GLP-1治療中に筋肉まで落ちるのはなぜ?ダイエット中の筋肉量を守るコツ
医師・薬剤師監修
GLP-1受容体作動薬を使って体重が減ってくると、「脂肪だけでなく筋肉まで落ちている気がする」「体重は減ったのに力が出にくい」と感じる方がいます。
結論からいうと、GLP-1治療による減量では、脂肪量だけでなく除脂肪体重もある程度減少することがあります。
これはGLP-1の薬が直接筋肉を壊すというより、食欲が落ちて総摂取カロリーやたんぱく質量が減ること、短期間で体重が落ちること、運動量まで減ってしまうことなどが関係します。
大切なのは、体重だけを追うのではなく、脂肪を減らしながら筋肉をできるだけ維持することです。
- そもそもGLP-1治療とは?
- なぜダイエットすると筋肉も減るの?
- GLP-1治療では筋肉がどれくらい減る?
- 食欲が落ちすぎると筋肉を失いやすい
- たんぱく質不足が筋肉減少につながる理由
- 筋トレをしないと筋肉は落ちやすい?
- 有酸素運動だけでは足りない?
- どんな筋トレをすればいい?
- たんぱく質はどれくらい取ればいい?
- 1回にまとめて取るより分けたほうがいい?
- プロテインを使ってもいい?
- 食欲がないときは何を食べればいい?
- 急激に体重を落とすほど筋肉も落ちやすい?
- 体重が落ちなくなったらさらに食事を減らす?
- 筋肉が減ると何が問題?
- 高齢者は特に注意したほうがいい?
- 体組成計で筋肉量をチェックすればいい?
- 体重だけでなくウエストや筋力も見る
- GLP-1の量を増やせば早く痩せて効率的?
- 吐き気が強くて食べられない場合は?
- ダイエット中の筋肉を守る3つの基本
- こんな場合は医療機関へ相談を
- まとめ
そもそもGLP-1治療とは?
GLP-1受容体作動薬は、食欲を抑えたり、胃から食べ物が移動する速度をゆるやかにしたりすることで、食事量を減らしやすくする薬です。
糖尿病治療や肥満症治療で使用され、代表的な成分にはセマグルチドなどがあります。
さらに、GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチドも体重管理に用いられます。
薬によって「食べなくても平気」になりやすい一方で、必要なたんぱく質やエネルギーまで不足しないよう注意が必要です。
なぜダイエットすると筋肉も減るの?
体重を減らすには、基本的に摂取エネルギーより消費エネルギーを多くする必要があります。
その状態が続くと、身体は脂肪だけでなく、筋肉に含まれるたんぱく質もエネルギー源として利用することがあります。
特に大幅な食事制限をすると、筋肉を維持するためのエネルギーやたんぱく質が不足しやすくなります。
つまり、GLP-1治療に限らず、減量そのものにはある程度の筋肉減少リスクがあります。
GLP-1治療では筋肉がどれくらい減る?
体組成を調べた臨床試験では、GLP-1関連薬による体重減少の多くは脂肪量の減少ですが、除脂肪体重も一部減少することが報告されています。
ただし、「除脂肪体重」は筋肉だけを意味するわけではありません。体内の水分、臓器、骨なども含まれます。
体組成計で「筋肉量が落ちた」と表示されても、その変化がすべて骨格筋の減少とは限らない点に注意が必要です。
食欲が落ちすぎると筋肉を失いやすい
GLP-1治療中は、少量の食事で満腹になりやすくなります。
その結果、以前の半分程度しか食べられなくなり、総カロリーとともにたんぱく質まで減ってしまう人がいます。
例えば、朝食を抜き、昼も少量、夜も数口だけという生活になると、身体に必要な栄養素を十分に取れない可能性があります。
「食べられないほど薬が効いている=良い状態」とは限りません。
たんぱく質不足が筋肉減少につながる理由
筋肉は常に合成と分解を繰り返しています。
食事から十分なたんぱく質を取ると、筋肉の合成に必要なアミノ酸を補給できます。
一方、食事量が極端に少なく、たんぱく質摂取も不足すると、筋肉を維持しにくくなります。
GLP-1治療中ほど、「食事量」ではなく「食べられる量の中で栄養密度を高める」という考え方が重要です。
筋トレをしないと筋肉は落ちやすい?
筋肉は使わなければ維持しにくい組織です。
体重が減ると身体を支える負荷自体も小さくなるため、以前と同じ生活をしていても筋肉への刺激が減ることがあります。
さらに、食事量が減ってだるさを感じ、運動量まで落ちると筋肉減少につながりやすくなります。
筋肉量を守るには、たんぱく質だけでなく筋肉へ適切な刺激を与えることも必要です。
有酸素運動だけでは足りない?
ウォーキングなどの有酸素運動は、心肺機能や消費エネルギーを増やすうえで有効です。
ただし、筋肉量の維持を目的にするなら、スクワットやレジスタンストレーニングなどの筋力運動も取り入れたほうがよい場合があります。
「痩せるために歩く」だけでなく、「筋肉を残すために負荷をかける」ことも意識しましょう。
どんな筋トレをすればいい?
必ずしも重いバーベルを持つ必要はありません。
初心者であれば、自重スクワット、椅子からの立ち座り、壁を使った腕立て伏せなどから始める方法があります。
太もも、背中、胸など大きな筋肉を中心に、無理のない範囲で継続することが大切です。
GLP-1治療中の筋トレは「激しく追い込むこと」より、継続して筋肉に刺激を与えることを優先しましょう。
たんぱく質はどれくらい取ればいい?
必要なたんぱく質量は、年齢、体重、腎機能、運動量などによって変わります。
筋肉量を維持したい人では、毎食ある程度のたんぱく質を分けて取る方法が考えられます。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などを利用すると取りやすくなります。
ただし、腎臓病などでたんぱく質制限を指示されている人は、自己判断で増やさないでください。
1回にまとめて取るより分けたほうがいい?
食欲が落ちていると、夕食だけで大量のたんぱく質を取るのは難しくなります。
朝・昼・夜に分けて取るほうが、必要量を確保しやすい人もいます。
例えば、朝にヨーグルトや卵、昼に魚や鶏肉、夜に豆腐や肉を取り入れると、一度に無理をせず摂取できます。
少食になっている人ほど、「1日トータル」だけでなく「毎食少しずつたんぱく質を入れる」ことを意識するとよいでしょう。
プロテインを使ってもいい?
食事だけではたんぱく質を十分に取れない場合、プロテインを補助的に利用する方法があります。
ただし、プロテインだけで食事を置き換え続けると、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが不足しやすくなります。
プロテインは「食事の代わり」ではなく、不足分を補う補助食品として考えるのが基本です。
食欲がないときは何を食べればいい?
GLP-1治療中に食欲が落ちている場合は、少量でもたんぱく質と栄養を取りやすい食品を選ぶとよいでしょう。
卵、ヨーグルト、豆腐、魚、鶏肉、チーズなどは比較的少量でもたんぱく質を摂取できます。
脂っこい料理で吐き気が出やすい人では、揚げ物より蒸す・焼く・煮るなどの調理法が食べやすい場合があります。
「食べられないから何も食べない」のではなく、少量でも栄養価の高いものを選ぶことが重要です。
急激に体重を落とすほど筋肉も落ちやすい?
短期間で大幅に体重を落とすと、脂肪だけでなく除脂肪体重も失いやすくなる可能性があります。
食事を極端に減らし、運動もしない状態では、筋肉を維持する条件がそろいません。
GLP-1治療でも「早く何kg落とすか」だけを目標にしないことが大切です。
体重が落ちなくなったらさらに食事を減らす?
減量が進むと、しばらく体重が変わりにくくなる時期があります。
このとき、さらに極端な食事制限をすると栄養不足や筋肉減少につながる可能性があります。
停滞期だからと食事を極端に削るのではなく、運動量、食事内容、睡眠などを含めて見直しましょう。
筋肉が減ると何が問題?
筋肉は身体を動かすだけでなく、姿勢の維持や日常動作にも重要です。
筋肉量が大きく減ると、疲れやすくなる、階段がつらい、重い物を持ちにくいといった変化が出ることがあります。
特に高齢者では、筋肉減少が進むとサルコペニアや転倒リスクにつながる可能性があります。
体重の数字が減っていても、体力まで大きく落ちているなら減量方法を見直す必要があります。
高齢者は特に注意したほうがいい?
加齢とともに筋肉量は減少しやすくなります。
その状態で食欲が大きく落ち、急速に体重が減ると、若い人以上に筋力低下が問題になることがあります。
高齢者のGLP-1治療では、体重だけでなく食事量、歩行速度、握力など身体機能にも注意することが重要です。
体組成計で筋肉量をチェックすればいい?
家庭用体組成計は、体重変化を見る参考にはなります。
ただし、体内の水分量によって筋肉量や体脂肪率の表示が変化することがあります。
そのため、1回の測定値だけで「筋肉が2kg減った」と判断するのは適切ではありません。
できるだけ同じ時間帯・同じ条件で測定し、数週間から数か月の変化を見るとよいでしょう。
体重だけでなくウエストや筋力も見る
減量の評価では、体重だけを見る必要はありません。
ウエストが減っている、服がゆるくなった、スクワットの回数を維持できている、歩く速度が落ちていないなども参考になります。
理想は「体重は減っているのに、日常生活の筋力や体力は保てている」という状態です。
GLP-1の量を増やせば早く痩せて効率的?
自己判断で薬を増量するのは避けてください。
用量を増やすと、吐き気、嘔吐、食欲低下などの消化器症状が強くなり、必要な栄養を取れなくなる可能性があります。
「食べられないほど効かせる」ことが理想的なGLP-1治療ではありません。
用量は体重変化や副作用を確認しながら医師が調整します。
吐き気が強くて食べられない場合は?
GLP-1治療では、治療開始時や増量後に吐き気などが出ることがあります。
数日以上ほとんど食事が取れない、繰り返し嘔吐する、水分も十分に取れない場合は脱水や栄養不足につながります。
強い副作用を我慢して減量を続けるのではなく、処方した医療機関へ相談してください。
ダイエット中の筋肉を守る3つの基本
GLP-1治療中に筋肉量を守るために重要なのは、極端なカロリー制限を避けること、必要なたんぱく質を確保すること、筋力トレーニングを続けることです。
さらに、十分な睡眠や日常的な活動量を維持することも大切です。
「薬+食べない」だけの減量ではなく、「薬+適切な食事+運動」で体組成を整えることを目指しましょう。
こんな場合は医療機関へ相談を
短期間で体重が急激に落ちた、立ち上がるのがつらくなった、強い倦怠感が続く、ほとんど食事が取れない場合は治療内容の確認が必要です。
また、繰り返す嘔吐、強い腹痛、脱水症状などがある場合も医療機関へ相談してください。
体重が順調に減っているように見えても、筋力・栄養状態・副作用に問題があれば治療の見直しが必要になることがあります。
まとめ
GLP-1治療による減量では、脂肪だけでなく除脂肪体重もある程度減少することがあります。
主な理由は、食欲低下によって摂取カロリーやたんぱく質が不足すること、短期間で体重が落ちること、筋肉への刺激が不足することなどです。
筋肉量をできるだけ守るためには、毎食たんぱく質を意識し、無理のない筋力トレーニングを取り入れ、極端な食事制限を避けましょう。
GLP-1治療の目的は「体重計の数字を最速で減らすこと」ではなく、脂肪を減らしながら健康状態を改善することです。
食欲低下が強すぎる、体力が大きく落ちた、短期間で急激に痩せている場合は、自己判断で薬を調整せず医師へ相談してください。

