただし、味や習慣によって飲酒欲求が強くなる人は、酒を連想しにくい飲み物が適しています。
禁酒すると眠れなくなりました
飲酒を睡眠のために使っていた人や依存がある人では、一時的に不眠が起こることがあります。大量飲酒をしていた人は離脱症状の可能性もあるため、医療機関へ相談してください。
自分がアルコール依存症か分かりません
量を減らせない、隠れて飲む、酒が切れると震える、生活上の問題があっても飲み続ける場合は、依存症の可能性があります。専門医療機関で評価を受けましょう。
まとめ
禁酒した方がよいのは、飲酒量をコントロールできない人、妊娠中の人、アルコールと併用できない薬を使用している人、飲酒によって持病や生活上の問題が悪化している人です。
肝臓病、膵炎、痛風、高血圧、不整脈、睡眠時無呼吸症候群、うつ病や不眠症などがある人も、飲酒が症状へ影響する可能性があります。
アルコールは少量であれば誰にでも安全というものではありません。WHO(世界保健機関)も、完全にリスクのない飲酒量はないとしています。
一方、毎日大量に飲酒している人が急にやめると、けいれんや意識障害などの離脱症状が起こる場合があります。
朝から飲む、酒が切れると手が震える、過去に禁酒で体調を崩した経験がある人は、自己判断で急に断酒せず、医療機関へ相談してください。
禁酒が必要か迷う場合は、飲酒量だけでなく、服薬状況、持病、飲酒後の行動、家族や仕事への影響を医師や薬剤師へ伝え、自分に合った方法を確認しましょう。

