熱中症の症状を段階別に解説|救急車を呼ぶ目安とは?
監修:医師・薬剤師監修
「めまいがするけれど、少し休めば大丈夫?」「吐き気がある場合は病院へ行くべき?」「どの症状なら救急車を呼ぶの?」と判断に迷う人は多いでしょう。
熱中症は、暑さによって体温調節がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態です。炎天下だけでなく、湿度の高い室内、夜間、風通しの悪い作業場、エアコンを使っていない部屋などでも発症します。
熱中症は軽いめまいや足のつりから始まり、頭痛・嘔吐・意識障害へ急速に悪化することがあります。自力で水を飲めない、呼びかけへの反応がおかしい、けいれんしている場合は、迷わず119番へ通報してください。厚生労働省でも、自力で水を飲めない場合や意識がない場合は、すぐに救急車を呼ぶよう案内しています。
熱中症はどのように重症化する?
人の身体は、汗を蒸発させたり、皮膚の血管を広げたりして体内の熱を外へ逃がしています。
しかし、気温や湿度が高い環境で長時間過ごすと、汗で水分や塩分が失われます。さらに、湿度が高い日は汗が蒸発しにくいため、汗をかいていても身体を十分に冷やせません。
その結果、血流や体温調節が乱れ、筋肉、脳、腎臓、肝臓などへ影響が及ぶことがあります。
熱中症は、症状の重さに応じて段階的に分類されます。従来はⅠ度からⅢ度までの分類が広く使われてきましたが、日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2024」では、従来の重症群の中でも特に重い状態をⅣ度として区別する考え方が示されています。
ただし、一般の人が重症度を完全に判定するのは困難です。症状は短時間で変化するため、分類よりも「意識」「水分を飲めるか」「冷却して改善するか」を確認してください。
熱中症の症状を段階別に比較
| 段階 | 主な症状 | 必要な対応 |
|---|---|---|
| Ⅰ度・軽症 | めまい、立ちくらみ、大量の発汗、生あくび、筋肉痛、こむら返り | 涼しい場所へ移動し、身体を冷やして水分・電解質を補給する |
| Ⅱ度・中等症 | 頭痛、吐き気、嘔吐、強いだるさ、集中力や判断力の低下 | 医療機関へ相談・受診する。改善しない場合は救急要請を検討する |
| Ⅲ度・重症 | 意識障害、けいれん、歩けない、反応がおかしい、臓器障害が疑われる | すぐに119番通報し、救急隊到着まで冷却を続ける |
| Ⅳ度・最重症 | 重い意識障害や極端な高体温など、緊急の集中治療が必要な状態 | 一刻も早い救急搬送と医療機関での積極的な冷却・全身管理が必要 |
Ⅰ度|軽症でみられる初期症状
軽症では、次のような症状が現れます。
- めまい
- 立ちくらみ
- 大量の発汗
- 生あくび
- 手足のしびれ
- 筋肉痛
- 足や腕のこむら返り
- 気分が悪い
厚生労働省では、めまい、大量の発汗、立ちくらみ、筋肉痛、生あくび、筋肉のこむら返りなどを、熱中症が疑われる症状として挙げています。
例えば、炎天下を歩いている途中にふらつく、暑い倉庫で作業中に急に足がつる、スポーツ中に汗が止まらなくなるといった状態です。
軽症に見えても、そのまま運動や作業を続けてはいけません。すぐに涼しい場所へ移動し、衣服を緩めて身体を冷やしてください。
軽症時の応急処置
- エアコンの効いた室内や風通しのよい日陰へ移動する
- ベルト、襟元、靴などを緩める
- 首、脇の下、足の付け根を冷やす
- 意識がはっきりしていれば、経口補水液などを少量ずつ飲む
- 一人にせず、症状が改善するか観察する
厚生労働省では、涼しい場所へ避難し、衣服を緩め、首周り・脇の下・足の付け根などを冷やし、経口補水液などを補給する方法を案内しています。
Ⅱ度|頭痛や吐き気が出る中等症
熱中症が進むと、次のような症状が現れます。
- 頭痛
- 吐き気
- 嘔吐
- 強い倦怠感
- 身体に力が入らない
- 集中できない
- 判断力が低下する
- 普段より反応が遅い
この段階では、単なる水分不足ではなく、身体の内部に熱がこもり、脳や全身へ影響が出始めている可能性があります。
厚生労働省の職場向け情報でも、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下がみられる場合は、医療機関での診療が必要な状態とされています。
頭痛や吐き気がある場合は、涼しい場所で休むだけで終わらせず、医療機関への相談を検討してください。
すぐ受診を検討したい状態
- 冷却しても頭痛や吐き気が続く
- 水分を飲むと吐いてしまう
- 強いだるさで立ち上がれない
- 尿がほとんど出ていない
- 高齢者や小さな子どもである
- 心臓病、腎臓病、糖尿病などの持病がある
吐き気や嘔吐があり、自力で十分な水分を取れない場合は、点滴などの治療が必要になることがあります。環境省でも、自分で水分を取れない場合や症状が改善しない場合は、速やかな医療機関の受診が必要とされています。
Ⅲ度|意識障害やけいれんがある重症
次のような症状がある場合は、重い熱中症が疑われます。
- 呼びかけへの反応がおかしい
- 意識がもうろうとしている
- 名前や場所を答えられない
- 同じ話を繰り返す
- まっすぐ歩けない
- 全身のけいれんがある
- 身体が非常に熱い
- 自力で水を飲めない
- 強い脱力感で動けない
これらの症状が一つでもあれば、すぐに119番へ通報してください。消防庁でも、意識がない、全身けいれんがある、自力で水を飲めない、強い倦怠感で動けない場合は、ためらわず救急要請する必要があるとしています。
本人が「大丈夫」と答えていても、受け答えが普段と違う場合は安心できません。熱中症による意識障害では、自分の状態を正しく判断できなくなることがあります。
Ⅳ度|最重症の熱中症
Ⅳ度は、従来の重症熱中症の中でも、特に生命の危険が高く、積極的な冷却や集中治療が必要な状態です。
一般の人が現場でⅢ度とⅣ度を正確に区別することはできません。重い意識障害、極端な高体温、けいれんなどがある場合は、分類を考える前に救急車を呼んでください。
厚生労働省の職場向け情報では、最重症群に対し、積極的な冷却を含む集学的治療を早急に開始する考え方が紹介されています。
救急車を呼ぶ具体的な目安
次の状態では、迷わず119番へ通報してください。
- 意識がない
- 呼びかけへの反応がおかしい
- 自力で水を飲めない
- 何度も嘔吐している
- けいれんしている
- まっすぐ歩けない
- 身体が非常に熱い
- 強いだるさで動けない
- 冷却しても症状が悪化している
救急車を呼ぶか迷った場合でも、意識や飲み込みに異常があれば救急要請を優先してください。救急隊が到着するまで何もしないのではなく、涼しい場所へ移動させて身体を冷やし続けます。
救急車を待つ間に行うこと
涼しい場所へ移動する
エアコンが効いた室内や風通しのよい日陰へ移動させます。
屋外で移動が難しい場合は、日陰を作り、地面からの熱を避けるためにシートや衣類を敷きます。
衣服を緩める
上着、ベルト、ネクタイ、靴などを緩め、熱を外へ逃がしやすくします。
身体を積極的に冷やす
首、脇の下、足の付け根などを冷やします。
保冷剤や氷がない場合は、身体を水で濡らし、うちわや扇風機で風を当ててください。消防庁では、衣服を脱がせて身体を濡らし、風を当てる方法が効果的とされています。
救急車を呼んだ後も、救急隊が到着するまで冷却を続けることが重要です。
意識が悪い人に水を飲ませてはいけない
熱中症では水分補給が重要ですが、誰にでも飲ませてよいわけではありません。
次のような状態では、飲み物を与えないでください。
- 意識がもうろうとしている
- 呼びかけへの反応がおかしい
- 自分でコップを持てない
- 飲み込む力が弱い
- 何度も嘔吐している
- けいれんしている
意識が悪い人へ無理に水を飲ませると、飲料が気管へ入り、窒息や誤嚥を起こす危険があります。
自力で水を飲めない場合は、口からの水分補給ではなく、医療機関で点滴などの処置が必要です。
汗をかいていなくても熱中症になる?
「汗が出ていないから熱中症ではない」とは限りません。
熱中症の初期には大量の汗が出ることがありますが、重症化して体温調節機能が破綻すると、皮膚が熱いのに汗が少ない場合もあります。
反対に、汗を大量にかいていても、身体の熱が十分に逃げているとは限りません。湿度が高い環境では汗が蒸発しにくく、体温が上昇することがあります。
汗の有無だけではなく、意識状態、ふらつき、吐き気、体温、飲水できるかを確認してください。
室内や夜間でも重症化する
熱中症は屋外だけでなく、室内や夜間にも起こります。
特に高齢者は、暑さや喉の渇きを感じにくく、エアコンを使わずに過ごすことで脱水が進む場合があります。消防庁でも、高温多湿の室内で過ごす高齢者や、車内に残された子どもにも熱中症が起こるとされています。
夜になっても室温が下がらない日は、就寝中にも体温が上昇します。寝る前に水分を取り、エアコンや除湿機を適切に使用してください。
熱中症になりやすい人
- 高齢者
- 乳幼児や子ども
- 肥満がある人
- 暑さに慣れていない人
- 睡眠不足や二日酔いの人
- 発熱、下痢、食欲不振がある人
- 心臓病、腎臓病、糖尿病、高血圧がある人
- 利尿薬や発汗に影響する薬を使用している人
一部の利尿薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などは、水分量や発汗、体温調節へ影響する可能性があります。厚生労働省でも、持病や服用薬によって熱中症の発症リスクが高まる場合があるとされています。
心臓病や腎臓病で水分・塩分制限を受けている人は、自己判断で経口補水液を大量に飲まないでください。
熱中症予防に必要なこと
喉が渇く前に水分を取る
起床後、外出前、運動前、休憩時、入浴前後、就寝前など、時間を決めて水分を取りましょう。
暑さ指数を確認する
暑さ指数(WBGT)は、気温だけでなく、湿度、日射、風などを含めて熱中症の危険度を示す指標です。
熱中症警戒情報が発表されている場合は、不要不急の外出や激しい運動を控え、涼しい環境で過ごすことが重要です。
エアコンを我慢しない
室内では、本人の暑さの感覚だけで判断せず、温度計や湿度計を確認します。
扇風機は空気を動かしますが、室温自体が高い場合は十分に身体を冷やせないことがあります。エアコンと組み合わせましょう。
個人輸入で熱中症対策商品を購入する場合
個人輸入代行では、経口補水用パウダー、電解質パウダー、携帯用の補水製品など、国内では取り扱いの少ない商品を比較できる場合があります。
持ち運びや長期保存がしやすく、容量や成分の選択肢が多い点はメリットです。
購入前には、次の項目を確認してください。
- ナトリウム量
- カリウム量
- 糖質量
- 1包を溶かす水の量
- 日常の運動用か脱水時用か
- 小児や高齢者の使用可否
- 腎臓病、心臓病、高血圧、糖尿病がある場合の注意
- 製造元と使用期限
海外製の補水用パウダーを、指定量より少ない水で濃く作らないでください。ナトリウムや糖分が過剰になる可能性があります。
また、意識障害やけいれんがある重症熱中症を、補水飲料やサプリメントだけで治療することはできません。
医療機関へ相談する目安
意識がはっきりしていて自力で水を飲める場合でも、次のような状態では受診を検討してください。
- 頭痛や吐き気が続く
- 嘔吐して十分に水分を取れない
- 強い倦怠感がある
- 尿量が極端に減っている
- 冷却しても改善しない
- 翌日も強いめまいやだるさが残る
- 高齢者や小さな子どもである
- 心臓病、腎臓病、糖尿病などの持病がある
意識がおかしい、自力で水を飲めない、けいれんがある場合は、医療機関へ相談する段階ではなく、直ちに119番通報が必要です。
まとめ
熱中症は、めまい、立ちくらみ、こむら返りなどの軽症から始まり、頭痛、吐き気、強い倦怠感、意識障害へ進むことがあります。
軽い症状であっても、すぐに涼しい場所へ移動し、衣服を緩め、首、脇の下、足の付け根などを冷やしてください。
意識がはっきりして自力で飲める場合は、経口補水液などを少量ずつ補給します。
呼びかけへの反応がおかしい、自力で水が飲めない、けいれんしている、まっすぐ歩けない場合は、迷わず救急車を呼んでください。
救急車を待つ間も、身体を水で濡らして風を当てるなど、積極的な冷却を続けることが重要です。

