片頭痛の前に目がチカチカするのはなぜ?閃輝暗点を解説
医師・薬剤師監修
「突然、目の前がチカチカする」「ギザギザした光が見えたあとに頭痛が始まる」という経験がある方は、片頭痛の前兆である閃輝暗点(せんきあんてん)の可能性があります。
結論からいうと、閃輝暗点は、目そのものの異常というより、脳の視覚を処理する部分で一時的な神経活動の変化が起こることで生じると考えられています。
光がチカチカする、ギザギザした線が広がる、視野の一部が見えにくくなるなどが典型的で、多くは5〜60分程度で自然に消えます。片頭痛のオーラは視覚症状が最も多く、頭痛の前または頭痛と同時に現れることがあります。
ただし、片目だけ突然見えなくなる、初めて強い視覚異常が出た、手足の麻痺や言葉が出にくい症状を伴う場合は、片頭痛と自己判断しないことが重要です。
閃輝暗点とは?
閃輝暗点は、片頭痛に伴う「オーラ」と呼ばれる一時的な神経症状のひとつです。
見え方には個人差がありますが、次のような症状がよくみられます。
・キラキラ、チカチカした光が見える
・ギザギザした線が現れる
・光の輪や幾何学模様のようなものが広がる
・視野の一部分が欠ける
・見えにくい部分の周囲が光って見える
視覚症状は突然完成した形で現れるというより、数分かけて徐々に広がっていくことが典型的です。
なぜ目がチカチカするの?
片頭痛のオーラには、「皮質拡延性抑制(Cortical Spreading Depression)」と呼ばれる現象が関係すると考えられています。
これは、脳の神経細胞の電気的・化学的な活動変化が波のようにゆっくり広がっていく現象です。
視覚を処理する後頭葉の視覚野にこの変化が起こると、実際には光がないのに光が見えたり、視野の一部が見えにくくなったりします。
つまり、閃輝暗点は「目の前で光っている」のではなく、脳が視覚情報を処理する過程で一時的な変化が起こっている状態です。
閃輝暗点は片目?両目?
典型的な片頭痛の視覚オーラは、脳の視覚野で起こるため、基本的には両目の視野に影響します。
ただし、自分では「左目だけに見える」「右目だけがおかしい」と感じることがあります。
片方ずつ目を閉じて確認すると、実際には両目で同じ側の視野が見えにくくなっていることがあります。
本当に片目だけの視力低下や視野異常であれば、網膜や眼の血管など別の病気の可能性があるため注意が必要です。
どのくらい続く?
片頭痛のオーラは、一般的に5〜60分程度続きます。
視野の中央付近から始まり、徐々に外側へ移動したり広がったりして、その後消えていくことがあります。
数秒だけ一瞬光る、あるいは数時間以上ずっと続く場合は、典型的な閃輝暗点とは異なる可能性があります。
閃輝暗点のあと必ず頭痛になる?
いいえ。
多くの場合、視覚症状が消え始めたころや、その後1時間以内に片頭痛が起こります。
しかし、オーラだけが出て頭痛が続かないこともあります。これは「頭痛を伴わない片頭痛オーラ」などと呼ばれることがあります。
「頭が痛くならなかったから片頭痛ではない」とは限りません。
片頭痛の前兆と「予兆」は違う?
片頭痛では、頭痛の1〜2日前から眠気、あくび、首のこり、食欲変化、気分の変化などを感じることがあります。
これらは「予兆」と呼ばれ、閃輝暗点などの「オーラ」とは別のものです。
閃輝暗点は、頭痛に近い時間帯に起こる一時的な神経症状という点が特徴です。
閃輝暗点が出たらどうすればいい?
まず安全な場所へ移動し、車の運転や危険な作業を中止しましょう。
視野が欠けている間は距離感や周囲の状況を把握しにくくなります。
できれば暗く静かな場所で休み、強い光や大きな音を避けます。
「見えにくいけれど数十分で治るから大丈夫」と考えて運転を続けるのは危険です。
頭痛薬は閃輝暗点の段階で飲む?
片頭痛治療薬は種類によって使用するタイミングが異なります。
一般的な鎮痛薬は頭痛が軽いうちに使用することがありますが、トリプタンなどでは、通常は頭痛が始まってから使用することが基本となります。
閃輝暗点が出たからといって、自己判断で毎回薬を早めに追加するのではなく、処方された薬の使用タイミングを医師・薬剤師へ確認しましょう。
光を見ることが原因?
強い光や点滅する光が、片頭痛発作のきっかけになる人はいます。
ただし、光を見たことで「目が壊れて閃輝暗点になる」というわけではありません。
睡眠不足、空腹、ストレス、天候変化、月経、アルコールなども片頭痛の誘因になることがあります。
発作が起きる前の生活状況を記録すると、自分のトリガーが分かることがあります。
寝不足で閃輝暗点が出やすくなる?
睡眠不足や睡眠時間の大きな変化は、片頭痛を誘発する要因のひとつです。
平日に寝不足が続き、休日に長時間寝ると発作が出る人もいます。
片頭痛対策では、単に長く寝ることより、就寝・起床時間をできるだけ安定させることが大切です。
スマホの見すぎが原因になる?
スマートフォンそのものが閃輝暗点の直接原因とは言えません。
ただし、長時間画面を見続けることによる眼精疲労、強い光、睡眠不足などが片頭痛のきっかけになる可能性があります。
画面を見ると毎回片頭痛が悪化する人は、明るさや使用時間を調整してみましょう。
閃輝暗点と飛蚊症は違う?
違います。
飛蚊症では、「黒い点」「糸くず」「虫」のようなものが視線を動かすと一緒についてくるように見えます。
一方、閃輝暗点では、光るギザギザや点滅する模様、視野の欠けなどが徐々に広がることが特徴です。
突然大量の飛蚊症が出た、稲妻のような光が繰り返し見える、視野にカーテンがかかったように見える場合は、網膜裂孔や網膜剥離などを確認する必要があります。
片目だけ突然見えなくなったら?
典型的な片頭痛オーラではなく、眼や網膜、血管の病気が関係している可能性があります。
網膜片頭痛という病態もありますが、片目だけの視力低下には別の重大な原因もあるため、自己判断は危険です。
片目だけ突然暗くなった、視力が急に落ちた場合は、片頭痛だと思い込まず早めに医療機関へ相談してください。
脳梗塞との違いは?
片頭痛オーラと脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)は、症状が似ることがあります。
典型的な片頭痛オーラでは、症状が数分かけて徐々に広がり、60分以内に改善することが多いです。
一方、脳血管障害では突然症状が完成することがあります。
ただし、症状だけで完全に区別できるわけではありません。
初めての視覚異常に加えて、片側の手足が動かしにくい、顔がゆがむ、言葉が出ない、ろれつが回らないなどがある場合は速やかな医療対応が必要です。
50歳を過ぎて初めて出た場合は?
若い頃から同じような閃輝暗点を繰り返している人と、50歳以降になって初めて視覚症状が出た人では考え方が異なります。
高い年齢で初めてオーラ様症状が出た場合は、眼疾患や脳血管障害など他の原因を除外することが重要です。
「片頭痛だろう」と自己診断せず、一度医療機関で確認しましょう。
頭痛がいつもと違う場合も注意
これまで片頭痛があった人でも、症状のパターンが急に変わった場合は注意が必要です。
今までなかった視覚症状が加わった、閃輝暗点が1時間以上続く、急に非常に強い頭痛が起こったなどの場合は、別の病気がないか確認します。
「いつもの片頭痛だから」と考えて、明らかに違う症状を放置しないことが大切です。
前兆のある片頭痛と低用量ピルには注意
前兆を伴う片頭痛がある人では、エストロゲンを含む配合型低用量ピルが適さないことがあります。
脳梗塞などのリスクを考慮する必要があるためです。
低用量ピルを服用していて初めて閃輝暗点のような症状が出た場合は、自己判断でそのまま使用を続けず処方医へ相談してください。
閃輝暗点を予防するには?
発作のきっかけには個人差がありますが、睡眠不足を避ける、食事を抜かない、過度な飲酒を控える、生活リズムを整えるなどが基本です。
発作の回数が多い場合は、片頭痛の予防薬が検討されることもあります。
いつ発作が起こったか、睡眠、食事、月経、天候などを頭痛日記に記録しておくと、診察にも役立ちます。
閃輝暗点が頻繁に起こる場合は?
月に何度も起こる、仕事や運転に支障が出る、頭痛が非常に強い場合は医療機関へ相談しましょう。
神経内科、脳神経内科、頭痛外来などで相談できます。
片頭痛は症状や経過から診断することが多く、必要に応じて眼科検査や画像検査などで別の病気を除外します。
まとめ
片頭痛の前に目がチカチカする閃輝暗点は、脳の視覚野で一時的な神経活動の変化が広がることによって起こると考えられています。
ギザギザした光、キラキラした模様、視野の一部が見えにくくなるなどの症状が、数分かけて広がり、多くは5〜60分程度で消失します。
閃輝暗点のあとに片頭痛が起こることが多いものの、頭痛を伴わないケースもあります。
一方、片目だけ突然見えなくなる、初めて強い症状が出た、1時間以上続く、麻痺や言葉の異常を伴う場合は、眼疾患や脳血管障害などを除外する必要があります。
視覚症状を繰り返す場合は、症状が出た時間や続いた長さ、頭痛との関係を記録し、医療機関で相談しましょう。

