夏に痛風発作が増えるのはなぜ?汗・脱水・尿酸値の関係
監修:医師・薬剤師
痛風というと「ビールや肉の食べすぎが原因」というイメージがありますが、実は夏は痛風発作が起こりやすい季節の一つです。
日本国内の研究でも、高尿酸血症や痛風の新規発症には季節性があり、夏から秋に多くなる傾向が報告されています。また、高温多湿の環境で痛風発作が増える可能性も指摘されています。
夏に注意したい大きな理由が、汗による脱水です。大量に汗をかいて体内の水分が減ると血液が濃縮され、血液中の尿酸濃度が一時的に上がりやすくなります。さらに、脱水によって尿量が減ると、尿酸を尿として排出しにくくなる場合があります。
そこへビールなどの飲酒、食べすぎ、激しい運動が重なると、痛風発作のリスクをさらに高める可能性があります。
この記事では、夏に痛風発作が起こりやすくなる理由と、汗・脱水・尿酸値の関係、暑い季節に取り入れたい予防方法を分かりやすく解説します。
そもそも痛風発作はなぜ起こる?
尿酸は、プリン体が体内で分解されたときに作られる物質です。通常は血液中を循環したあと、主に腎臓から尿として排出されます。
血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超える状態を高尿酸血症と呼びます。尿酸値が高い状態が続くと、尿酸が結晶化し、関節などへ蓄積します。
何らかのきっかけで関節内にある尿酸塩結晶へ白血球が反応すると、急激な炎症が起こります。これが痛風発作です。日本整形外科学会でも、高尿酸血症によって関節内に尿酸塩結晶が生じ、それを白血球が処理する際に急性関節炎が起こると解説されています。
尿酸値が高いから常に痛いのではなく、関節に蓄積した尿酸塩結晶に強い炎症が起きたときに激痛が現れるのが痛風です。
なぜ夏に痛風発作が増えやすい?
汗をかいて体内の水分が減る
暑い日は体温を下げるために大量の汗をかきます。
汗そのものから尿酸が大量に失われるわけではありませんが、汗によって水分が失われると血液中の水分量が減ります。その結果、尿酸の濃度が相対的に高くなりやすくなります。
特に、次のような日は脱水が起こりやすいため注意が必要です。
- 猛暑日に長時間外出した
- 屋外で仕事やスポーツをした
- 大量に汗をかいた
- 水分をあまり取っていない
- 発熱や下痢がある
- 飲酒後に十分な水分を取っていない
国内の報告でも、夏季や高温多湿の環境と痛風発作との関連が指摘されています。
脱水すると尿酸を排出しにくくなる
体内の水分が不足すると、体は水を節約するため尿量を減らします。
尿酸は主に腎臓から尿中へ排出されるため、尿量が少なくなる状況では、尿酸を効率よく排出しにくくなる可能性があります。尿酸値は、体内で作られる量と、腎臓や腸から排出される量のバランスによって決まります。
夏は「汗をかく→脱水する→尿量が減る→尿酸値が上がりやすくなる」という流れが生じやすい季節です。
夏のビールも痛風発作を起こしやすくする?
暑い日に冷たいビールを飲む人も多いでしょう。しかし、痛風がある人や尿酸値が高い人では注意が必要です。
アルコールは体内で尿酸が作られる量を増やしたり、腎臓からの尿酸排泄を妨げたりする方向へ働くことがあります。
また、お酒を飲むと水分を取っているように感じますが、アルコール飲料を水分補給の代わりにすることはできません。
夏の屋外活動後に水をほとんど飲まず、ビールを何杯も飲むと、脱水とアルコールの影響が重なる可能性があります。
日本整形外科学会でも、暴飲暴食は高尿酸血症や痛風の原因の一つとして挙げられています。
「プリン体ゼロ」のお酒でも、アルコールそのものによる尿酸への影響がなくなるわけではありません。
激しい運動も尿酸値を上げることがある
適度な運動は肥満改善や生活習慣病予防に役立ちますが、暑い日に激しい運動を行う場合は注意が必要です。
短時間に強い運動を行うと、エネルギー代謝の影響などによって尿酸値が一時的に上昇することがあります。さらに、大量の発汗による脱水が加われば、尿酸濃度が上がりやすくなります。
日本整形外科学会も、高尿酸血症の原因の一つとして激しい運動を挙げています。
痛風や高尿酸血症がある人は、真夏に突然激しいランニングや筋力トレーニングを始めるより、ウォーキングなどから無理なく始める方がよいでしょう。
夏の痛風予防で大切なのは水分補給
夏の痛風対策で最も取り入れやすいのが、脱水を防ぐことです。
一度に大量の水を飲むのではなく、日中を通してこまめに補給します。
水分補給を意識したいタイミング
- 起床後
- 外出前
- 運動や屋外作業の前後
- 入浴前後
- 飲酒するとき
- 就寝前
水や無糖のお茶などを基本にします。大量の汗をかいて熱中症が心配な場合は、体調に応じて電解質を含む飲料を利用することがあります。
ただし、心不全や腎臓病などで水分摂取量を制限されている人は、自己判断で大量に飲まず、主治医の指示を優先してください。
甘い飲み物の飲みすぎにも注意
水分補給としてジュースや清涼飲料水を大量に飲むのもおすすめできません。
糖分を多く含む飲料を習慣的に大量摂取すると、体重増加や代謝異常につながり、高尿酸血症の管理にも好ましくありません。
高尿酸血症は肥満や高血圧などの生活習慣病を合併することも少なくありません。
普段の水分補給は水や無糖のお茶を中心にし、スポーツドリンクなどは大量発汗時など必要な場面で利用しましょう。
夏に気をつけたい食事
痛風予防では、プリン体だけを気にするのではなく、食事全体を見直すことが重要です。
食べすぎを避ける
焼肉やバーベキュー、旅行先での食事など、夏は普段より飲食量が増えることがあります。
暴飲暴食は尿酸値を上げる要因になるため、満腹になるまで食べ続けないことが大切です。
プリン体の多い食品だけに偏らない
レバーなどの内臓類や、一部の魚介類などはプリン体を多く含みます。
完全に禁止する必要はありませんが、毎日大量に食べ続けるのは避け、野菜、海藻、乳製品なども組み合わせましょう。
肥満がある場合は体重管理をする
肥満は高尿酸血症や痛風のリスク因子の一つです。
ただし、夏に急激な断食や極端な糖質制限を行うと、体調を崩したり、尿酸値が変動したりする可能性があります。
短期間で一気に減量するより、食事量と運動量を少しずつ調整することが重要です。
尿酸降下薬は夏だけ増やした方がいい?
アロプリノール、フェブキソスタット、ベンズブロマロンなどの尿酸降下薬を服用している人が、夏だからと自己判断で増量してはいけません。
また、尿酸値が下がったからといって勝手に中止するのも避けてください。
高尿酸血症の治療では、尿酸値を安定して管理することが重要です。薬を急に変更すると尿酸値が変動し、かえって痛風発作が起こることがあります。
夏に発作を繰り返す場合は、水分摂取量や飲酒量とともに、現在の尿酸値や治療内容を医師へ確認してもらいましょう。
痛風発作が起きたときの対処
痛風発作では、足の親指の付け根が突然赤く腫れ、激しい痛みが現れることが代表的です。足首、足の甲、膝などに起こる場合もあります。
発作が起きた場合は、患部を安静にし、無理に歩いたり運動したりしないでください。
医師から発作時の薬を処方されている場合は、指示された方法で使用します。自己判断で尿酸降下薬を追加したり、中止したりしないことが重要です。
初めて関節が激しく腫れた場合は、痛風だけでなく細菌性関節炎など別の病気との区別が必要になるため、医療機関を受診しましょう。
こんな症状がある場合は早めに受診
- 初めて強い関節痛が起きた
- 関節が赤く大きく腫れている
- 発熱を伴っている
- 数日たっても痛みが改善しない
- 痛風発作を何度も繰り返している
- 背中や脇腹に激痛がある
- 尿が出にくい、血尿がある
高尿酸血症では、尿酸塩が関節だけでなく腎臓や尿路へ沈着し、尿路結石などを起こすことがあります。
よくある質問
汗をたくさんかけば尿酸も汗から出ますか?
汗をかくことを尿酸排泄の方法として考えることはできません。むしろ大量発汗で脱水すると、血液中の尿酸濃度が上がりやすくなるため注意が必要です。
水をたくさん飲めば痛風発作を防げますか?
脱水を防ぐことは重要ですが、水分だけで痛風を完全に予防できるわけではありません。尿酸値、飲酒、食事、肥満、服用薬なども管理する必要があります。
夏だけ尿酸値が高くなることはありますか?
暑い時期に尿酸値が高くなる傾向を示した報告があり、高温多湿と痛風発作との関連も指摘されています。 ただし、季節による変化には個人差があります。
ビールを飲むときに水も飲めば大丈夫ですか?
水分を補うことは脱水予防に役立ちますが、アルコールによる尿酸への影響がなくなるわけではありません。飲酒量そのものを控えることも必要です。
まとめ
夏に痛風発作が増えやすい大きな理由の一つが、汗による脱水です。
大量に汗をかいて体内の水分が減ると、血液中の尿酸濃度が上がりやすくなります。さらに尿量が減ることで、尿酸を排出しにくくなる可能性があります。
そこへ飲酒、暴飲暴食、激しい運動などが重なると、痛風発作につながるリスクがさらに高まります。
夏の対策では、のどが渇いてから一気に飲むのではなく、外出前、運動前後、入浴前後などにこまめな水分補給を心がけましょう。
すでに高尿酸血症や痛風で治療を受けている人は、暑い時期も尿酸降下薬を自己判断で増減せず、尿酸値を安定して管理することが重要です。
繰り返す関節痛や強い腫れ、発熱、血尿などがある場合は、痛風だからと自己判断せず医療機関へ相談してください。

