脇汗を止める方法ってあるの?制汗剤を塗り忘れたときの対処法3選
監修:医師・薬剤師監修
外出先で制汗剤を塗り忘れたことに気づき、脇汗が服に広がって焦った経験がある人もいるでしょう。
インターネットでは「胸をつまむ」「脇の下を強く押す」「ツボを刺激する」といった方法が紹介されることもありますが、すぐに脇汗を止められると裏付けられた方法ではありません。
すでに出ている脇汗を、その場で完全に止める確実な方法はありません。しかし、体温と緊張を下げる、汗を拭いて衣類へ染み込ませない、汗を増やす刺激を避けることで、汗の量や見た目を抑えやすくなります。
この記事では、制汗剤を塗り忘れたときに実践できる対処法を3つに絞って解説します。脇汗が日常生活へ支障を与えている場合に受けられる医療機関での治療についても紹介します。
脇汗が出る仕組み
汗には、体温を下げるために出る温熱性発汗と、緊張や不安によって出る精神性発汗があります。
気温が高いときや運動後は、汗が皮膚から蒸発する際に熱を奪い、体温の上昇を防ぎます。一方、面接、会議、発表、人との会話などで緊張したときは、交感神経が活発になり、脇や手のひらなどに汗をかくことがあります。
脇汗は、気温や運動だけでなく、次のような要因でも増えます。
- 精神的な緊張や不安
- 暑く湿度の高い環境
- 辛い料理や熱い飲み物
- コーヒーやエナジードリンク
- 飲酒
- 睡眠不足や疲労
- 更年期などによるホルモン変化
- 甲状腺疾患や低血糖などの病気
- 服用している薬の影響
日本皮膚科学会では、温熱や精神的な負荷の有無にかかわらず、脇など限られた部位に日常生活へ支障を与えるほど汗が出る状態を、原発性局所多汗症として扱っています。
対処法1:涼しい場所へ移動して体温を下げる
暑さによって脇汗が増えている場合は、まず体温が上がり続ける環境から離れます。
屋外にいるなら日陰や冷房の効いた建物へ入り、上着を脱いだり、衣類の首元を緩めたりして熱を逃がしましょう。
冷たいペットボトルや、布で包んだ保冷剤がある場合は、首の横など太い血管が通る場所へ短時間当てると、暑さによる不快感を軽減しやすくなります。
ただし、冷たいものを脇へ長時間直接当てると、皮膚を傷める可能性があります。凍った保冷剤を直接肌へ当てたり、感覚がなくなるまで冷やしたりしないでください。
すぐにできる手順
- 日陰や冷房の効いた場所へ移動する
- 上着を脱ぎ、首元や袖口を緩める
- 水分を少しずつ取る
- うちわやハンディファンで風を当てる
- 呼吸と動悸が落ち着くまで数分休む
暑さによる汗は、体を冷やす必要があるというサインです。見た目を気にして汗を無理に止めようとするより、熱中症を防ぐ行動を優先してください。
大量の発汗に加えて、頭痛、吐き気、めまい、筋肉のけいれん、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、熱中症の可能性があります。
対処法2:汗を押さえて拭き、汗取り用品で服を守る
すでに皮膚へ出た汗を放置すると、衣類へ染み込み、汗染みが広がります。汗をすぐに拭き取ることで、見た目と蒸れを軽減できます。
拭くときは、タオルやハンカチを脇へ当て、こすらずに押さえるように水分を吸い取ります。強くこすると皮膚が刺激され、赤みやかゆみの原因になります。
可能であれば、トイレなどで脇を水や濡れたタオルで清潔にし、十分に乾かしてから制汗剤を使用します。汗で濡れた皮膚へ重ね塗りすると、製品が密着しにくくなることがあります。
制汗剤が手元にない場合に使えるもの
- ハンカチや吸水性の高いタオル
- 市販の脇汗パッド
- 衣類へ貼る汗取りシート
- 交換用の肌着やシャツ
- 速乾性のあるインナー
汗取りパッドは汗そのものを止める製品ではありませんが、余分な汗を吸収し、シャツへ染み出すのを防ぐのに役立ちます。海外の医療機関でも、衣類を守る方法として脇汗用パッドの使用が案内されています。
脇汗を拭いたあとは、皮膚を乾いた状態に保つことが重要です。湿ったままにすると、摩擦によるかぶれや細菌の増殖によるにおいが起こりやすくなります。
対処法3:ゆっくり呼吸し、汗を増やす刺激を避ける
緊張したときの脇汗は、「汗が見えたらどうしよう」という不安によってさらに強くなることがあります。
この悪循環を軽減するには、数分間その場を離れ、ゆっくり呼吸して交感神経の高ぶりを落ち着かせます。
呼吸の方法
- 肩の力を抜く
- 鼻から3~4秒かけて息を吸う
- 口から6~8秒かけてゆっくり吐く
- 無理のない範囲で5回ほど繰り返す
息を長く止めたり、苦しくなるまで深呼吸したりする必要はありません。めまいがする場合は中止し、自然な呼吸へ戻してください。
また、汗が気になる場面では、直前のコーヒー、エナジードリンク、辛い料理、熱いスープ、飲酒を控えます。AAD(アメリカ皮膚科学会)は、多汗症の誘因として暑さ、辛い飲食物、カフェインなどを挙げています。
呼吸法は汗腺を直接閉じる方法ではありませんが、緊張によって増えている発汗を落ち着かせる補助になります。
胸をつまむと脇汗が止まるって本当?
「胸の上部や脇の周辺を強くつまむと汗が止まる」「特定の場所を圧迫すると反対側の発汗が減る」といった情報があります。
しかし、日常的な脇汗対策として、胸をつまむ方法の有効性や安全性を示す十分な医学的根拠はありません。
一時的に汗が減ったように感じても、圧迫によって汗を拭き取った、注意が別の場所へ向いた、緊張が少し落ち着いたといった影響の可能性があります。
強くつまむと、内出血、痛み、皮膚炎などを起こすこともあります。乳房や脇にしこり、腫れ、痛みがある人は、刺激を加えないでください。
胸をつまむ方法を、制汗剤や多汗症治療の代わりにすることはおすすめできません。
デオドラントと制汗剤は違う
脇用製品には、デオドラントと制汗剤があります。
| 種類 | 主な目的 |
|---|---|
| デオドラント | 汗のにおいを抑える、香りで目立ちにくくする |
| 制汗剤 | 汗の出口へ作用し、発汗量を抑える |
におい対策だけの商品では、汗の量を十分に抑えられないことがあります。AAD(アメリカ皮膚科学会)も、デオドラントは主ににおいへ対応し、制汗剤は汗を減らすために使用されると解説しています。
汗を抑えたい場合は、商品表示に「制汗」または「antiperspirant」と記載されているものを選びましょう。
制汗剤を効果的に使うポイント
制汗剤は、汗をかいている最中より、皮膚が清潔で乾いているときに使用した方が密着しやすくなります。
製品の説明に従う必要がありますが、塩化アルミニウムなどを含む制汗剤は、夜の乾いた皮膚へ使用し、朝に洗い流す方法が用いられることがあります。日本皮膚科学会でも、塩化アルミニウム製剤を就寝前に外用する治療法が紹介されています。
- 入浴後すぐではなく、脇が十分に乾いてから使う
- 汗をかいている場合は、拭いて乾かしてから使う
- 剃毛直後や傷のある皮膚には使用しない
- 赤みや強いかゆみが出たら使用を中止する
- 製品ごとの使用回数を守る
市販品で改善しない場合は、濃度を自己判断で上げたり、何度も重ね塗りしたりせず、皮膚科へ相談してください。
脇汗が多い場合は治療できる
脇汗によって毎日服を着替える、書類へ汗が落ちる、人前に出るのを避けるなど、生活へ支障がある場合は原発性腋窩多汗症の可能性があります。
日本では、原発性腋窩多汗症に対して、汗を出す神経伝達を抑える外用抗コリン薬が処方されています。日本皮膚科学会では、ソフピロニウム臭化物ゲルやグリコピロニウムトシル酸塩ワイプ製剤が紹介されています。
症状に応じて、次のような治療が検討されます。
- 医療用の外用抗コリン薬
- 塩化アルミニウム製剤
- ボツリヌス毒素製剤の注射
- 内服薬
- 医療機器を用いた治療
治療には、口の渇き、皮膚刺激、目への付着による症状などの注意点があります。医師の診察を受け、正しい使用方法を確認してください。
急に汗が増えた場合は病気にも注意
以前は気にならなかったのに急に脇汗が増えた場合や、脇だけでなく全身に汗をかく場合は、別の病気や薬が影響している可能性があります。
次のような症状がある場合は医療機関へ相談してください。
- 夜中に寝具が濡れるほど汗をかく
- 動悸、手の震え、体重減少がある
- 冷や汗とともに空腹感やふらつきがある
- 発熱が続いている
- 新しい薬を飲み始めてから汗が増えた
- 片側の脇だけ急に汗が増えた
甲状腺機能亢進症、低血糖、感染症、更年期、薬の副作用などでも発汗が増える場合があります。
よくある質問
脇を強く締めれば汗は止まりますか?
一時的に皮膚表面の汗を押さえることはできますが、汗腺から出る汗を確実に止める方法ではありません。強く圧迫すると、皮膚の痛みやかぶれにつながります。
冷たいペットボトルを脇に挟むとよいですか?
暑さによる不快感を軽くする可能性はありますが、直接長時間挟むと低温やけどなどの原因になります。首元などを布越しに短時間冷やす方が安全です。
汗拭きシートだけで脇汗を止められますか?
汗やにおいを拭き取る効果はありますが、制汗成分がない製品では、発汗量そのものは抑えられません。
脇汗が多いのはワキガですか?
脇汗が多いこととワキガは同じではありません。ワキガは、アポクリン汗腺から出た分泌物が皮膚の細菌によって分解され、特有のにおいが生じる状態です。
まとめ
制汗剤を塗り忘れて脇汗が止まらない場合は、涼しい場所で体温を下げる、汗を押さえて拭き汗取りパッドを使う、ゆっくり呼吸してカフェインや辛い物を避ける、という3つの対処が現実的です。
胸をつまむ、脇を強く圧迫するといった方法には、脇汗を確実に止める十分な医学的根拠がありません。強い刺激は内出血や皮膚炎の原因になるため避けましょう。
制汗剤は、汗で濡れた皮膚へ何度も重ねるのではなく、清潔で乾いた皮膚へ製品の用法どおり使用することが大切です。
脇汗によって服を頻繁に着替える、人前へ出るのがつらいなど、日常生活へ支障がある場合は、我慢せず皮膚科へ相談してください。原発性腋窩多汗症であれば、保険適用の外用薬などを使用できる場合があります。

