ED治療薬を飲んでも性欲は回復しない?勃起力との違いを解説
監修:医師・薬剤師監修
「ED治療薬を飲めば、性欲も以前のように戻るのではないか」「薬を飲んでも性行為をしたい気持ちが起こらない」と悩んでいる男性は少なくありません。
結論からいうと、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルなどのED治療薬は、性欲を直接高める薬ではありません。これらは性的刺激を受けたときに陰茎へ血液が流れ込みやすくなるよう助け、勃起の硬さや持続力を改善する薬です。
性欲が低下している場合は、テストステロンの低下、睡眠不足、ストレス、うつ状態、薬の副作用など、EDとは別の原因を調べる必要があります。
EDと性欲低下は別の症状
EDとは、性行為に必要な勃起が得られない、または勃起を十分に維持できない状態です。一方、性欲低下は、性行為をしたい気持ちや性的な関心そのものが弱くなっている状態を指します。
| 比較項目 | ED | 性欲低下 |
|---|---|---|
| 主な悩み | 性欲はあるが勃起しない、途中で萎える | 性行為をしたい気持ちが起こらない |
| 主な原因 | 血管、神経、糖尿病、心理的な緊張など | ホルモン低下、疲労、ストレス、うつ、薬の影響など |
| 朝立ち | 血管性EDでは減ることがある | テストステロン低下では性欲とともに減ることがある |
| 主な治療 | ED治療薬、生活習慣の改善、原因疾患の治療 | 原因の確認、睡眠・ストレス対策、ホルモン治療など |
例えば、「性行為はしたいのに硬くならない」という場合はEDが中心です。一方、「勃起できるかどうか以前に、性行為そのものへ関心がない」という場合は、性欲低下が中心と考えられます。
EDと性欲低下は同時に起こることもあります。性欲が低下して性的刺激が少なくなると、ED治療薬を正しく飲んでも十分な反応を得にくい場合があります。
ED治療薬が性欲を高めない理由
勃起は、性的刺激を受けた後に陰茎の血管が広がり、海綿体へ血液が流れ込むことで起こります。
シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルは、PDE5阻害薬と呼ばれます。性的刺激によって作られた、陰茎の血管を広げる物質が分解されるのを抑え、勃起を助けます。
つまり、ED治療薬は勃起の準備を整える薬であり、脳に性的欲求を起こさせる薬ではありません。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)のタダラフィルの添付文書にも、「本剤は催淫剤又は性欲増進剤ではない」と記載されています。
NHS(英国国民保健サービス)でも、シルデナフィルを飲むだけでは勃起せず、作用するためには性的な興奮が必要とされています。
ED治療薬を飲んでも反応しにくいケース
性的刺激が不足している
ED治療薬を飲んだ後、何もせずに待っているだけでは勃起しないことがあります。視覚、触覚、会話などによって性的に興奮する必要があります。
薬を飲めば自動的に勃起すると考えていると、「薬が効かなかった」と誤解しやすくなります。
性欲自体が低下している
性欲が弱く、性的刺激を受けても気持ちが高まらない場合は、陰茎の血流を助ける薬だけでは十分な反応を得にくくなります。
性欲低下に加えて、朝立ちの減少、疲労感、筋力低下、意欲低下、イライラなどがある場合は、男性更年期やテストステロン低下が関係している可能性があります。
服用するタイミングや食事が合っていない
シルデナフィルやバルデナフィルは、脂肪の多い食事の後に服用すると、効き始めが遅れたり、効果を感じにくくなったりすることがあります。
タダラフィルは比較的食事の影響を受けにくい薬ですが、過度の飲酒をすると勃起しにくくなり、めまいや血圧低下も起こりやすくなります。
服用後すぐに効果を判断している
薬によって効き始めるまでの時間は異なります。服用から十分な時間がたっていない状態で性行為を始めると、本来の効果を得られない場合があります。
| 有効成分 | 服用時刻の目安 | 作用時間の目安 | 食事の影響 |
|---|---|---|---|
| シルデナフィル | 性行為の約1時間前 | 約4~5時間 | 高脂肪食の影響を受けやすい |
| バルデナフィル | 性行為の約1時間前 | 約5~8時間 | 高脂肪食で遅れることがある |
| タダラフィル | 性行為の約1時間前 | 最大約36時間 | 比較的受けにくい |
性欲が低下する主な原因
テストステロンの低下
テストステロンは、性欲、朝立ち、筋力、意欲、集中力などに関係する男性ホルモンです。
40代以降では低下する可能性があり、性欲低下、ED、疲労感、筋力低下、不眠、イライラなどが現れることがあります。LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)が疑われる場合は、症状と血液検査を合わせて判断します。
ただし、年齢だけで男性更年期と診断されるわけではありません。テストステロン値が正常でも、睡眠不足や強いストレスで性欲が落ちる人もいます。
疲労や睡眠不足
仕事が忙しく毎日5時間程度しか眠れていない、夜中に何度も目が覚めるといった状態では、身体が性行為より休息を優先します。
性欲低下に加えて大きないびき、睡眠中の呼吸停止、朝の頭痛、日中の強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群も疑われます。
ストレスや心理的なプレッシャー
仕事、家計、夫婦関係などのストレスが強いと、性的なことへ意識を向けにくくなります。
また、過去に勃起できなかった経験から「今回も失敗するかもしれない」と考えると、性行為自体を避けるようになり、性欲がなくなったように感じることがあります。
うつ病や不安障害
気分の落ち込み、何をしても楽しくない、意欲が出ない、眠れないといった症状が続く場合は、うつ病が関係している可能性があります。
NHS(英国国民保健サービス)では、EDの原因として、うつ病や不安、ホルモンの問題、糖尿病、高血圧などが挙げられています。
薬の副作用
一部の抗うつ薬、降圧薬、前立腺治療薬、抗男性ホルモン薬などでは、性欲低下やEDが起こる場合があります。
薬を飲み始めてから性欲が低下した場合でも、自己判断で中止してはいけません。急な中止によって元の病気が悪化する可能性があるため、処方した医師へ相談してください。
糖尿病や肥満
糖尿病は血管や神経を傷つけてEDを起こすだけでなく、肥満やテストステロン低下と重なることで性欲にも影響する場合があります。
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)では、低テストステロンがED、疲労感、気分の落ち込み、性欲低下の原因になることがあるとされています。
性欲低下を改善する方法
睡眠と生活習慣を見直す
起床時間をそろえ、十分な睡眠時間を確保します。夕方以降のカフェイン、寝酒、就寝直前のスマートフォンは、眠りを浅くする原因になります。
肥満がある人は、食事と運動で体重を減らすことも重要です。体重管理はテストステロン、糖尿病、高血圧の改善につながる可能性があります。
ストレスの原因を整理する
性行為の回数だけを目標にすると、本人とパートナーの両方にプレッシャーがかかります。
疲労、痛み、夫婦関係、過去の失敗など、性欲を低下させている原因を整理し、必要に応じてカウンセリングを検討します。
テストステロン補充療法
性欲低下や疲労感などの症状があり、血液検査でテストステロン低下が確認された場合は、テストステロン補充療法が検討されます。
治療によって性欲、活力、筋力、朝立ちなどが改善する場合があります。ただし、テストステロン値が正常な人へ、性欲を高める目的だけで使用する治療ではありません。
主な副作用や注意点は次のとおりです。
- 赤血球が増えすぎる多血症
- ニキビや皮脂の増加
- むくみ
- 睡眠時無呼吸症候群の悪化
- 精子産生の低下
- 精巣の縮小
- 不妊への影響
将来子どもを希望している人は、治療前に必ず医師へ伝えてください。
ED治療薬を正しく使う
性欲はあるものの勃起が不十分な場合は、ED治療薬が適しています。
一度うまくいかなかっただけで効果がないと判断せず、食事、服用時刻、性的刺激、飲酒量などを見直します。ただし、自己判断で増量したり、複数のED治療薬を同日に重ねたりしてはいけません。
ED治療薬を使うと自信が戻り、性欲が改善することはある?
ED治療薬には性欲を直接高める作用はありませんが、勃起への不安が減ることで、間接的に性行為への意欲が戻る場合はあります。
「また途中で萎えるかもしれない」という不安が強い人では、薬によって勃起が安定すると、自信が戻り、パートナーとの接触を避けなくなることがあります。
これはED治療薬が性欲を増やしたのではなく、勃起への不安や失敗の恐怖が軽くなった結果です。
ED治療薬の副作用と併用禁忌
ED治療薬の主な副作用は次のとおりです。
- 顔のほてり
- 頭痛
- 鼻づまり
- 動悸
- 胃の不快感
- めまい
ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコランジルなどの硝酸薬・一酸化窒素供与薬とは併用できません。同時に使用すると血圧が急激に下がり、命に関わる可能性があります。PMDA(医薬品医療機器総合機構)でも、シルデナフィルと硝酸薬の併用による重大な危険が報告されています。
重い心臓病、極端な低血圧、最近の心筋梗塞や脳卒中などがある人も、使用前に医師へ相談してください。
個人輸入でED治療薬を購入する場合
個人輸入では、自宅から注文でき、国内では入手しにくい含有量やジェネリック医薬品を比較できることがメリットです。価格や作用時間から、自分に合う選択肢を探しやすい面もあります。
一方で、ED治療薬を選ぶ前に、悩みの中心が勃起力なのか性欲なのかを整理する必要があります。
購入前には次の項目を確認してください。
- 有効成分
- 1錠当たりの含有量
- 服用するタイミング
- 作用時間
- 食事やアルコールの影響
- 硝酸薬などの併用禁忌薬
- 心臓病、肝臓病、腎臓病がある場合の使用可否
- 副作用と受診が必要な症状
- 製造元と成分表示
性欲が低下しているからといってED治療薬の量を増やしても、性欲増進効果は期待できません。
シルデナフィルとタダラフィルを同日に使用するなど、複数のED治療薬を重ねる行為も避けてください。
医療機関へ相談する目安
次のような場合は、泌尿器科、男性更年期外来、心療内科などへ相談してください。
- 性欲低下が3か月以上続いている
- 朝立ちが急に減った
- 疲労感、意欲低下、筋力低下を伴う
- ED治療薬を正しく使用しても反応がない
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症がある
- 薬を変更してから性欲が低下した
- 気分の落ち込みや不眠が続いている
- 将来子どもを希望している
- テストステロン補充療法を検討している
性欲低下がある場合は、テストステロンだけでなく、必要に応じて血糖、甲状腺機能、肝機能、服用薬なども確認します。
まとめ
ED治療薬は、陰茎への血流を助け、性的刺激を受けたときの勃起を改善する薬です。
シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルには、性欲を直接高める作用はありません。そのため、性欲自体が低下している人では、ED治療薬を飲んでも性行為をしたい気持ちが戻らないことがあります。
性欲低下には、テストステロン低下、睡眠不足、ストレス、うつ状態、糖尿病、肥満、服用薬などが関係します。
性欲はあるが勃起できない場合はED治療薬、性欲そのものが低下している場合は原因の検査や生活習慣の改善、必要に応じてテストステロン補充療法などを検討します。
勃起力と性欲を同じものと考えず、どちらに問題があるのかを整理することが、適切な治療を選ぶ第一歩です。

