熱中症対策で塩分は必要?取り方と取り過ぎの注意点を解説
監修:医師・薬剤師監修
「熱中症予防には塩分が必要と聞いた」「夏は塩あめや塩分タブレットを毎日取るべき?」と迷う人は少なくありません。
結論からいうと、熱中症対策で塩分が必要になるのは、長時間の運動や屋外作業などで大量に汗をかいた場合です。普段どおり食事を取れており、汗をあまりかいていない日常生活では、水分補給のたびに塩分を追加する必要はありません。
汗をかくと、水分と一緒にナトリウムなどの電解質が失われます。大量発汗後に水だけを一度に多く飲むと、体内の塩分濃度が低下し、体調を崩すことがあります。一方で、必要のない人が塩分を取り過ぎると、血圧上昇やむくみにつながる可能性があります。
熱中症対策では「夏だから塩分を増やす」のではなく、汗の量、運動時間、食事の状態、持病に合わせて水分と塩分を使い分けることが重要です。
なぜ汗をかくと塩分が必要になる?
汗の大部分は水分ですが、ナトリウムをはじめとする電解質も含まれています。
短時間の外出や軽い家事などで汗が少ない場合は、通常の食事から塩分を補えるため、水や無糖のお茶での水分補給が基本です。
しかし、炎天下で数時間働く、スポーツで衣服が濡れるほど汗をかく、風通しの悪い場所で長時間作業するといった場合は、水分とともに塩分も多く失われます。
環境省では、大量の発汗がある場合には、水だけでなく、塩分濃度0.1~0.2%程度の飲料を取る方法が推奨されています。これは1Lの水に食塩約1~2gを含む濃度に相当します。
熱中症対策で塩分が必要な場面
| 場面 | 塩分補給の必要性 | 適した飲み物・方法 |
|---|---|---|
| エアコンの効いた室内で過ごす | 通常は追加不要 | 水、無糖のお茶 |
| 短時間の通勤や買い物 | 汗が少なければ追加不要 | 水、無糖のお茶 |
| 屋外で長時間作業する | 必要になることがある | スポーツドリンク、水分と食事 |
| スポーツで大量に汗をかく | 必要 | 電解質を含む飲料をこまめに取る |
| 足がつる、大量発汗、強いだるさがある | 水分と塩分の補給を検討 | スポーツドリンク、経口補水液 |
| めまい、吐き気、尿量低下など脱水が疑われる | 状態に応じて必要 | 経口補水液。改善しなければ受診 |
汗をかいていないのに、塩分タブレットや経口補水液を習慣的に取る必要はありません。通常の食事をしている人は、みそ汁、パン、麺類、加工食品、調味料などからすでに塩分を摂取しています。
水だけでは足りないことがある理由
大量に汗をかいた後は、体内の水分とナトリウムが同時に減っています。
この状態で水だけを短時間に大量に飲むと、血液中のナトリウム濃度がさらに低くなる可能性があります。頭痛、吐き気、だるさ、筋肉のけいれん、意識の変化などが現れることもあります。
厚生労働省の職場向け資料では、大量発汗時には水分のみではなく、水分と塩分を同時に補給することが重要とされています。また、塩あめだけをなめても水分不足は解消できないため、必ず飲み物と組み合わせる必要があります。
水・スポーツドリンク・経口補水液の使い分け
| 種類 | 向いている場面 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 水・無糖のお茶 | 普段の水分補給、軽い外出 | 糖分や塩分を過剰に取りにくい | 大量発汗時には塩分不足になることがある |
| スポーツドリンク | 運動、屋外作業、大量発汗 | 水分、糖質、電解質を同時に補える | 糖分やカロリーが多い製品がある |
| 経口補水液 | 軽度から中等度の脱水が疑われる場合 | スポーツドリンクより電解質濃度が高い | 普段の水代わりに飲まない |
| 塩分タブレット・塩あめ | 長時間の大量発汗時の補助 | 携帯しやすい | 必ず水分と一緒に取る |
スポーツドリンクはどんなときに使う?
スポーツドリンクには、水分、ナトリウム、糖質などが含まれています。
長時間の運動、炎天下の作業、農作業、屋外イベントなど、汗を継続してかく場面に向いています。糖質には運動中のエネルギーを補う役割があり、ナトリウムと水分の吸収にも関係します。
一方で、運動をしていないのに毎日1~2L飲み続けると、糖質やカロリーの取り過ぎになる場合があります。
日常生活では水を基本にし、スポーツドリンクは汗の量が多い場面で使うのが基本です。
経口補水液は普段から飲んでもよい?
経口補水液は、脱水時の水分と電解質補給を目的とした飲料です。
一般的なスポーツドリンクよりナトリウムなどの電解質を多く含み、軽度から中等度の脱水状態で吸収されやすいよう調整されています。
消費者庁では、経口補水液は脱水症時の食事療法に用いる病者用の飲み物であり、脱水状態ではない人が普段の水分補給として飲むものではないと注意を促しています。
経口補水液の使用を検討するのは、次のような状態です。
- 大量の汗をかいた後に強い喉の渇きがある
- めまいや立ちくらみがある
- 尿の量が減り、色が濃くなっている
- 身体がだるく、軽い吐き気がある
- 下痢や嘔吐で水分を失っている
意識がもうろうとしている、自力で飲み込めない、何度も吐いている場合は、経口補水液を無理に飲ませず救急要請してください。
塩分タブレットや塩あめだけでは不十分
塩分タブレットや塩あめは、屋外作業や長時間のスポーツで大量に汗をかく場合の補助として利用できます。
ただし、塩分だけを取っても、失われた水分は補えません。
例えば、汗で衣類が濡れているのに、塩あめだけをなめて水を飲まなければ、脱水は進みます。反対に、水分だけを大量に飲み続けても、ナトリウムが不足する可能性があります。
塩分タブレットや塩あめを使用するときは、必ず水分も一緒に取りましょう。厚生労働省の資料でも、水分を取らず塩あめだけをなめても熱中症対策にはならないとされています。
食事を取れていれば追加の塩分は不要?
朝・昼・夕の食事を通常どおり取れており、汗の量が少ない人は、食事から必要な塩分を補えていることが多くあります。
みそ汁、漬物、パン、麺類、ハム、ソーセージ、総菜、調味料などには塩分が含まれています。
室内で過ごしている人が、予防目的で塩あめ、塩分タブレット、スポーツドリンク、経口補水液をすべて重ねると、塩分や糖分の取り過ぎになる可能性があります。
次のような場合は追加の塩分より、まず水や無糖のお茶での水分補給を優先します。
- 汗をほとんどかいていない
- エアコンの効いた室内で過ごしている
- 通常どおり食事が取れている
- 短時間の外出だけである
- 医師から塩分制限を受けている
塩分を取り過ぎるとどうなる?
必要以上に塩分を取ると、身体は血液中のナトリウム濃度を調整するために水分をため込みやすくなります。
その結果、次のような変化が現れることがあります。
- 喉が強く渇く
- 顔や足がむくむ
- 体重が一時的に増える
- 血圧が上がる
- 心臓や腎臓へ負担がかかる
「塩分を取れば取るほど熱中症を防げる」という考え方は間違いです。必要な塩分量は、汗の量や食事内容によって変わります。
塩分補給に注意が必要な人
高血圧がある人
塩分の取り過ぎは血圧上昇につながることがあります。
高血圧の治療中に、毎日塩分タブレットや経口補水液を取ると、普段の食事と合わせて塩分過多になる可能性があります。
心不全や心臓病がある人
心不全では、塩分や水分の取り過ぎによって身体に水がたまり、むくみや息苦しさが悪化することがあります。
腎機能が低下している人
腎機能が低下していると、ナトリウムやカリウム、水分を十分に排出できない場合があります。
経口補水液や電解質パウダーにはナトリウムやカリウムが多く含まれることがあるため、自己判断で使用しないでください。
糖尿病がある人
スポーツドリンクや経口補水液には糖質が含まれています。
大量に飲むと血糖値へ影響する可能性があるため、製品の糖質量を確認する必要があります。
高血圧、心疾患、腎不全、糖尿病などがある人は、医師の指示に従って水分と塩分を補給してください。厚生労働省の資料でも、持病がある人は医師の意見を聞き、状態に応じた補給を行うよう案内されています。
熱中症予防に適した塩分の取り方
水分と一緒に少量ずつ取る
一度に大量の水や塩分を取るのではなく、運動や作業の前からこまめに補給します。
暑い場所で長時間作業する場合は、喉が渇く前に休憩を取り、水分と電解質を補いましょう。
食事を抜かない
朝食や昼食を抜くと、水分だけでなく、塩分や糖質なども不足しやすくなります。
暑い時期は食欲が落ちやすいですが、おにぎり、みそ汁、卵、豆腐、果物など、食べやすい食品を組み合わせましょう。
飲料の成分表示を確認する
スポーツドリンク、経口補水液、電解質パウダーは、商品によってナトリウムや糖質の量が異なります。
スポーツや暑熱環境での補給には、ナトリウム量が100mL当たり40~80mg程度の飲料が目安として示されています。
複数の塩分製品を重ねない
スポーツドリンクを飲みながら、塩分タブレット、塩あめ、経口補水液をすべて取ると、必要以上の塩分や糖分を摂取する可能性があります。
汗の量と飲料の成分を確認し、一つの方法を基本にしましょう。
自宅で食塩水を作る場合の注意点
大量発汗時の補給として、0.1~0.2%程度の食塩水が紹介されることがあります。これは1Lの水に食塩約1~2gを溶かした濃度です。
ただし、家庭で作る場合は分量を正確に量る必要があります。
塩を目分量で入れると、濃過ぎて飲みにくくなったり、塩分の取り過ぎになったりします。また、自作の食塩水は経口補水液と同じ成分配合ではありません。
脱水症状がある場合は、成分濃度が調整された市販の経口補水液を使用するほうが適しています。
熱中症が疑われるときの応急処置
めまい、大量の汗、足のつり、強いだるさなどがある場合は、すぐに運動や作業を中止します。
- エアコンの効いた室内や日陰へ移動する
- 衣服やベルトを緩める
- 首、脇の下、足の付け根を冷やす
- 意識がはっきりしていれば、冷たい飲料を少量ずつ飲む
- 一人にせず、症状が改善するか確認する
消防庁では、熱中症が疑われる場合に、涼しい場所へ移動し、身体を冷やし、冷たい水分や塩分を補給する方法を案内しています。
救急車を呼ぶ目安
次のような症状がある場合は、塩分や水分を取らせて様子を見る段階ではありません。
- 呼びかけへの反応がおかしい
- 意識がない
- 自力で水分を飲めない
- 何度も吐いている
- けいれんしている
- まっすぐ歩けない
- 身体が非常に熱い
- 冷却しても症状が悪化している
意識が悪い人へ無理に飲料を飲ませると、気管へ入り、窒息や誤嚥を起こす危険があります。すぐに119番へ通報し、救急隊が到着するまで身体を冷やしてください。
個人輸入で電解質製品を購入する場合
個人輸入代行では、国内では取り扱いの少ない経口補水用パウダー、電解質パウダー、スポーツ用補水製品などを比較できます。
粉末タイプは持ち運びや保存がしやすく、容量、味、成分の選択肢が多い点がメリットです。
購入前には、次の項目を確認してください。
- 1包当たりのナトリウム量
- カリウム量
- 糖質量
- 溶かす水の量
- 運動時用か脱水時用か
- 1日の使用回数
- 高血圧、心臓病、腎臓病、糖尿病がある場合の注意
- 対象年齢
- 製造元と使用期限
海外製の電解質パウダーは、商品によって希釈する水の量が異なります。少ない水で濃く作ると、塩分や糖分の取り過ぎになる可能性があります。
スポーツドリンク、電解質パウダー、塩分タブレットなどを自己判断で重ねず、使用目的と含有量を確認しましょう。
まとめ
熱中症対策で塩分が必要になるのは、長時間の運動や屋外作業などで大量に汗をかき、水分とナトリウムが同時に失われた場合です。
通常の食事を取れており、汗の量が少ない日常生活では、水や無糖のお茶での水分補給が基本です。
塩分タブレットや塩あめだけでは脱水を防げないため、必ず水分と一緒に取ってください。
大量発汗時にはスポーツドリンク、脱水が疑われる場合には経口補水液が選択肢になります。ただし、経口補水液は普段の水代わりに飲むものではありません。
高血圧、心臓病、腎臓病、糖尿病がある人は、塩分や水分の取り方に個別の調整が必要です。自己判断で塩分製品を常用せず、医師や薬剤師へ相談してください。
意識がおかしい、自力で水を飲めない、けいれんしている場合は、飲み物や塩分を与えず、すぐに救急車を呼びましょう。

