更年期で夜中に目が覚めるのはなぜ?不眠との関係を解説
監修:医師・薬剤師監修
「夜中の2時や3時に目が覚める」「一度起きると、その後なかなか眠れない」「寝汗で目が覚めて、翌朝まで疲れが残る」と悩んでいませんか。
40代後半から50代にかけて夜中に目が覚めるようになった場合、更年期によるホルモンの変化が関係している可能性があります。
更年期には、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が大きく変動しながら低下します。その影響でホットフラッシュや寝汗、動悸、不安感などが起こり、睡眠が途中で分断されやすくなります。
更年期の不眠は、単に「年齢とともに眠れなくなった」だけではなく、ホルモン変化と身体症状、心理的ストレスが重なって起こることがあります。
この記事では、更年期に夜中に目が覚める理由、不眠の種類、生活習慣の対策、ホルモン補充療法や睡眠薬などの治療方法について分かりやすく解説します。
更年期に起こりやすい不眠とは?
不眠にはいくつかのタイプがあります。
| 不眠の種類 | 主な症状 |
|---|---|
| 入眠困難 | 布団に入ってもなかなか眠れない |
| 中途覚醒 | 夜中に何度も目が覚める |
| 早朝覚醒 | 予定より早く目覚め、その後眠れない |
| 熟眠障害 | 眠ったはずなのに休んだ感じがしない |
更年期では、寝つきの悪さだけでなく、夜中に何度も目が覚める中途覚醒が目立つことがあります。
眠りについてから2~3時間後に目が覚める、寝汗でパジャマが濡れて起きる、トイレに行った後に眠れなくなるといった状態です。
睡眠時間を合計すると6~7時間あっても、途中で何度も目覚めていると、深く眠った感覚を得られない場合があります。
エストロゲンの変動が睡眠へ影響する
更年期は一般的に、閉経の前後約5年間を合わせた約10年間を指します。
この時期には、卵巣の働きが低下し、エストロゲンの分泌量が大きく揺れ動きながら減少していきます。
エストロゲンは月経や妊娠だけでなく、脳の自律神経、体温調節、気分、睡眠にも関係しています。
エストロゲンが不安定になると、脳が身体の温度を一定に保つ働きが乱れやすくなります。わずかな体温変化でも身体が「暑すぎる」と判断し、血管を広げて大量の汗を出すことがあります。
更年期に夜中に目が覚める背景には、ホルモン低下そのものだけでなく、ホットフラッシュや寝汗による睡眠の中断が関係しています。
ホットフラッシュと寝汗で目が覚める
ホットフラッシュとは、周囲の気温とは関係なく、顔、首、胸などが突然熱くなる症状です。
夜間に起こるホットフラッシュは寝汗とも呼ばれます。寝ている途中に身体が急に熱くなり、汗でパジャマや寝具が濡れて目が覚める場合があります。
汗が引いた後は身体が冷え、寒さでさらに眠れなくなることもあります。
一晩に何度もホットフラッシュが起こると、本人は長時間眠っているつもりでも、睡眠が細かく分断されます。その結果、翌朝の疲労感、頭痛、集中力低下、イライラなどにつながります。
不安感やイライラも中途覚醒を悪化させる
更年期には、イライラ、不安感、気分の落ち込み、焦りなどの精神症状が現れることがあります。
夜中に目が覚めたとき、「明日の仕事に影響する」「早く眠らなければ」と考えるほど、脳が興奮して眠りに戻りにくくなります。
眠れない時間に仕事や家族の悩みを考え始めると、交感神経が活発になり、心拍数が上がってさらに目が冴えることがあります。
「眠らなければいけない」と強く意識すること自体が、不眠を長引かせる原因になる場合があります。
夜間の頻尿で目が覚める場合もある
更年期以降は、膀胱や尿道周辺の組織にも変化が起こります。
エストロゲンが低下すると、膣や尿道周辺の粘膜が薄く乾燥しやすくなり、頻尿、尿意切迫感、排尿時の違和感などが現れることがあります。
夜中に尿意で目が覚め、その後眠れなくなる場合は、頻尿が不眠を悪化させている可能性があります。
ただし、就寝前の水分の摂りすぎ、アルコール、カフェイン、糖尿病、膀胱炎なども夜間頻尿の原因になります。
排尿時の痛み、血尿、急に頻尿が強くなった場合は、婦人科や泌尿器科へ相談しましょう。
更年期に睡眠時無呼吸症候群が増えることもある
夜中に目が覚める原因は、更年期症状だけとは限りません。
閉経後は体重や脂肪のつき方が変わり、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高くなることがあります。
睡眠時無呼吸症候群では、眠っている間に呼吸が何度も止まり、脳が呼吸を再開させるために小さな覚醒を繰り返します。
本人は目覚めたことを覚えていない場合もありますが、眠りが浅くなり、朝起きても疲れが取れません。
大きないびき、睡眠中の無呼吸、起床時の頭痛、口の渇き、日中の強い眠気がある場合は、睡眠外来や呼吸器内科で検査を受けましょう。
むずむず脚症候群にも注意する
布団に入ると脚がむずむずする、じっとしていられない、脚を動かすと楽になる場合は、むずむず脚症候群が関係している可能性があります。
症状は夕方から夜に強くなり、寝つきを悪くしたり、夜中に目覚める原因になったりします。
鉄分不足が関係することもあるため、月経量が多い女性や貧血がある人は注意が必要です。
自己判断で鉄のサプリメントを大量に摂るのではなく、医療機関で血液検査を受けて原因を確認しましょう。
夜中に目が覚めたときの対処方法
夜中に目が覚めたとき、時計やスマートフォンを何度も確認するのはおすすめできません。
「もう3時だ」「あと3時間しか眠れない」と時間を意識すると、不安が強くなって眠りに戻りにくくなります。
しばらく横になっても眠れない場合は、一度ベッドから出て、暗めの部屋で静かに過ごしましょう。
明るい照明をつける、仕事を始める、SNSや動画を見ると、脳が覚醒しやすくなります。紙の本を少し読む、ゆっくり呼吸するなど、刺激の少ない行動を選びます。
眠気が戻ってからベッドへ戻ることを繰り返すと、「ベッドは眠る場所」という感覚を保ちやすくなります。
寝汗対策として寝室を調整する
ホットフラッシュや寝汗がある人は、寝室を少し涼しく保ちましょう。
暑い時期はエアコンを無理に切らず、身体に冷風が直接当たらないよう風向きを調整します。
パジャマや寝具には、汗を吸って乾きやすい素材を選びましょう。厚い布団を一枚使うより、薄手の寝具を重ねた方が、暑さや寒さに合わせて調整しやすくなります。
枕元に着替えやタオルを準備しておくと、寝汗をかいたときに短時間で対応できます。
夕方以降のカフェインを控える
コーヒー、緑茶、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、寝つきを悪くし、眠りを浅くすることがあります。
更年期になってから、以前は問題なかった夕食後のコーヒーで眠れなくなる人もいます。
不眠がある場合は、午後から夕方以降のカフェインを減らし、変化を確認してみましょう。
チョコレート、コーラ、栄養ドリンクなどにもカフェインが含まれる場合があります。
寝酒は中途覚醒を増やす
お酒を飲むと眠くなるため、不眠対策として寝酒をする人もいます。
アルコールは一時的に寝つきをよくしますが、時間がたつと眠りが浅くなり、夜中や早朝に目が覚めやすくなります。
また、アルコールは血管を広げるため、ほてりや寝汗が強くなる人もいます。
利尿作用によって夜中のトイレも増え、いびきや睡眠時無呼吸を悪化させる可能性があります。
更年期の中途覚醒を改善するために寝酒を使うと、反対に睡眠の質を下げる場合があります。
ホルモン補充療法で改善することもある
ホットフラッシュや寝汗が原因で眠れない場合は、ホルモン補充療法(HRT)が選択肢になります。
HRTは、低下したエストロゲンを薬で補う治療です。飲み薬、貼り薬、塗り薬などがあります。
ホットフラッシュや寝汗が軽くなることで、夜中に目覚める回数が減り、睡眠が改善する場合があります。
子宮がある人では、一般的に子宮内膜への影響を抑えるため、黄体ホルモンを組み合わせます。
ただし、乳がんや子宮内膜がんの病歴、血栓症、重い肝臓病などがある人には適さない場合があります。
HRTは睡眠薬ではなく、更年期症状の原因となるホルモン低下へ働きかける治療です。
漢方薬が選択肢になる場合
更年期の不眠では、体質やほかの症状に合わせて漢方薬が使われることもあります。
不眠だけでなく、冷え、のぼせ、イライラ、不安感、めまい、肩こりなどを総合的に確認して選びます。
漢方薬は自然由来だから副作用がないわけではありません。
むくみ、血圧上昇、筋力低下、肝機能障害などが起こることもあるため、複数の漢方薬を自己判断で重ねて使用しないようにしましょう。
睡眠薬を使う場合の考え方
生活習慣を整えても不眠が続き、日中の仕事や家事に支障が出ている場合は、睡眠薬が選択肢になります。
睡眠薬には、寝つきを助けるタイプ、中途覚醒を抑えるタイプ、覚醒を促すオレキシンの働きを抑えるタイプなどがあります。
更年期で夜中に目が覚める人には、寝つきだけでなく、朝まで作用が続くか、翌日に眠気が残らないかも重要です。
作用時間が短すぎる薬では、寝つけても夜中に目が覚める場合があります。反対に作用時間が長すぎると、翌朝の眠気やふらつきにつながる可能性があります。
薬の強さだけで選ばず、中途覚醒、早朝覚醒、寝つきの悪さなど、自分の不眠タイプに合わせて選ぶことが大切です。
睡眠薬や更年期治療薬を個人輸入する場合
病院へ通う時間が取れない、海外で流通している睡眠薬や更年期治療薬を比較したいという理由から、個人輸入代行サイトを利用する人もいます。
個人輸入では、国内では入手しにくい商品や剤形を自宅から注文できる点がメリットです。
ただし、更年期の不眠は、ホットフラッシュ、不安感、頻尿、睡眠時無呼吸症候群など、原因によって必要な治療が異なります。
睡眠薬だけを使用しても、寝汗やホットフラッシュが続いていれば、十分な改善を得られない可能性があります。
また、ホルモン製剤は子宮の有無、病歴、血栓症リスクによって選び方が変わります。
個人輸入を利用する場合も、有効成分、作用時間、用法・用量、禁忌、併用薬を確認し、自己判断で増量や複数薬の併用をしないことが重要です。
医療機関へ相談した方がよい目安
夜中に目が覚める状態が一時的で、日中に影響がなければ、生活習慣を見直しながら様子をみる方法があります。
一方で、次のような状態がある場合は、婦人科、睡眠外来、心療内科などへの相談を検討してください。
- 夜中に何度も目が覚める状態が長く続く
- 寝汗でパジャマや寝具が濡れる
- 日中に強い眠気や疲労感がある
- 仕事や家事に集中できない
- 気分の落ち込みや不安感が強い
- 大きないびきや無呼吸を指摘されている
- 脚のむずむず感で眠れない
- 動悸や胸痛で目が覚める
- 閉経後に出血がある
- 睡眠薬やお酒がないと眠れない
特に閉経後の出血や強い胸痛、呼吸困難がある場合は、更年期だけと判断せず早めに受診してください。
まとめ|更年期の中途覚醒は原因に合わせて対策しよう
更年期に夜中に目が覚める主な理由には、エストロゲンの変動、ホットフラッシュ、寝汗、不安感、夜間頻尿などがあります。
一方で、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、甲状腺疾患、うつ病など、別の原因が隠れていることもあります。
まずは寝室を涼しく保ち、夕方以降のカフェイン、寝酒、就寝前のスマートフォンを減らしましょう。
ホットフラッシュや寝汗が強い場合はHRT、複数の不調がある場合は漢方薬、不眠が長引く場合は睡眠薬が選択肢になります。
更年期の不眠を「年齢だから仕方ない」と我慢せず、夜中に目覚める原因を整理して、自分に合った対策や治療を選ぶことが大切です。

