睡眠薬を飲んだあとスマホを見続けるとどうなる?就寝前行動との関係
医師・薬剤師監修
「睡眠薬を飲んだけれど、まだ眠くならないからスマホを見ている」「薬を飲んだあと、ベッドでSNSや動画を見るのが習慣になっている」という方もいるのではないでしょうか。
睡眠薬を服用したあとにスマホを見ること自体で、薬の効果が突然なくなるわけではありません。しかし、スマートフォンの光や情報によって入眠が妨げられる可能性があるうえ、薬が効き始めた状態で起き続けることで、眠気・ふらつき・判断力低下・記憶への影響などが問題になることがあります。
睡眠薬は、基本的に「服用したら眠る準備を終えて、そのまま就寝する」ことを意識することが大切です。
この記事では、睡眠薬を飲んだあとにスマホを見続けた場合に考えられる影響と、睡眠薬を服用するときの就寝前行動について分かりやすく解説します。
睡眠薬を飲んだあとスマホを見続けるとどうなる?
睡眠薬を服用したあともスマホを見続けると、「スマホによって薬が無効になる」という単純な関係ではありません。
問題になるのは、睡眠を促す薬が作用し始めているにもかかわらず、脳や身体を覚醒させる行動を続けてしまうことです。
| 考えられる影響 | 理由 |
|---|---|
| 寝つきが悪くなる | 画面の光やSNS・動画などの刺激によって覚醒が続く可能性がある |
| 強い眠気の中でスマホを操作する | 睡眠薬が効き始めても起き続けているため |
| 判断力・注意力が低下する | 薬による鎮静作用が現れている可能性がある |
| 操作した内容を覚えていないことがある | 一部の睡眠薬では記憶への影響が報告されている |
| 翌朝に眠気が残る | スマホによって就寝時刻が遅れ、十分な睡眠時間を確保できない可能性がある |
特に注意したいのは、「まだ起きていられるから薬が効いていない」と判断しないことです。眠気を自覚する前から注意力や判断力などに影響が出ている可能性もあります。

スマホを見ると睡眠薬の効果が弱くなる?
スマホを見たからといって、睡眠薬の有効成分が分解されて薬そのものの作用がなくなるわけではありません。
一方で、就寝前のスマホ使用は「眠るための環境」という点では好ましくない場合があります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして眠ることが良い睡眠につながるとされています。また、スマートフォンなどから発せられる青色光は、夜間のメラトニン分泌を抑え、眠気を低下させたり寝つきを妨げたりする可能性があります。
さらに、問題は光だけではありません。
- SNSの投稿を次々と確認する
- 短い動画を連続して見る
- ゲームをする
- 仕事のメールを確認する
- 刺激の強いニュースを見る
こうした行動は、気持ちを覚醒させたり「あと5分だけ」と就寝時間を遅らせたりする原因になります。
つまり、睡眠薬で眠りやすい状態を作ろうとしている一方で、スマホによって眠りに入りにくい行動を続けている状態になり得るのです。
睡眠薬が効いた状態でスマホを操作するリスク
睡眠薬の種類によって作用や副作用は異なりますが、服用後に起き続ける場合は、単に「寝つきが遅くなる」だけではない点に注意が必要です。
眠気やふらつきが出ることがある
睡眠薬には脳の覚醒を抑えたり、睡眠を促したりする作用があります。そのため、服用後に起きていると眠気やふらつきが現れることがあります。
スマホを見終わってからトイレに行ったり、水を飲みに移動したりするときには、転倒にも注意が必要です。特に高齢者では、睡眠薬によるふらつきが転倒につながる可能性があります。
メッセージや操作内容を覚えていないことがある
一部の睡眠薬では、服用後の出来事を十分に記憶できない「前向性健忘」が報告されています。
PMDAの医薬品情報でも、睡眠薬の一部について、中途覚醒時の出来事を覚えていない、十分に覚醒しないまま行動してその内容を記憶していないといった事例が記載されています。
そのため、薬を飲んだあとにSNSへの投稿、メッセージの送信、ネットショッピングなどを行うことは避けた方がよいでしょう。

まれに「複雑睡眠行動」がみられる薬もある
ゾルピデムなど一部の睡眠薬では、完全に覚醒していない状態で歩く、食事をするなどの「複雑睡眠行動」が報告されています。
FDA(アメリカ食品医薬品局)は、ゾルピデム、エスゾピクロン、ザレプロンについて、まれではあるものの、睡眠中または十分に覚醒していない状態で複雑な行動をとる可能性があるとして注意喚起しています。
スマホを見ること自体が複雑睡眠行動を起こすと証明されているわけではありません。ただし、薬の作用が始まったあとも活動を続けることは避け、処方された睡眠薬の服用方法を守ることが重要です。
「眠くなるまでスマホを見る」は避けた方がよい?
「睡眠薬を飲んでもすぐ眠くならないから、眠気が来るまでスマホを見る」という人もいるでしょう。
しかし、薬によっては「就寝直前」に服用することが前提となっています。
FDA(アメリカ食品医薬品局)は、ゾルピデムなどについて、服用後すぐに就寝し、薬ごとに必要とされる睡眠時間を確保するよう注意を促しています。十分な睡眠時間を取れず早く起きると、眠気や記憶、注意力、身体の協調運動に問題が生じる可能性があります。
「薬を飲む→スマホを見る→眠くなったら寝る」ではなく、「寝る準備をすべて済ませる→薬を飲む→そのまま寝床に入る」という順番を基本にしましょう。
睡眠薬を飲む前に済ませておきたいこと
服用後にできるだけ活動しなくてもよい状態を作っておくと、就寝までの流れがスムーズになります。
- 歯磨きを済ませる
- トイレを済ませる
- 翌日のアラームを設定する
- 家族などへの連絡を済ませる
- 部屋の照明を暗くする
- スマホを手の届きにくい場所へ置く
アラーム目的でスマホを寝室に置く場合も、ベッドのすぐ横ではなく少し離れた場所に置く方法があります。
また、画面を暗くする「ナイトモード」は光刺激を抑える方法のひとつですが、SNSや動画などによる心理的な刺激や就寝時刻の遅れまで防げるわけではありません。

睡眠薬を飲んだのに眠れないときはどうする?
睡眠薬を服用しても眠れない日が続く場合、自己判断で追加服用するのは避けてください。
「効かないからもう1錠」と追加すると、薬の作用が強くなりすぎたり、翌朝まで眠気が残ったりする可能性があります。服用量や服用方法は処方された指示を守ることが基本です。
また、不眠の背景にはストレス、生活リズム、カフェインや飲酒、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群など、さまざまな原因が隠れていることがあります。
睡眠薬を適切に使用しているにもかかわらず十分な効果を感じられない場合は、薬を増やすのではなく、処方した医師や薬剤師へ相談しましょう。
こんな症状があったら医師・薬剤師に相談を
睡眠薬を飲んだあとに、次のようなことが繰り返し起きる場合は、医師や薬剤師へ相談してください。
- 服用後の行動を翌朝まったく覚えていない
- 家族から「夜中に変な行動をしていた」と指摘された
- 強いふらつきや転倒がある
- 翌日の強い眠気が続く
- 指示通り服用してもほとんど眠れない
- 自己判断で薬を追加したくなるほど効果を感じない
特に、十分に覚醒していない状態で歩き回る、食事をする、外出するなどの行動があった場合は、そのままにせず医療機関へ相談することが大切です。
まとめ
睡眠薬を飲んだあとにスマホを見ても、薬の効果そのものが直ちになくなるわけではありません。
しかし、スマホの光やコンテンツによる刺激は入眠を妨げる可能性があります。さらに、睡眠薬が効き始めた状態で起き続けることで、眠気、ふらつき、注意力の低下、記憶への影響などが問題になることもあります。
大切なのは、「薬を飲んでから寝る準備をする」のではなく、「寝る準備を済ませてから薬を飲む」ことです。
睡眠薬を服用したらスマホを見る時間ではなく、眠る時間に切り替えることを意識しましょう。
服用後の異常行動や記憶がない状態、強い翌朝の眠気などがある場合は、自己判断で薬を中止・増量せず、処方した医師または薬剤師に相談してください。

