不眠症は放置するとどうなる?身体への影響を解説
監修:医師・薬剤師監修
「布団に入ってもなかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝早く起きてしまい、その後眠れない」といった状態が続いていませんか。
一時的な不眠は、仕事の忙しさや人間関係のストレス、生活リズムの乱れなどによって誰にでも起こります。しかし、不眠が何週間、何か月も続いているのに、「そのうち治るだろう」と放置するのはおすすめできません。
不眠症を放置すると、日中の眠気や集中力低下だけでなく、心身の健康や仕事、運転などにも影響する可能性があります。
この記事では、不眠症を放置すると身体にどのような変化が起こるのか、改善のために何をすればよいのか、睡眠薬を検討する目安まで分かりやすく解説します。
そもそも不眠症とは?
不眠症とは、単純に睡眠時間が短い状態だけを指すものではありません。
寝つくまでに長い時間がかかる「入眠困難」、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、予定より早く起きて眠れなくなる「早朝覚醒」、眠ったはずなのに休んだ感じがしない「熟眠障害」などがあり、これらによって日中の生活に支障が出ている状態です。
例えば、午前0時に布団へ入っても午前2時まで眠れない、夜中に3回以上起きる、朝4時に目が覚めてしまうといった状態が繰り返される場合があります。
国立精神・神経医療研究センターでは、不眠の悩みは多くの人が経験し、慢性的な不眠に悩む人も少なくないとされています。加齢とともに眠りが浅くなり、不眠の悩みが増える傾向も報告されています。
不眠症を放置すると日中の集中力が落ちる
不眠が続いたときに最初に感じやすいのが、日中の眠気や疲労感です。
朝起きても頭がぼんやりする、会議の内容が入ってこない、簡単な計算を間違える、同じ文章を何度も読み直すといった変化が起こりやすくなります。
睡眠が不足すると、脳が十分に休めず、注意力、判断力、記憶力が低下します。自分では普段通りに仕事をしているつもりでも、確認漏れや入力ミスが増えることがあります。
NHLBI(米国国立心肺血液研究所)では、睡眠不足は仕事、学校、運転、社会生活に影響を及ぼし、日中の強い疲労感や注意力低下につながるとされています。
睡眠不足が続くと、能力そのものが落ちたのではなく、脳の処理速度が一時的に低下している可能性があります。
仕事中や運転中の事故につながることがある
不眠症を放置する大きなリスクの一つが、眠気による事故です。
例えば、運転中に一瞬意識が飛ぶ、赤信号への反応が遅れる、階段で足を踏み外す、機械操作を間違えるといった危険があります。
特に営業職、配送業、工場勤務、建設業など、車や機械を使う仕事では注意が必要です。
毎日5時間程度しか眠れていない状態が続いても、本人が眠気に慣れてしまい、「自分は大丈夫」と思い込むケースがあります。しかし、眠気の自覚が弱くても、判断力や反応速度が低下している可能性はあります。
運転中に眠気を感じる、信号待ちで意識が落ちそうになる場合は、運転を続けないことが重要です。
食欲が増えて太りやすくなる可能性がある
眠れない状態が続くと、食欲にも影響が出ることがあります。
慢性的な睡眠不足では、食欲を抑えるホルモンであるレプチンが減り、食欲を高めるグレリンが増えることが報告されています。その結果、普段より空腹を感じやすくなり、甘い物、脂っこい物、炭水化物を食べたくなる場合があります。
例えば、夕食を食べた後なのに夜中にカップ麺やお菓子を食べてしまう、昼食後すぐに甘い物が欲しくなるなどの変化です。
さらに、眠気が強いと運動量も減りやすくなります。食べる量が増えて動く量が減れば、体重増加につながりやすくなります。
不眠は意思の弱さとは関係なく、食欲を調整する体の仕組みに影響を与える可能性があります。
高血圧や糖尿病などのリスクにも関係する
睡眠中は、心拍数や血圧を下げ、身体を休ませる時間です。
ところが睡眠不足が続くと、夜間になっても交感神経が活発な状態が続き、血圧が十分に下がらなくなることがあります。
また、インスリンの効きが悪くなり、同じ食事をしても血糖値が上がりやすくなる可能性があります。
厚生労働省の健康情報では、慢性的な睡眠不足や不眠症などの睡眠障害は、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病のリスクを高め、症状を悪化させることがあると報告されています。
一晩眠れなかっただけで、すぐに生活習慣病になるわけではありません。しかし、数か月から数年にわたって睡眠不足が続けば、身体への負担が積み重なっていきます。
免疫機能が低下して体調を崩しやすくなる
睡眠は、身体を休ませるだけではなく、免疫機能を整えるためにも重要です。
不眠が続いて疲れが取れなくなると、風邪をひきやすい、口内炎が繰り返しできる、体調が回復しにくいと感じる人もいます。
体調不良によってさらに眠れなくなり、眠れないことで体調が悪化するという悪循環に入ることもあります。
休日に長時間眠れば完全に取り戻せるとは限らないため、毎日の睡眠を整えることが大切です。
不安感や気分の落ち込みが強くなることがある
不眠症を放置すると、身体だけでなく心にも影響が出る場合があります。
睡眠不足の翌日は、普段なら気にならない一言にイライラしたり、仕事の小さな失敗を必要以上に引きずったりすることがあります。
また、「今日も眠れなかったらどうしよう」と考えることで、布団に入ること自体が不安になり、さらに寝つけなくなるケースもあります。
CDC(米国疾病予防管理センター)では、睡眠不足は不安、うつ状態、心疾患、肥満、けがなどのリスクとの関連があるとされています。
不眠と気分の落ち込みは、どちらか一方だけが原因とは限りません。不眠によって気分が落ち込み、気分の落ち込みによってさらに眠れなくなることがあります。
何をしても楽しくない、強い不安が続く、仕事や家事ができない状態がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
不眠を悪化させやすい生活習慣
不眠を改善したい場合は、まず毎日の生活を見直す必要があります。
特に注意したいのが、眠る直前までスマートフォンを見ることです。強い光を浴び続けると脳が昼間だと判断し、寝つきが悪くなる場合があります。
また、夕方以降のコーヒー、エナジードリンク、濃いお茶も不眠の原因になります。カフェインの影響が残りやすい人では、午後に飲んだコーヒーが夜の睡眠に影響することもあります。
寝酒にも注意が必要です。お酒を飲むと一時的に眠くなりますが、夜中に目が覚めやすくなり、睡眠の後半が浅くなることがあります。
厚生労働省は、睡眠時間と休養感を確保するため、睡眠環境、運動、朝食、就寝前のリラックス、カフェインや飲酒の見直しを推奨しています。
不眠が続く場合は睡眠薬も選択肢になる
生活習慣を整えても眠れない場合は、睡眠薬を使った治療が選択肢になります。
睡眠薬には、寝つきを助ける短時間型、中途覚醒や早朝覚醒に使われる持続時間が長めのタイプ、覚醒を抑えるオレキシン受容体拮抗薬など、複数の種類があります。
大切なのは、「睡眠薬ならどれでも同じ」と考えないことです。
寝つけない人と、夜中に何度も目が覚める人では、適した薬が異なる場合があります。翌朝に車を運転する人であれば、眠気が残る可能性も考えなければなりません。
薬の強さだけではなく、自分の不眠のタイプ、起床時間、仕事、服用中の薬まで考えて選ぶことが重要です。
睡眠薬を個人輸入する場合の注意点
病院へ行く時間が取れない、国内では入手しにくい商品を検討したい、必要な分を手元に準備しておきたいという理由から、睡眠薬の個人輸入を検討する人もいます。
個人輸入代行サイトを利用すれば、海外で流通している医薬品を選択肢に入れられる点はメリットです。
ただし、睡眠薬は商品によって作用時間、副作用、依存性、翌朝への残り方が異なります。アルコールや他の睡眠薬、抗不安薬などと一緒に使用すると、眠気やふらつきが強くなる可能性もあります。
個人輸入を利用する場合も、成分、用法・用量、併用禁忌を確認し、信頼できる個人輸入代行サイトを選ぶことが大切です。
初めて使用する睡眠薬を自己判断で増量したり、複数種類を同時に飲んだりしないでください。
医療機関へ相談した方がよい不眠のサイン
不眠の背景に、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、うつ病、甲状腺の病気、痛み、頻尿などが隠れている場合があります。
大きないびきを指摘される、睡眠中に呼吸が止まる、朝起きると頭痛がする、日中に耐えられないほど眠い場合は、睡眠時無呼吸症候群も考えられます。
また、脚がむずむずして動かさずにいられない場合は、むずむず脚症候群の可能性があります。
次のような状態がある場合は、自己判断だけで済ませず医療機関への相談を検討してください。
- 不眠が長期間続いている
- 日中の仕事や家事に支障が出ている
- 運転中に強い眠気がある
- 大きないびきや睡眠中の無呼吸がある
- 不安や気分の落ち込みが強い
- 睡眠薬やお酒がないと眠れなくなっている
まとめ|不眠症は我慢せず早めに対策しよう
不眠症を放置すると、日中の眠気や集中力低下だけでなく、仕事のミス、交通事故、体重増加、高血圧、糖尿病、気分の落ち込みなど、さまざまな問題につながる可能性があります。
まずは起床時間を一定にする、朝に光を浴びる、夕方以降のカフェインを控える、寝酒をやめる、就寝前のスマートフォンを減らすといった対策から始めましょう。
それでも眠れない状態が続く場合は、睡眠薬を含む治療を検討することも一つの方法です。
「眠れないだけだから」と放置せず、日中の生活に影響が出る前に、自分に合った対策を始めることが重要です。

