ホルモン補充療法は太る?HRTと体重増加の関係を解説
監修:医師・薬剤師監修
「ホルモン補充療法を始めると太るのではないか」「治療を始めてから体重が増えた気がする」と不安になる女性は少なくありません。
ホルモン補充療法(HRT)は、減少した女性ホルモンを補い、ほてり、発汗、寝汗、不眠、気分の落ち込みなどの更年期症状を改善する治療です。
現在の医学的な見解では、HRTそのものが脂肪を増やし、太る直接的な原因になるとは考えられていません。NHS(英国国民保健サービス)やThe Menopause Society(北米更年期学会)でも、更年期にはHRTを使用しているかどうかにかかわらず体重が増えることがあり、HRTと体重増加との明確な関連はないとされています。
ただし、HRTを始めた直後にむくみや乳房の張りが現れ、一時的に体重が増える場合はあります。脂肪が増えたのか、水分がたまっているのかを分けて考えることが大切です。
HRTとはどのような治療?
HRTは、閉経前後に減少するエストロゲンを補う治療です。子宮がある女性では、子宮内膜が増えすぎるのを防ぐため、通常は黄体ホルモンも組み合わせます。
主な剤形には、次のようなものがあります。
- 飲み薬
- 皮膚に貼るパッチ剤
- 皮膚に塗るジェル剤
- 腟に使用する腟錠やクリーム
全身に作用する飲み薬、貼り薬、塗り薬は、ほてり、寝汗、発汗、不眠などに使われます。一方、腟錠や腟クリームは、腟の乾燥、性交痛、排尿時の違和感など、局所の症状を中心に治療します。
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)では、HRTは更年期や閉経周辺期の症状を軽減する治療とされています。
HRTで太るという医学的根拠はある?
「薬を飲み始めて体重が増えたから、HRTが原因」と感じることはあります。しかし、更年期はもともと体重が増えやすい時期です。
NHS(英国国民保健サービス)では、HRTによって体重が増えるという十分な根拠はなく、年齢や更年期そのものによって体重が増えることが多いと報告されています。
The Menopause Society(北米更年期学会)も、HRTは体重増加と関連していないとしています。
つまり、HRTを始めた時期と体重が増える時期が重なっただけで、薬が直接の原因ではないケースが多いと考えられます。
更年期に体重が増えやすくなる原因
筋肉量と基礎代謝が低下する
40代以降は、運動習慣が変わらなくても筋肉量が少しずつ減りやすくなります。筋肉が減ると、呼吸や体温維持などで消費する基礎代謝も低下します。
以前と同じ量を食べていても、1日に消費できるエネルギーが少なくなれば、余ったエネルギーが脂肪として蓄積されます。
例えば、毎日の消費量が100キロカロリー減った状態が続くと、少量の間食や甘い飲み物だけでも体重増加につながりやすくなります。
脂肪が下半身からお腹周りへ移りやすくなる
エストロゲンは脂肪のつき方にも関係しています。閉経前は、腰、太もも、お尻などに皮下脂肪がつきやすい傾向があります。
エストロゲンが減少すると、内臓脂肪がお腹周りにつきやすくなり、体重が大きく変わっていなくても「ウエストが太くなった」「ズボンがきつくなった」と感じることがあります。
ACOG(アメリカ産科婦人科学会)では、HRTに使用するエストロゲンが脂肪の蓄積場所に影響する可能性はあるものの、HRT自体に減量効果があるわけではないとされています。
寝汗や不眠で食欲が乱れる
更年期の寝汗やほてりによって、夜中に何度も目が覚める人もいます。睡眠不足が続くと、日中の疲労が強くなり、甘い物や脂肪の多い食事を選びやすくなります。
また、眠気によって運動量が減るため、摂取エネルギーに対して消費エネルギーが不足しやすくなります。
HRTで寝汗や睡眠が改善すれば、間接的に体重管理がしやすくなる可能性があります。ただし、HRTを飲むだけで痩せるわけではありません。
ストレスによる間食や飲酒が増える
更年期には、仕事、親の介護、子どもの進学や独立、夫婦関係などの負担が重なることがあります。
イライラや気分の落ち込みを紛らわせるため、夕食後にお菓子を食べたり、毎晩飲酒したりする習慣がつくと、体重は少しずつ増えていきます。
HRT開始後に体重が増える主な理由
| 原因 | 身体に起こる変化 | 見分ける目安 |
|---|---|---|
| 一時的なむくみ | 身体に水分がたまり、体重が増える | 数日で体重が変動し、手足や顔もむくむ |
| 乳房の張り | 乳房が張り、身体が重く感じる | 治療開始後や薬の変更後に起こりやすい |
| 加齢による代謝低下 | 同じ食事量でも脂肪が増えやすくなる | 数か月から数年かけて徐々に増える |
| 運動量の低下 | 筋肉と消費エネルギーが減る | 歩数や外出回数が減っている |
| 睡眠不足 | 食欲が乱れ、間食が増えやすくなる | 寝汗、不眠、日中の眠気を伴う |
| 食生活の変化 | 摂取エネルギーが消費量を上回る | お菓子、飲酒、外食の回数が増えている |
むくみと脂肪による体重増加の違い
HRT開始後に体重が1~2キロ増えた場合でも、すぐに脂肪が増えたとは限りません。
むくみでは、朝に顔が腫れぼったい、夕方に靴がきつい、指輪が抜けにくい、すねを押すと跡が残るといった変化が見られます。体重も1日の中で変動しやすくなります。
一方、脂肪による体重増加は、数週間から数か月かけて少しずつ進みます。ウエストや下腹部が大きくなり、体重が自然には戻りにくくなります。
数日間で急に2キロ以上増え、強いむくみ、息切れ、動悸、胸の痛みなどがある場合は、単なる太り過ぎと考えず医療機関へ相談してください。
HRTの種類によって太りやすさは違う?
HRTには、エストロゲン単独療法と、エストロゲンと黄体ホルモンを組み合わせる方法があります。
黄体ホルモンの種類や投与量によっては、むくみ、食欲の変化、乳房の張りなどを感じる人がいます。ただし、薬が脂肪を直接増やしているとは限りません。
飲み薬が合わない場合は、貼り薬や塗り薬へ変更することで、副作用が軽くなることがあります。反対に、皮膚のかぶれがある場合は、飲み薬が選ばれることもあります。
使用する薬は、子宮の有無、年齢、閉経からの期間、血栓症のリスク、乳房や子宮の病歴などを確認して選びます。
HRTを中止すれば体重は戻る?
むくみが原因で体重が増えている場合は、薬の変更や中止によって体重が戻る可能性があります。
しかし、筋肉量の低下、食事量、運動不足、内臓脂肪の増加が原因の場合、HRTを中止しても自然には体重が戻りません。
体重が増えたという理由だけで、HRTを自己判断で急に中止しないでください。ほてり、寝汗、不眠などが再び強くなり、睡眠不足や活動量低下によって、かえって体重管理が難しくなることもあります。
HRT中の体重増加を防ぐ方法
体重だけでなくウエストも測る
更年期では、体重が同じでも内臓脂肪が増える場合があります。週に1~2回、同じ時間帯に体重を測り、月に1回はへその高さでウエストを測りましょう。
毎日何度も測ると、水分や食事による変動に振り回されやすくなります。1週間単位、1か月単位で変化を見ることが大切です。
筋トレを週2~3回行う
ウォーキングだけでなく、スクワット、かかと上げ、壁を使った腕立て伏せなどを行うと、筋肉量を維持しやすくなります。
1回10~20分程度から始め、翌日まで強い痛みが残らない範囲で続けましょう。
たんぱく質を毎食取る
魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などのたんぱく質は、筋肉を保つために必要です。
朝食がパンとコーヒーだけの場合は、卵、ヨーグルト、豆乳などを追加すると、空腹による間食も防ぎやすくなります。
甘い飲み物と飲酒を見直す
砂糖入りの飲料、カフェラテ、ジュース、アルコールは、満腹感が少ない割にエネルギーを取りやすい食品です。
毎日飲んでいる場合は、量や回数を半分にするだけでも、長期的な体重管理につながります。
睡眠環境を整える
寝汗がある場合は、室温を低めに調整し、吸湿性の高い寝具や着替えを準備しましょう。
夕方以降のカフェインや長時間の昼寝を控え、起床時間を一定にすることも重要です。
HRTの副作用と注意点
HRTでは、治療開始後に次のような副作用が現れることがあります。
- 不正出血
- 乳房の張りや痛み
- 吐き気
- 頭痛
- むくみ
- 腹部の張り
- 気分の変化
多くは治療開始から数週間から数か月で落ち着くことがあります。症状が強い場合は、薬の量、種類、剤形を調整します。
また、HRTでは血栓症、脳卒中、乳がん、子宮内膜への影響などを考慮する必要があります。リスクは年齢、投与方法、使用期間、既往歴によって異なります。
乳がんや子宮内膜がんの既往、原因不明の性器出血、血栓症の既往、重い肝機能障害がある人などは、HRTを使用できない場合があります。
個人輸入でHRT製品を購入する場合
個人輸入では、自宅から注文でき、国内で取り扱いの少ない剤形や含有量を比較できる点がメリットです。価格や選択肢の多さを確認しやすい方法でもあります。
ただし、ホルモン剤は、成分、含有量、使用部位を間違えると、不正出血、強いむくみ、血栓症、子宮内膜への影響などにつながる可能性があります。
購入前には、次の項目を必ず確認してください。
- 有効成分がエストラジオールなどのどの成分か
- 1錠または1回当たりの含有量
- 飲み薬、貼り薬、塗り薬、腟剤のどれか
- 使用する部位と交換・塗布の頻度
- 子宮がある場合の黄体ホルモン併用の必要性
- 乳がん、子宮疾患、血栓症などの禁忌
- 現在使用している薬との相互作用
- 副作用と受診が必要な症状
同じエストロゲン製剤を複数重ねたり、効果を高めようとして自己判断で増量したりしないでください。
体重増加やむくみが気になる場合は、毎日の体重、ウエスト、症状、使用量を記録し、医師や薬剤師へ相談しましょう。
医療機関へ相談する目安
次のような場合は、婦人科や更年期外来へ相談してください。
- HRT開始後に体重が急激に増えた
- 顔、手足、下半身のむくみが強い
- 片脚だけが腫れて痛む
- 胸の痛みや息苦しさがある
- 不正出血が長く続く
- 強い頭痛や視界の異常がある
- 乳房にしこりや強い痛みがある
- 食事と運動を見直しても体重が増え続ける
急な体重増加には、甲状腺機能低下症、心臓や腎臓の病気、薬の副作用などが隠れていることもあります。
必要に応じて、血圧、血糖値、HbA1c、脂質、甲状腺機能、肝機能などを確認します。
まとめ
HRTを始めたからといって、必ず脂肪が増えて太るわけではありません。更年期の体重増加には、加齢による筋肉量の低下、エストロゲンの減少、睡眠不足、ストレス、運動不足などが関係しています。
治療開始直後に体重が増えた場合は、一時的なむくみや乳房の張りによる可能性もあります。
HRTには体重を減らす作用はありませんが、HRTそのものが体重増加の直接的な原因であるという十分な根拠もありません。
体重が気になる場合は、薬を自己判断で中止せず、体重とウエストの変化、むくみ、食事、運動量を記録しましょう。症状に応じて薬の種類や投与方法を調整することで、更年期症状を治療しながら体重を管理できる可能性があります。

