睡眠薬を飲んでも夜中に目が覚める原因とは?中途覚醒への対処法を解説
監修:医師・薬剤師監修
「睡眠薬を飲むとすぐ眠れるのに、夜中の2時や3時に目が覚める」「トイレに行った後、朝まで眠れない」と悩んでいる人は少なくありません。
寝ている途中で何度も目が覚め、再び眠るまでに時間がかかる状態を中途覚醒といいます。厚生労働省では、中途覚醒を不眠症状の一つとし、夜中に何回も目覚めて再入眠が難しくなる状態としています。
睡眠薬を飲んでも夜中に目が覚める場合、薬が効いていないとは限りません。薬の作用時間が症状に合っていない、睡眠時無呼吸症候群や夜間頻尿がある、アルコールやカフェインの影響を受けているなど、別の原因が隠れていることがあります。
不眠には4つの種類がある
不眠は、眠れない時間帯や症状によって主に次の4種類に分けられます。
| 不眠の種類 | 主な症状 | 具体的な状態 |
|---|---|---|
| 入眠障害 | 寝つきが悪い | 布団に入っても30分~1時間以上眠れない |
| 中途覚醒 | 夜中に目が覚める | 一晩に何度も目が覚め、再び眠るまで時間がかかる |
| 早朝覚醒 | 予定より早く目覚める | 起床予定時刻より2時間以上早く目覚め、二度寝できない |
| 熟眠障害 | 熟睡した感じがない | 睡眠時間は足りていても、朝から疲れている |
厚生労働省では、不眠によって日中の倦怠感、集中力低下、意欲低下などが起こる場合、不眠症として治療が必要になることがあるとされています。
睡眠薬を飲んでも夜中に目が覚める主な原因
睡眠薬の作用時間が短い
睡眠薬には、効き始めが速く作用時間が短いタイプと、朝方まで作用が続くタイプがあります。
寝つきを改善する短時間型の薬は、入眠障害には向いていますが、薬の作用が夜中に弱くなると、中途覚醒を十分に防げない場合があります。
例えば、午後11時に薬を飲んで眠れても、午前2時や3時に毎日目が覚める場合は、現在の薬の作用時間が睡眠の後半まで続いていない可能性があります。
中途覚醒が続くからといって、自己判断で追加服用してはいけません。夜中に薬を追加すると、翌朝まで眠気やふらつきが残り、転倒や交通事故につながる危険があります。
薬を飲む時間が合っていない
睡眠薬は、基本的に就寝する直前に服用します。薬を飲んだ後もテレビやスマートフォンを見続けたり、家事をしたりすると、薬が効く時間と実際に眠る時間がずれてしまいます。
また、夕食後すぐに服用すると、薬によっては食事の影響で効き始めが遅くなることがあります。
服用する時間は薬によって異なるため、処方時の指示や添付文書を確認してください。
睡眠薬の種類が症状に合っていない
睡眠薬には、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬などがあります。
それぞれ効き方が異なり、寝つきを良くすることを得意とする薬もあれば、睡眠を維持して夜中の目覚めを減らす目的で使われる薬もあります。
| 薬の種類 | 主な特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| ベンゾジアゼピン系 | 脳の興奮を抑えて眠りやすくする | 眠気、ふらつき、依存、筋力低下に注意 |
| 非ベンゾジアゼピン系 | 比較的寝つきを改善しやすい | 健忘、ふらつき、翌朝の眠気が起こることがある |
| メラトニン受容体作動薬 | 睡眠と覚醒のリズムを整える | 効果を感じるまで時間がかかる場合がある |
| オレキシン受容体拮抗薬 | 覚醒を維持する働きを抑える | 翌朝の眠気、悪夢、金縛りのような症状に注意 |
寝つきは改善したのに中途覚醒だけが残る場合は、薬の種類や作用時間を見直す必要があります。
アルコールを一緒に飲んでいる
お酒を飲むと眠くなるため、睡眠薬の代わりになると考える人もいます。しかし、アルコールは寝つきを一時的に早くしても、睡眠の後半を浅くし、夜中や早朝に目覚めやすくします。
さらに、睡眠薬とアルコールを併用すると、強い眠気、呼吸の抑制、記憶が抜ける、転倒するといった危険があります。NHS(英国国民保健サービス)でも、ゾルピデムやゾピクロンなどの睡眠薬とアルコールを併用すると、深く眠りすぎて呼吸が十分にできなくなる可能性があるとされています。
睡眠薬を服用する日は、飲酒を避けてください。
夕方以降にカフェインを取っている
コーヒー、緑茶、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、脳を覚醒させます。
カフェインの影響が残る時間には個人差がありますが、夕方や夜に飲むと、寝つきだけでなく睡眠の深さにも影響します。
午後3時以降にコーヒーを飲んでいる人は、昼以降をカフェインレス飲料へ変え、夜中の目覚めが減るか確認してみましょう。
夜間頻尿がある
夜中に尿意で何度も目が覚める場合、睡眠薬だけでは改善しないことがあります。
夜間頻尿の原因には、就寝前の水分摂取、飲酒、前立腺肥大症、過活動膀胱、糖尿病、心不全、睡眠時無呼吸症候群などがあります。
夜中に2回以上トイレへ行く状態が続く場合は、「眠りが浅いからトイレに行く」のか、「尿意で目が覚めている」のかを確認する必要があります。
睡眠時無呼吸症候群が隠れている
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりします。呼吸を再開するたびに脳が短時間覚醒するため、本人が自覚していなくても睡眠が分断されます。
大きないびき、睡眠中の呼吸停止、息苦しさによる目覚め、朝の頭痛、日中の強い眠気がある場合は注意が必要です。NIH(アメリカ国立衛生研究所)では、睡眠時無呼吸症候群の症状として、夜間に何度も目覚めることや夜間頻尿を挙げています。
睡眠時無呼吸症候群がある場合、睡眠薬だけを追加しても根本的な改善にはなりません。薬によっては呼吸への影響に注意が必要なため、睡眠検査を受けることが重要です。
痛み、かゆみ、ほてりなどで目が覚める
腰痛、関節痛、皮膚のかゆみ、逆流性食道炎、咳、鼻づまりなどがあると、薬で眠れても症状の刺激によって目が覚めます。
更年期の女性では、ほてりや寝汗によって夜中に目が覚めることもあります。この場合は、睡眠薬の変更だけでなく、痛みや更年期症状など、原因となる病気の治療が必要です。
不安やうつ状態が関係している
仕事や家庭の心配事があると、夜中に目覚めた瞬間から考え事が始まり、再び眠れなくなることがあります。
気分の落ち込み、意欲低下、食欲低下、朝早く目覚める状態が続く場合は、うつ病が関係している可能性もあります。
「また起きてしまった」「早く寝なければ」と焦るほど、脳が覚醒して眠りにくくなります。厚生労働省でも、眠れないことへの不安や焦りが不眠を悪化させるとされています。
加齢によって眠りが浅くなっている
年齢を重ねると、深い睡眠が減り、夜中に目が覚めやすくなります。また、必要な睡眠時間も若い頃より短くなることがあります。
午後9時に布団へ入り、午前3時や4時に目覚める場合は、寝床に入る時間が早すぎる可能性もあります。
必要以上に長く布団に入っていると、眠りが分散し、中途覚醒が増えやすくなります。
睡眠薬を飲んでも目が覚めるときに確認すること
受診前に、1~2週間程度の睡眠記録をつけると、原因を見つけやすくなります。NIH(アメリカ国立衛生研究所)でも、不眠の評価には睡眠日誌が役立つとされています。
- 睡眠薬を飲んだ時間
- 布団に入った時間
- 眠るまでにかかった時間
- 夜中に目が覚めた回数と時間
- 再び眠るまでにかかった時間
- トイレへ行った回数
- 起床時間
- 翌朝の眠気やふらつき
- 飲酒、カフェイン、昼寝の有無
「薬が効かない」と伝えるだけでなく、「午後11時に服用し、午前2時頃に目覚め、その後1時間眠れない」と具体的に伝えると、薬の選択や用量の調整に役立ちます。
自宅でできる中途覚醒への対策
眠くなってから布団へ入る
眠れないからと早い時間から布団に入ると、寝床で起きている時間が長くなります。
布団に入って20~30分程度たっても眠れない場合は、一度寝室を出て、暗めの部屋で静かな読書などを行い、眠気が戻ってから布団へ入りましょう。
夜中に時計を見ない
目が覚めるたびに時計を見ると、「あと3時間しか眠れない」と焦りやすくなります。
時計やスマートフォンは、布団から見えない位置に置きましょう。スマートフォンの強い光や情報も脳を覚醒させます。
昼寝は短くする
長い昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠欲求を弱くします。
昼寝をする場合は、午後3時までに20~30分程度を目安にしましょう。
起床時間を一定にする
夜中に眠れなかった日でも、朝遅くまで寝続けると、翌日の寝つきが悪くなります。
休日も含めて起床時間をできるだけ一定にし、朝はカーテンを開けて光を浴びましょう。
就寝前の水分を調整する
脱水を避ける必要はありますが、寝る直前に大量の水やお茶を飲むと、夜間頻尿につながります。
夕食後の水分量を調整し、就寝直前のアルコール、カフェイン飲料を避けましょう。
睡眠薬を変更・調整する場合
中途覚醒が続く場合は、医師が次のような調整を検討します。
- 作用時間が異なる睡眠薬へ変更する
- 入眠と睡眠維持の両方を考えた薬へ変更する
- 服用する時間を見直す
- 副作用が少ない用量へ調整する
- 不安、うつ、痛み、頻尿などの原因を治療する
- 認知行動療法(CBT-I)を組み合わせる
CBT-Iは、不眠に対する認知行動療法です。睡眠時間や寝床での過ごし方、眠れないことへの考え方を見直します。厚生労働省の資料でも、睡眠薬だけで十分な効果が得られない場合には、CBT-Iを検討することが示されています。
睡眠薬の副作用と注意点
睡眠薬では、次のような副作用が起こることがあります。
- 翌朝の眠気
- 注意力や集中力の低下
- ふらつきや転倒
- 記憶が抜ける
- 悪夢
- 依存や耐性
- 薬を中止した後の反跳性不眠
翌朝に眠気やふらつきが残っている場合は、自動車、自転車、機械の運転を避けてください。薬によっては服用の翌朝以降まで注意力や反射能力が低下する可能性があります。
長期間服用している睡眠薬を急に中止すると、以前より強く眠れなくなる反跳性不眠や、不安、震え、発汗などが起こる場合があります。中止するときは、医師の指示に従って少しずつ減量します。
個人輸入で睡眠薬を購入する場合
個人輸入では、自宅から注文でき、国内では取り扱いの少ない成分や含有量を比較できる点がメリットです。価格や選択肢を比較しやすいことも利点です。
ただし、睡眠薬は成分によって作用時間、依存性、翌朝への持ち越しが大きく異なります。購入前には次の項目を必ず確認してください。
- 有効成分
- 1錠当たりの含有量
- 服用する時間
- 作用時間
- 翌朝への眠気や運転への影響
- アルコールとの併用可否
- 呼吸器疾患や肝機能障害がある場合の使用可否
- 現在服用している薬との相互作用
- 依存性や中止時の注意点
夜中に目が覚めたからといって追加服用したり、複数の睡眠薬を重ねたりしないでください。他の不眠症治療薬を併用した場合の有効性や安全性が確立されていない薬もあります。
また、睡眠薬は他人からもらったり、他人へ譲ったりせず、自分の症状に合ったものを使用してください。厚生労働省も、不眠の症状に応じて処方された睡眠薬を人からもらったり、人へ譲ったりしないよう注意を促しています。
医療機関へ相談する目安
次のような場合は、精神科、心療内科、睡眠外来、内科などへ相談してください。
- 週に3回以上、夜中に目が覚める
- 中途覚醒が1か月以上続いている
- 日中の眠気や集中力低下が強い
- 睡眠薬を飲んでもほとんど改善しない
- 睡眠薬を自己判断で増量している
- 大きないびきや呼吸停止を指摘された
- 夜中に何度もトイレへ行く
- 朝の頭痛や強い疲労感がある
- 気分の落ち込みや強い不安が続いている
- 翌朝の眠気やふらつきで生活に支障がある
睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群などが疑われる場合は、睡眠検査が必要になることがあります。通常の睡眠薬では十分な効果が得られない病気もあるため、原因を確認することが重要です。
まとめ
睡眠薬を飲んでも夜中に目が覚める場合は、薬の作用時間や種類が中途覚醒に合っていない可能性があります。
そのほかにも、飲酒、カフェイン、夜間頻尿、睡眠時無呼吸症候群、痛み、更年期症状、不安やうつ、加齢による睡眠の変化などが関係します。
夜中に目が覚めても、睡眠薬を自己判断で追加したり、服用量を増やしたりしてはいけません。翌朝の強い眠気、ふらつき、記憶障害、呼吸への影響が起こる可能性があります。
服用時間、目覚めた時刻、トイレの回数、翌朝の状態を記録し、医師や薬剤師へ具体的に伝えましょう。原因に合わせて薬の種類や作用時間を見直すことで、睡眠を改善できる可能性があります。

