鼻づまりで味や匂いが分からなくなるのはなぜ?嗅覚との関係
医師・薬剤師監修
風邪や花粉症で鼻がつまったとき、「食事の味がしない」「コーヒーの香りが分からない」と感じた経験がある方もいるのではないでしょうか。
鼻づまりが強くなると、においの成分が鼻の奥にある嗅覚のセンサーまで届きにくくなります。その結果、匂いだけでなく食べ物の「風味」まで感じにくくなることがあります。
鼻づまりで「味が分からない」と感じていても、実際には舌の味覚ではなく、嗅覚が低下しているケースが少なくありません。
この記事では、鼻づまりで匂いや味が分かりにくくなる仕組みや、嗅覚と味覚の違い、耳鼻咽喉科を受診した方がよいケースについて分かりやすく解説します。
鼻づまりで匂いが分からなくなるのはなぜ?
鼻の奥の天井付近には、「嗅粘膜」と呼ばれる、においを感じ取る部分があります。
私たちが息を吸うと、空気中のにおい分子が鼻の中へ入り、嗅粘膜へ届きます。そこで受け取られた情報が神経を通して脳へ伝わることで、「コーヒーの香り」「花の香り」などを認識しています。
ところが、風邪やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などで鼻の粘膜が腫れると、におい分子が嗅粘膜まで届きにくくなります。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会でも、鼻の粘膜が腫れることでにおい分子が嗅粘膜へ届かなくなり、匂いが分からなくなることがあると説明されています。

鼻づまりで「味まで分からない」と感じる理由
食べ物のおいしさは、舌で感じる「味覚」だけで決まるわけではありません。
私たちは食事をするとき、主に次のような情報を組み合わせて「味」を感じています。
| 感覚 | 主な役割 |
|---|---|
| 味覚 | 甘味・塩味・酸味・苦味・うま味を感じる |
| 嗅覚 | 食べ物特有の香りを感じる |
| 触覚 | 硬さ・なめらかさ・食感などを感じる |
| 温度感覚 | 温かい・冷たいなどを感じる |
例えば、舌だけでも砂糖の「甘い」という感覚は分かります。しかし、イチゴ味なのかリンゴ味なのかを判断するときには、香りの情報が大きく関わっています。
NIDCD(米国立聴覚・コミュニケーション障害研究所)でも、味と匂いは密接に関係しており、味がなくなったと思って受診した人の中には、実際には嗅覚の問題である人が多いとされています。
鼻づまりで食事が「味気ない」と感じるのは、味覚そのものがなくなったのではなく、香りの情報が減った結果であることが多いのです。
食べているときの香りは口から鼻へ抜けている
食べ物の香りは、鼻から息を吸ったときだけ感じているわけではありません。
食べ物をかむと、口の中から香りの成分が放出され、喉の奥を通って鼻の方へ抜けていきます。この香りを鼻の奥で感じる仕組みを「後鼻腔性嗅覚」と呼びます。
鼻づまりがあると、この通り道が狭くなり、食べ物の香りが嗅粘膜へ届きにくくなります。
NIDCDでも、食べ物をかんだときに発生する香りは喉から鼻へつながる通路を通って嗅覚を刺激し、この通路が鼻炎などで妨げられると風味を感じにくくなるとされています。
鼻をつまんで食べると食品の違いが分かりにくくなるのは、後鼻腔性嗅覚が働きにくくなるためです。

鼻づまりで味覚そのものが低下することもある?
多くの場合は嗅覚低下による「風味の低下」ですが、鼻づまりが続くことで口呼吸が増えると、味を感じにくくなることもあります。
口呼吸によって口の中が乾燥すると、食べ物の成分が唾液に溶けにくくなります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、口腔内の乾燥によって味の分子が唾液に溶けにくくなったり、舌の味蕾が影響を受けたりして、味を感じにくくなる場合があると説明されています。
ただし、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味そのものが全く分からない場合は、鼻づまり以外の原因も考える必要があります。
鼻づまりと嗅覚低下を起こしやすい原因
匂いが分かりにくくなる原因は、鼻づまりだけではありません。
特に多いのは、次のような鼻や上気道のトラブルです。
- 風邪などの上気道感染
- アレルギー性鼻炎・花粉症
- 副鼻腔炎
- 鼻ポリープ
NHS(英国国民保健サービス)でも、嗅覚低下の主な原因として風邪、インフルエンザ、COVID-19、副鼻腔炎、アレルギー、鼻ポリープなどが挙げられています。
副鼻腔炎では、鼻づまりだけでなく、頬や額の痛み、黄色や緑色の鼻水、嗅覚低下などを伴うことがあります。
鼻づまりが治れば匂いも元に戻る?
風邪や花粉症などによって一時的に鼻の通りが悪くなっているだけであれば、鼻づまりが改善すると嗅覚も戻ってくることがあります。
ただし、必ず「鼻づまりが治ればすぐ元通りになる」とは限りません。
風邪などの感染症では、鼻の通り道が腫れるだけでなく、嗅粘膜そのものに炎症や障害が起きる場合があります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会でも、ウイルスによって嗅粘膜が傷つき、鼻づまりが改善した後も匂いが分かりにくい状態が残ることがあるとされています。
そのため、鼻は通るようになったのに匂いだけが戻らない場合は、単なる鼻づまりではなく嗅覚障害が残っている可能性があります。
鼻づまりで味や匂いが分からないときの対処
風邪や花粉症など明らかな鼻づまりがある場合は、まず原因となっている鼻の症状を整えることが重要です。
- 十分に休息を取る
- 水分を適度に取る
- 室内の乾燥を避ける
- 鼻を強くかみすぎない
- 花粉やアレルゲンをできるだけ避ける
感染症やアレルギーによる嗅覚低下では、生理食塩水などを用いた鼻洗浄が役立つ場合もあります。NHSでも、感染やアレルギーによって嗅覚が低下している場合には、食塩水による鼻洗浄が役立つことがあるとしています。
ただし、市販の点鼻薬を長期間自己判断で使い続けるなど、原因に合わない対処は避けましょう。症状が強い場合には耳鼻咽喉科で原因を確認することが大切です。

こんな場合は耳鼻咽喉科へ
鼻づまりと一緒に味や匂いが分かりにくくなっても、多くは一時的ですが、次のような場合には耳鼻咽喉科への相談を検討しましょう。
- 鼻づまりが改善しても匂いが戻らない
- 嗅覚低下が数週間以上続いている
- ほとんど何の匂いも感じない
- 本来とは違う匂いに感じる
- 鼻づまりがないのに急に嗅覚が低下した
- 頭を強く打ったあとから匂いが分からない
- 片側だけ強い鼻づまりが続く
嗅覚障害には、鼻の炎症や感染だけでなく、頭部外傷、薬剤、加齢、まれに神経疾患などが関係する場合もあります。NIDCDでも、嗅覚障害には鼻腔内の病気だけでなく、頭部外傷や一部の薬剤、神経系の病気などさまざまな原因があるとされています。
また、嗅覚が低下すると、ガス漏れ、焦げた匂い、腐敗した食品などに気づきにくくなるため、日常生活上の安全にも注意してください。
まとめ
鼻づまりで匂いが分からなくなるのは、鼻の中が腫れて、におい分子が嗅粘膜まで届きにくくなるためです。
さらに、食事中は口から鼻へ抜ける香りも「風味」を作っているため、嗅覚が低下すると「味までなくなった」ように感じることがあります。
鼻づまりのときに食事がおいしく感じられなくても、舌の味覚ではなく嗅覚の低下が原因になっているケースが多くあります。
風邪や花粉症とともに一時的に起こっている場合は改善することもありますが、鼻づまりが治っても嗅覚が戻らない、長期間続く、ほとんど匂いを感じないといった場合には、耳鼻咽喉科で原因を確認しましょう。

