アレルギー性鼻炎を放置すると喘息につながる?鼻と気管支の関係
監修:医師・薬剤師
花粉やハウスダストによる鼻水・鼻づまりが続いていても、「鼻の症状だけだから」と治療せずに過ごしている人は少なくありません。
アレルギー性鼻炎を放置した人が、必ず喘息になるわけではありません。しかし、アレルギー性鼻炎と気管支喘息は共通するアレルギー性炎症を持ち、同時に発症したり、互いの症状へ影響したりしやすい病気です。
鼻から気管支までは一本の空気の通り道としてつながっているため、現在では「One airway, one disease(気道は一つ、病気も一つ)」という考え方で、鼻と気管支をまとめて管理することが重視されています。
鼻炎が適切に管理されていないと、すでに喘息がある人では咳や息苦しさが悪化する可能性があります。また、アレルギー性鼻炎がある人は、ない人より喘息を合併しやすいことが知られています。
この記事では、アレルギー性鼻炎と喘息の関係、鼻炎を放置した場合の影響、喘息を疑う症状、受診や治療のポイントをわかりやすく解説します。
アレルギー性鼻炎と喘息は別の病気?
アレルギー性鼻炎は、花粉、ダニ、ハウスダスト、動物の毛やふけなどを吸い込んだとき、鼻の粘膜でアレルギー反応が起こる病気です。
主な症状は、次のとおりです。
- くしゃみ
- 透明で水のような鼻水
- 鼻づまり
- 鼻や目のかゆみ
- のどへ鼻水が流れる後鼻漏
一方、喘息は気管支に慢性的な炎症が起こり、空気の通り道が狭くなる病気です。咳、喘鳴、息苦しさ、胸の圧迫感などが繰り返し現れます。
症状が出る場所は異なりますが、どちらもアレルゲンに対する免疫反応や、好酸球などが関係する気道の炎症を持つことがあります。
鼻炎は上気道、喘息は下気道の病気ですが、完全に別々ではなく、同じ気道に起こる関連性の強い病気です。
鼻と気管支はどのようにつながっている?
空気は鼻から入り、のど、気管、気管支を通って肺へ届きます。
鼻には、吸い込んだ空気を温め、湿らせ、花粉やほこりなどの異物を取り除く役割があります。鼻づまりによって口呼吸が増えると、冷たく乾燥した空気やアレルゲンが、十分に処理されないまま気管支へ入りやすくなります。
また、鼻のアレルギー反応で放出される炎症性物質が、血液を介して気管支の炎症へ影響する可能性も考えられています。
アレルギー性鼻炎と喘息が高い割合で合併することも、両者が密接に関係している根拠の一つです。研究レビューでは、喘息患者の80%以上に鼻炎がみられ、鼻炎患者の約10~40%に喘息があると報告されています。
アレルギー性鼻炎を放置すると喘息になる?
鼻炎を治療しなかったことだけが原因で、喘息が発症すると断定することはできません。
喘息の発症には、遺伝的なアレルギー体質、ダニや花粉への感作、喫煙、受動喫煙、大気汚染、感染症、肥満など、複数の要因が関係します。
ただし、アレルギー性鼻炎は喘息の発症や合併と関連する重要な要因です。鼻炎は喘息より先に現れることがあり、鼻炎の期間や重症度が下気道へ影響する可能性も報告されています。
特に小児では、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息などが成長とともに現れる「アレルギーマーチ」がみられることがあります。
そのため、鼻炎を「単なる鼻水」と考えて放置せず、症状を適切に管理することが大切です。
鼻炎を放置すると喘息が悪化しやすい理由
口呼吸が増える
鼻づまりが続くと、口から呼吸する時間が増えます。
鼻を通らない空気は、加温・加湿・異物除去が十分に行われません。そのため、乾燥した空気、冷気、花粉、ほこりなどが気管支を刺激し、咳や喘鳴を起こしやすくなる可能性があります。
同じアレルゲンが鼻と気管支を刺激する
ダニ、ハウスダスト、花粉、動物のふけなどは、鼻炎だけでなく喘息の誘因にもなります。
鼻症状が強い時期に咳や息苦しさも悪化する場合は、同じアレルゲンによって上気道と下気道の両方に炎症が起きている可能性があります。
睡眠の質が低下する
鼻づまりが強いと、夜間に何度も目が覚めたり、いびきや口呼吸が増えたりします。
睡眠不足による疲労や体調不良は、喘息症状を管理しにくくする要因になります。夜間の鼻づまりと咳が重なると、本人がどちらの症状で目覚めているのか判断しにくいこともあります。
喘息の治療効果を感じにくくなる
喘息の吸入薬を正しく使用していても、鼻炎が十分に管理されていなければ、咳やのどの違和感が残ることがあります。
海外の医療機関でも、アレルギー性鼻炎が適切に管理されていないと、一部の人では喘息症状が悪化する可能性があるとして、両方をまとめて治療することが勧められています。
喘息を疑う症状
アレルギー性鼻炎がある人で、次の症状が繰り返し現れる場合は、喘息の可能性があります。
- 夜中や明け方に咳が出る
- 運動すると咳き込む
- 風邪のあとに咳だけ長く残る
- 息を吐くときにゼーゼー、ヒューヒュー音がする
- 胸が締め付けられる感じがする
- 季節の変わり目に息苦しくなる
- 花粉やほこりで咳も悪化する
- 冷たい空気を吸うと咳が出る
喘息の咳は毎日同じ強さではなく、症状がある時期とない時期を繰り返すことがあります。
また、ゼーゼー音がなく、咳だけが続く「咳喘息」の場合もあります。
鼻炎に加えて夜間・早朝の咳や息苦しさがある場合は、耳鼻咽喉科だけでなく、呼吸器内科や小児科への相談も検討してください。
すぐに受診した方がよい症状
次のような症状がある場合は、喘息発作などの可能性があるため、速やかな受診が必要です。
- 会話を続けるのが苦しい
- 横になれないほど息苦しい
- 唇や顔色が青紫色になる
- 肩を上下させて呼吸している
- 処方された発作止めを使っても改善しない
- 意識がぼんやりする
喘息は、症状がないときでも気道に炎症が残っている場合があります。炎症を治療しないまま発作を繰り返すと、気道が狭くなりやすい状態が続き、重い発作につながることがあります。
鼻炎を治療すれば喘息を予防できる?
アレルギー性鼻炎を治療すれば、将来の喘息発症を完全に防げるとは限りません。
しかし、鼻炎を適切に管理することは、すでに喘息がある人の症状改善や、気道全体の炎症管理に役立つ可能性があります。
「One airway, one disease」の考え方では、喘息だけ、鼻炎だけを別々に治療するのではなく、両方の状態を確認します。アレルギー性鼻炎への早期介入が、喘息を含むアレルギー疾患全体へよい影響を与える可能性も指摘されています。
鼻炎治療は、鼻を通りやすくするだけでなく、気道全体を良好な状態に保つためにも重要です。
アレルギー性鼻炎の主な治療
原因となるアレルゲンを減らす
ダニやハウスダストが原因の場合は、寝具の洗濯、掃除、湿度管理などを行います。
花粉症では、飛散時期にマスクや眼鏡を使用し、帰宅時に衣類や髪へ付いた花粉を落とします。
抗ヒスタミン薬
くしゃみ、鼻水、かゆみを抑える薬です。
製品によっては眠気が出るため、運転や機械操作を行う人は注意が必要です。眠気が少ない薬へ変更できる場合もあります。
鼻噴霧用ステロイド薬
鼻粘膜のアレルギー性炎症を抑え、鼻水、くしゃみ、鼻づまりを改善します。
一定期間、毎日正しく使用することで効果を発揮する薬であり、症状が強い日だけ使っても十分に効かないことがあります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
鼻づまりが強い場合や、喘息を合併している場合に使われることがあります。
鼻炎と喘息の両方に使用される薬がありますが、自己判断で併用や中止をせず、処方医の指示に従います。
アレルゲン免疫療法
スギ花粉やダニに対する舌下免疫療法などがあります。
原因となるアレルゲンを少量ずつ投与し、アレルギー反応を起こしにくい状態を目指す治療です。すべての人に適するわけではなく、長期間の継続が必要です。
喘息が疑われる場合の検査
喘息は症状だけでなく、次のような検査を組み合わせて診断します。
- 呼吸機能検査
- 気管支拡張薬を使用する前後の呼吸機能の比較
- 呼気一酸化窒素濃度の測定
- 血液検査やアレルギー検査
- 胸部画像検査
受診時には、咳が出る時間帯、季節、運動との関係、鼻症状との連動、家族歴などを伝えると診断に役立ちます。
よくある質問
花粉症があると必ず喘息になりますか?
必ずではありません。ただし、アレルギー性鼻炎がある人は喘息を合併しやすいため、咳や喘鳴がある場合は検査を受けましょう。
鼻水がのどへ流れると喘息になりますか?
後鼻漏だけが直接喘息を起こすとは限りません。ただし、後鼻漏は慢性的な咳の原因になり、喘息との区別が必要になることがあります。
鼻炎を治療すれば咳も治りますか?
後鼻漏や鼻炎が原因の咳であれば改善する可能性があります。喘息を合併している場合は、鼻炎治療だけでなく気管支の治療も必要です。
耳鼻咽喉科と呼吸器内科のどちらを受診すべきですか?
鼻水や鼻づまりが中心なら耳鼻咽喉科、夜間の咳、喘鳴、息苦しさがある場合は呼吸器内科が適しています。両方の症状がある場合は、双方で情報を共有しながら治療することがあります。
まとめ
アレルギー性鼻炎を放置したからといって、必ず喘息になるわけではありません。
しかし、鼻と気管支は連続した一つの気道であり、アレルギー性鼻炎と喘息は共通する炎症を持つ、関連性の強い病気です。
鼻づまりによる口呼吸、共通するアレルゲン、気道全体の炎症などによって、鼻炎の悪化が喘息症状へ影響する可能性があります。すでに喘息がある人では、鼻炎を適切に管理することが喘息のコントロールにも重要です。
アレルギー性鼻炎に加えて、夜間や早朝の咳、運動時の咳、ゼーゼーする呼吸、胸の圧迫感がある場合は、喘息を疑って医療機関へ相談してください。
鼻炎を単なる鼻水として我慢せず、原因となるアレルゲンへの対策と、抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬などの治療を適切に続けましょう。

